ウィンゲート×ファビオ×ウィンゲート

 春。
 桜咲くリバーランドの川べりでファビオとウィンゲートが花を見ていた。
「剣と魔法のファンタジーらしいからボクたちもエイプリルフールしようよウィンくん!」
「剣と魔法のファンタジー、ってこの世界は元々そうじゃないか」
「あっ」
「あっ?」
「そうだった!」
「そうだろう」
「でもボクとキミが前世の絆で結ばれているのは本当なんだ!」
「どうしたファビオ、頭でも打ったか」
「ボクは極めて正気さ……このエイプリルフールの春風に吹かれて少し陽気になってしまっているだけさ」
 ね、とファビオが両手を広げる。
「春風。つまりファビオか」
「う、まあ、そうだね」
「照れてるのか?」
「いやそんなことはないさ! 何せボクとキミは前世の絆で……」
「じゃあ訊くが、どんな絆なんだ?」
「えーと……たぶん……姫と王子だね」
「どっちが?」
「どっちかなあ。ボク的にはボクの方が王子だけど」
「な、つまり、俺が姫ってことか?」
「そうなるね」
「納得できないな」
「え、なぜだい?」
「王子にしろ姫にしろ、どっちも俺には合わん」
「えーじゃあ吟遊詩人と技師とかにする?」
「技師ってどこから出てきた」
「サイバー的なやつも大事ってギルデロイくんが」
「エイプリルフールパワーで世界観の壁を越えるんじゃない」
「姫駄目かあ」
「駄目だ。もっと他のものにしろ」
「前世の絆ってなるとすごい強い感じになるから、肩書きみたいなものもそれなりに強い方がいいと思うんだよね。そうなってくると……」
「義賊と踊り子でいいだろう」
「そのままじゃないか!」
「そのままでいいんだよ。俺たちは今が一番合ってるんだ。そう思わないか? ファビオ、お前はいつが一番楽しいんだ」
「今だね」
「そうだろ」
「そうだねえ。……あー、ウィンくんには勝てないねえ!」
 ふ、とウィンゲートが笑う。
 ファビオもそれを見てにこ、と笑う。
「ずっと仲良しでいようねえ」
「ああ」
 そうして二人は無言で川を眺める。
「じいさん早く、もうみんな集まってるぞ!」
「あ、そういえばボクたち場所取りしてたんだったね」
「そうだがお前は忘れてたのか」
「忘れてはないさ。覚えていたとも」
「花見か」
「花見さ!」
「……いい一年になるといいな」
「そうだね!」

 春は続く。
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