ウィンゲート×ファビオ×ウィンゲート
「運命、……」
「どうしたファビオ」
川辺。水面をじっと見ながら呟いたファビオにウィンゲートが声をかける。
「ん?」
「独り言なんて珍しい……いや珍しくはないか。気になる女子でも見つけたか」
「えっ!? ボクはいつでもキミ一筋だよ、何をそんな」
「は!? 何を言っているんだお前は!?」
「え、え、いや……違うんだこれは」
「おやおやおやおや青春じゃのう!」
突然響いた大声に跳び上がる二人。
「じ、じいさん! いつからいた!」
慌て気味にウィンゲート。
「さっきからいたぞ。私の気配に気付かないとはウィンゲート、盗賊失格なんじゃあないか?」
「じいさん……」
ウィンゲートははあ、とため息を吐く。
「じゃが私がここで出てこなければ妙な空気になっていたのではないか? どうなんじゃファビオ」
「ええ~? そんなことないさ、ボクたちはいつでも普段通り、その空気が乱れることなんて……」
「何を言ってるんだお前は……」
ウィンゲートは眉を寄せてファビオを見る。
「悪友コンビ……いつでも二人組だろボクたちは。仲良しなのさ」
「そうだな」
「あ、否定しないんだ」
「事実だ。仲は良い、と俺は思う」
「うむうむ」
頷くペレディール。
「喧嘩しそうになったら私に相談するのだぞ。もしくは他の団員でも良い」
「喧嘩なんてしないよぉ。そうだよね、ウィンゲート」
「喧嘩なんて日常茶飯事だろ」
「えっ」
「え?」
「おやおやおや」
「ボクは喧嘩してるつもりないんだけど」
「まあ……俺のあれはあくまでツッコミだとお前が認識しているのならそうなる」
「ツッコミだよね!?」
「そうだが」
「あ、それも認めるんだ」
「……」
「私はいなくても大丈夫かね?」
「大丈夫だが……」
「いたかったらいればいいし、いたくなかったら去ればいいんだよ」
「ファビオ、お前はいつもそうじゃのう。……無理はしすぎるんじゃないぞ」
「無理なんかしてるつもりはないんだけど」
どうだかな、とウィンゲート。
「ウィンくんまでそう言う!?」
ひどいなあ、とファビオ。
「まあまあまあ。まあでも……私がいなくても大丈夫そうじゃな。……じゃあの!」
ペレディールはにこ、と笑ってウィンク一つ、去る。
なんとなく、沈黙が落ちる。
そよそよ、と春の風。
「ああ……いい天気だねえ」
「そうだな」
「平和だねえ……」
「ああ」
「こんな日が、いつまでも続けばいいのにねぇ……」
「お前でもそんなこと言うんだな」
「言うよぉ。ボクだって何も怖くないわけじゃないさ。日常が失われるのはやっぱり怖い」
「俺もだ」
「え、ウィンくんも」
「俺は皆が平和に暮らせる日常が一番いいと思ってる、本当は義賊なんていない方がいいんだ」
「え、でも」
「義賊ウィンゲート、それを俺は目指してる。それは確かにそうだ。だが……義賊なんていなくても皆が平和で平穏に暮らせるんならそれに越したことはないだろう?」
「まあ、そうだね」
「なんてことを最近は思うんだ……最近、だけどな」
「ウィンくんもそんなこと思うんだねえ……ただの義賊バカだと思ってたけど」
「は!? お前そんなこと思ってたのか!?」
「ははは、冗談だよぉ」
「お前の冗談はよくわからないんだよ……そういうのやめろっていつも言ってるだろう」
「冗談は場を和ませるのさ。春の風のようにね」
「春の風……」
ぼんやりとウィンゲートが繰り返す。
「……まるでお前だな」
「えっ」
「お前は春風だ……華麗に舞い、踊り、人々の心を和ませる」
「ボクどっちかというと夏の風っぽいと思ってたんだけど」
「え、春風だろう?」
「ウィンくんが春風っていうなら春風なんだろうねえ」
そっかー、そんな風に見えてたかぁ、とファビオは目を細める。
「ありがとうね、ウィンくん」
「礼を言われるようなことはしていないが」
「ううん、それでも、ボクにとっては日常が……そして、その日常を構成してくれている旅団のみんな……そしてウィンくん……が、さいわいなのさ」
「……」
そうか、とウィンゲート。
そうだよ、とファビオ。
春の風が吹き。
草花が揺れていた。
「どうしたファビオ」
川辺。水面をじっと見ながら呟いたファビオにウィンゲートが声をかける。
「ん?」
「独り言なんて珍しい……いや珍しくはないか。気になる女子でも見つけたか」
「えっ!? ボクはいつでもキミ一筋だよ、何をそんな」
「は!? 何を言っているんだお前は!?」
「え、え、いや……違うんだこれは」
「おやおやおやおや青春じゃのう!」
突然響いた大声に跳び上がる二人。
「じ、じいさん! いつからいた!」
慌て気味にウィンゲート。
「さっきからいたぞ。私の気配に気付かないとはウィンゲート、盗賊失格なんじゃあないか?」
「じいさん……」
ウィンゲートははあ、とため息を吐く。
「じゃが私がここで出てこなければ妙な空気になっていたのではないか? どうなんじゃファビオ」
「ええ~? そんなことないさ、ボクたちはいつでも普段通り、その空気が乱れることなんて……」
「何を言ってるんだお前は……」
ウィンゲートは眉を寄せてファビオを見る。
「悪友コンビ……いつでも二人組だろボクたちは。仲良しなのさ」
「そうだな」
「あ、否定しないんだ」
「事実だ。仲は良い、と俺は思う」
「うむうむ」
頷くペレディール。
「喧嘩しそうになったら私に相談するのだぞ。もしくは他の団員でも良い」
「喧嘩なんてしないよぉ。そうだよね、ウィンゲート」
「喧嘩なんて日常茶飯事だろ」
「えっ」
「え?」
「おやおやおや」
「ボクは喧嘩してるつもりないんだけど」
「まあ……俺のあれはあくまでツッコミだとお前が認識しているのならそうなる」
「ツッコミだよね!?」
「そうだが」
「あ、それも認めるんだ」
「……」
「私はいなくても大丈夫かね?」
「大丈夫だが……」
「いたかったらいればいいし、いたくなかったら去ればいいんだよ」
「ファビオ、お前はいつもそうじゃのう。……無理はしすぎるんじゃないぞ」
「無理なんかしてるつもりはないんだけど」
どうだかな、とウィンゲート。
「ウィンくんまでそう言う!?」
ひどいなあ、とファビオ。
「まあまあまあ。まあでも……私がいなくても大丈夫そうじゃな。……じゃあの!」
ペレディールはにこ、と笑ってウィンク一つ、去る。
なんとなく、沈黙が落ちる。
そよそよ、と春の風。
「ああ……いい天気だねえ」
「そうだな」
「平和だねえ……」
「ああ」
「こんな日が、いつまでも続けばいいのにねぇ……」
「お前でもそんなこと言うんだな」
「言うよぉ。ボクだって何も怖くないわけじゃないさ。日常が失われるのはやっぱり怖い」
「俺もだ」
「え、ウィンくんも」
「俺は皆が平和に暮らせる日常が一番いいと思ってる、本当は義賊なんていない方がいいんだ」
「え、でも」
「義賊ウィンゲート、それを俺は目指してる。それは確かにそうだ。だが……義賊なんていなくても皆が平和で平穏に暮らせるんならそれに越したことはないだろう?」
「まあ、そうだね」
「なんてことを最近は思うんだ……最近、だけどな」
「ウィンくんもそんなこと思うんだねえ……ただの義賊バカだと思ってたけど」
「は!? お前そんなこと思ってたのか!?」
「ははは、冗談だよぉ」
「お前の冗談はよくわからないんだよ……そういうのやめろっていつも言ってるだろう」
「冗談は場を和ませるのさ。春の風のようにね」
「春の風……」
ぼんやりとウィンゲートが繰り返す。
「……まるでお前だな」
「えっ」
「お前は春風だ……華麗に舞い、踊り、人々の心を和ませる」
「ボクどっちかというと夏の風っぽいと思ってたんだけど」
「え、春風だろう?」
「ウィンくんが春風っていうなら春風なんだろうねえ」
そっかー、そんな風に見えてたかぁ、とファビオは目を細める。
「ありがとうね、ウィンくん」
「礼を言われるようなことはしていないが」
「ううん、それでも、ボクにとっては日常が……そして、その日常を構成してくれている旅団のみんな……そしてウィンくん……が、さいわいなのさ」
「……」
そうか、とウィンゲート。
そうだよ、とファビオ。
春の風が吹き。
草花が揺れていた。
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