ポケットモンスターブラック・ホワイト
ゲーチスが、死んだ。
その噂を聞いたとき、胸の奥がざわつくのを感じた。
それはあたしが今まで感じたことのない感覚だった。重くて、遠くて、叫び出したくなるような、途方に暮れたくなるような、そんな気持ち。
すぐに確かめに行きたかった。けれど手がかりなんてどこにも、誰からも。
そもそもなんでそんな気持ちになっているのかわからない。ゲーチスはイッシュにひどいことをした、憎くて、最悪の敵だ。そんな存在が死んだら、悪が滅びた、因果応報だと爽快な気分になるのが普通なのに、嬉しい気持ちは微塵もわいてこなかった。
あたしはいてもたってもいられなくなってゼクロムに乗り、気がついたらポケモンリーグの前にいた。
リーグはただそこに建っていて、灰色の柱が日光を反射しながら佇んでいた。
それ以外は、何もない。
あたしはなぜか落胆した気持ちになった。それもどうしてかわからない。プラズマ団の城がなくなってから、何度かここには来ているはずなのに。
次の日、ゼクロムを連れてイッシュを回った。カラクサタウン、ヒウンシティ、ホドモエシティ、シリンダーブリッジ、ソウリュウシティ。
どこにもいない、という言葉がぽつんと浮かぶ。
誰が? そもそも、あたしはどうしてこんなに慌ててイッシュを回っているのだろう。
わからなかった。
夕暮れが近付いた頃、あたしは古代の城に向かった。
城は様変わりしていた。砂で埋もれてしまったのか、見知った場所は入り口のみ。
さらさらと砂が目の前で落ちていく。それは行き場のなくなったあたしの感情みたいに底なしの穴に吸い込まれて消える。
わからない。何もわからない。自分の感情さえ迷子になってしまった。今の今まで感情に蓋をして、今更それが開いてしまったような。感情の奔流を制御できず、あたしはただ途方に暮れる。
ゼクロムが隣で小さく鳴く。
紅い夕暮れが、いつまでもあたしの目に焼き付いていた。
その噂を聞いたとき、胸の奥がざわつくのを感じた。
それはあたしが今まで感じたことのない感覚だった。重くて、遠くて、叫び出したくなるような、途方に暮れたくなるような、そんな気持ち。
すぐに確かめに行きたかった。けれど手がかりなんてどこにも、誰からも。
そもそもなんでそんな気持ちになっているのかわからない。ゲーチスはイッシュにひどいことをした、憎くて、最悪の敵だ。そんな存在が死んだら、悪が滅びた、因果応報だと爽快な気分になるのが普通なのに、嬉しい気持ちは微塵もわいてこなかった。
あたしはいてもたってもいられなくなってゼクロムに乗り、気がついたらポケモンリーグの前にいた。
リーグはただそこに建っていて、灰色の柱が日光を反射しながら佇んでいた。
それ以外は、何もない。
あたしはなぜか落胆した気持ちになった。それもどうしてかわからない。プラズマ団の城がなくなってから、何度かここには来ているはずなのに。
次の日、ゼクロムを連れてイッシュを回った。カラクサタウン、ヒウンシティ、ホドモエシティ、シリンダーブリッジ、ソウリュウシティ。
どこにもいない、という言葉がぽつんと浮かぶ。
誰が? そもそも、あたしはどうしてこんなに慌ててイッシュを回っているのだろう。
わからなかった。
夕暮れが近付いた頃、あたしは古代の城に向かった。
城は様変わりしていた。砂で埋もれてしまったのか、見知った場所は入り口のみ。
さらさらと砂が目の前で落ちていく。それは行き場のなくなったあたしの感情みたいに底なしの穴に吸い込まれて消える。
わからない。何もわからない。自分の感情さえ迷子になってしまった。今の今まで感情に蓋をして、今更それが開いてしまったような。感情の奔流を制御できず、あたしはただ途方に暮れる。
ゼクロムが隣で小さく鳴く。
紅い夕暮れが、いつまでもあたしの目に焼き付いていた。