ゆめにっき



 その日はひどく暑い日で、珍しく学校に行って外を歩いて帰ってきた私は汗まみれになっていた。
「はー……」
 ため息。
 この国がこんなに暑いなんて、間違ってる。
 私は着替えるものも着替えず、ベッドに潜り込んだ。

 3、
 2、
 1、


 ◆


「……それで、雨が降ってて涼しそうな俺のところに来たってわけか」
 私は頷く。
「単純だねえ」
 死体は笑う。
「で、結果は?」
「蒸し暑い……」
「空調はつけたかい? 着替えとシャワーは?」
「現実でなんて何もしたくないよ」
「はは……そっか」

 会話が途切れる。

 私は雪女のエフェクトを使い、雪を降らした。

「綺麗だねえ」
 と死体が言う。

「あなた、寒くないの?」
「寒くはないさ。死んでるんだから。君は寒くないの?」
「………」
 きっと、エフェクト本来の特質で寒さを感じないようになっているのだろう。寒くない。むしろ、あたたかい。
 いや、蒸し暑い。
「あつい」
「ははは。現実の君をなんとかしないと夢に反映されてしまうよ。まずは空調をつけて、お風呂に入ってきたらどうだい」
「こんな時間からお風呂に入ってたら■に■■られる」
「へえ」
 返す、死体の声は冷えていた。

「どうしたの?」
「いや? 大の大人は他人の家庭に口出ししないものさ」

「無責任ね、貴方って人は」
「死体だからさ」

「やっぱりあの人とは違う」
「そりゃ、別人だからさ」

「そう……」

 降りしきる。雪がしんしんと降りしきる。
 けれどもそれで現実リアルが変わることはなく。
 蒸し暑い。私は頬をつねる。


 ◆


 蒸し暑い部屋、蒸し暑いのが現実で、私はどうしようもなく一人だった。


14/15ページ
スキ