モービダス×ペレディール
とある遺跡。ペレディールは単独で調査の下見に来ていた。
「うかつじゃった……まさか遺跡の壁が崩れて閉じ込められてしまうとは……」
どこか出られそうな隙間はないかとペレディールは壁を見る。
「うーむ、火炎魔法で吹き飛ばすと貴重な遺跡が壊れてしまいそうじゃの……どうしたものか……」
顎に手を当て考えていると、
「お困りですか、お嬢さん」
「私はお嬢さんではな……って、貴様!?」
ペレディールの目の前に立っていたのは緑色のラインが入った黒色のタキシードにシルクハットを被った濃茶色の髪の男。
「モービダス!? 死んだのではなかったのか!?」
「ちっちっち」
モービダスのように見える人物は片眉を上げ、指を振ってみせる。
「私は魔法紳士モービダス。普通のモービダスとはひと味違うのですよ」
「な……!?」
「カモン、使い魔ペレズ!」
『ぽん! 私は朝のペレディール!』
『ほっ! 私は夜のペレディール!』
『むにゃ……私は月のペレディール』
『三人合わせて……』
『『『使い魔ペレズ!』』』
「なんじゃその名乗りは!? というか……三人の私!? モービダス貴様……」
「魔法紳士モービダスです」
「何でも一緒じゃろ! モービダス貴様、そういう趣味だったのか!」
「なっ」
ずっこける魔法紳士モービダス。
「違いますよ……そういう『設定』なんです。決して私がそういう趣味の持ち主というわけでは」
「いやしかし……三人の小さな私を侍らせて使い魔にしているというのはかなり……」
「違いますってば!」
魔法紳士は叫ぶ。
「魔法紳士に選ばれると使い魔を与えられるんですよ! 使い魔はその紳士に一番近しい位置にある人物をモデルに作られるらしくて」
「モービダスお前……」
ペレディールが言葉を切る。
「私しか友達がいなかったのか!」
「違いますって!」
もー、と魔法紳士。
「私はあなたの世界のモービダスとは違うんです。あなたも私の世界のペレディールとは違うんです、私の世界のペレディールは……」
「貴様の世界の私は……?」
「いえ、よしましょう。今はそんな話をしても仕方がない。とりあえず貴方をここから助けてさしあげなければ。シャランラ~!」
魔法紳士が右手をふわふわと振る。
使い魔ペレズがその周りを飛び回り、黒い光が辺り一面に広がった。
「色が禍々しい! 闇属性じゃろ!」
「失礼な! 違いますよ!」
言い争いをしつつも光が収まる。
「ほら、これで大丈夫です」
ペレディールが周囲を見回すと、崩れた遺跡の壁は元に戻っていた。
「くっ……貴様に礼を言うのは不本意だが……助かったぞモービダス」
「魔法紳士モービダスです。ふふ……存分に感謝してくださいよ、感謝感激平身低頭……」
「貴様……元の世界じゃ悪役じゃな?」
「失礼な! 正義の味方、民衆の味方、みんなのアイドルですよ! 決めポーズもこの通り、『魔法紳士モービダス、今日もみんなのトラブル解決♡ もびもびっ♡』!」
もびもびっ、でVサインをした右手を頬に当て、きらきらした笑顔を浮かべる魔法紳士。
「ええー……」
ペレディールは眉を寄せて魔法紳士を見る。
「やめてくださいそんな目でこっちを見るの!」
「哀れじゃのう……」
「私は結構いい決めポーズだと思ってるんですが!?」
「強がらなくてもいいぞい、モービダス……今日ばかりは私は貴様の味方をしてやろう……。助けてもらった恩もあることだし、今日は一緒に遺跡の調査でもするか?」
「なっ……そんなの……」
「ん?」
「まるで……」
魔法紳士モービダスは俯いてしまう。
「ど、どうしたんじゃ」
「な、なんでもありません……なんでも」
「なんでもないって様子じゃないぞ! 大丈夫か、モービダス」
「魔法紳士モービダスです。あなたの世界のモービダスとは違うんです……あなたも、私の世界のペレディールとは違う……だから……」
「だから?」
「今日はここでお別れです、ペレディール……」
「帰るのか、気をつけてな」
「あなたもですよ、周囲の様子には気をつけて。この遺跡は強化しておいたので当分大丈夫だと思いますが、これからは遺跡の崩落なんかに巻き込まれないようにしてくださいね」
「な、貴様思ったより過保護じゃな……」
「なんとでも。カモン! 使い魔ペレズ!」
朝・夜・月のペレディールが魔法紳士を中心に三角形を作る。
『シャランラ』
「ではまた、違う世界のペレディール! ふはははは!」
溢れ出る黒い光。
哄笑する魔法紳士。
それらが収まったとき、黒い男はもういなかった。
「騒がしい奴だったのう……」
ペレディールはため息を吐く。
そこで止まる。
「あやつ、ではまた、と言ったか……?」
再び魔法紳士と出会うことになる可能性を思い浮かべてしまい、頭をぶんぶんと振るペレディールであった。
そんな話。
「うかつじゃった……まさか遺跡の壁が崩れて閉じ込められてしまうとは……」
どこか出られそうな隙間はないかとペレディールは壁を見る。
「うーむ、火炎魔法で吹き飛ばすと貴重な遺跡が壊れてしまいそうじゃの……どうしたものか……」
顎に手を当て考えていると、
「お困りですか、お嬢さん」
「私はお嬢さんではな……って、貴様!?」
ペレディールの目の前に立っていたのは緑色のラインが入った黒色のタキシードにシルクハットを被った濃茶色の髪の男。
「モービダス!? 死んだのではなかったのか!?」
「ちっちっち」
モービダスのように見える人物は片眉を上げ、指を振ってみせる。
「私は魔法紳士モービダス。普通のモービダスとはひと味違うのですよ」
「な……!?」
「カモン、使い魔ペレズ!」
『ぽん! 私は朝のペレディール!』
『ほっ! 私は夜のペレディール!』
『むにゃ……私は月のペレディール』
『三人合わせて……』
『『『使い魔ペレズ!』』』
「なんじゃその名乗りは!? というか……三人の私!? モービダス貴様……」
「魔法紳士モービダスです」
「何でも一緒じゃろ! モービダス貴様、そういう趣味だったのか!」
「なっ」
ずっこける魔法紳士モービダス。
「違いますよ……そういう『設定』なんです。決して私がそういう趣味の持ち主というわけでは」
「いやしかし……三人の小さな私を侍らせて使い魔にしているというのはかなり……」
「違いますってば!」
魔法紳士は叫ぶ。
「魔法紳士に選ばれると使い魔を与えられるんですよ! 使い魔はその紳士に一番近しい位置にある人物をモデルに作られるらしくて」
「モービダスお前……」
ペレディールが言葉を切る。
「私しか友達がいなかったのか!」
「違いますって!」
もー、と魔法紳士。
「私はあなたの世界のモービダスとは違うんです。あなたも私の世界のペレディールとは違うんです、私の世界のペレディールは……」
「貴様の世界の私は……?」
「いえ、よしましょう。今はそんな話をしても仕方がない。とりあえず貴方をここから助けてさしあげなければ。シャランラ~!」
魔法紳士が右手をふわふわと振る。
使い魔ペレズがその周りを飛び回り、黒い光が辺り一面に広がった。
「色が禍々しい! 闇属性じゃろ!」
「失礼な! 違いますよ!」
言い争いをしつつも光が収まる。
「ほら、これで大丈夫です」
ペレディールが周囲を見回すと、崩れた遺跡の壁は元に戻っていた。
「くっ……貴様に礼を言うのは不本意だが……助かったぞモービダス」
「魔法紳士モービダスです。ふふ……存分に感謝してくださいよ、感謝感激平身低頭……」
「貴様……元の世界じゃ悪役じゃな?」
「失礼な! 正義の味方、民衆の味方、みんなのアイドルですよ! 決めポーズもこの通り、『魔法紳士モービダス、今日もみんなのトラブル解決♡ もびもびっ♡』!」
もびもびっ、でVサインをした右手を頬に当て、きらきらした笑顔を浮かべる魔法紳士。
「ええー……」
ペレディールは眉を寄せて魔法紳士を見る。
「やめてくださいそんな目でこっちを見るの!」
「哀れじゃのう……」
「私は結構いい決めポーズだと思ってるんですが!?」
「強がらなくてもいいぞい、モービダス……今日ばかりは私は貴様の味方をしてやろう……。助けてもらった恩もあることだし、今日は一緒に遺跡の調査でもするか?」
「なっ……そんなの……」
「ん?」
「まるで……」
魔法紳士モービダスは俯いてしまう。
「ど、どうしたんじゃ」
「な、なんでもありません……なんでも」
「なんでもないって様子じゃないぞ! 大丈夫か、モービダス」
「魔法紳士モービダスです。あなたの世界のモービダスとは違うんです……あなたも、私の世界のペレディールとは違う……だから……」
「だから?」
「今日はここでお別れです、ペレディール……」
「帰るのか、気をつけてな」
「あなたもですよ、周囲の様子には気をつけて。この遺跡は強化しておいたので当分大丈夫だと思いますが、これからは遺跡の崩落なんかに巻き込まれないようにしてくださいね」
「な、貴様思ったより過保護じゃな……」
「なんとでも。カモン! 使い魔ペレズ!」
朝・夜・月のペレディールが魔法紳士を中心に三角形を作る。
『シャランラ』
「ではまた、違う世界のペレディール! ふはははは!」
溢れ出る黒い光。
哄笑する魔法紳士。
それらが収まったとき、黒い男はもういなかった。
「騒がしい奴だったのう……」
ペレディールはため息を吐く。
そこで止まる。
「あやつ、ではまた、と言ったか……?」
再び魔法紳士と出会うことになる可能性を思い浮かべてしまい、頭をぶんぶんと振るペレディールであった。
そんな話。