一つ一つ重ねたカミは

 ミラーボールが回る。ぐるぐる。ぐるぐる。
「師匠」
 ディスコナイトを照らす明かりはただただ煌めいて、目を焼くその色はーー
「師匠!」
「あ、ああ、どうしたんですか弟子くん」
「どうしたはこっちの台詞ですよ。ぼーっとしちゃって」
「……なんでもないんです」
「本当に?」
 そう、本当に?
 私は何を考えたのだろうか、何を考えているのだろうか。視界に焼き付き離れぬ色は、そんな色はいらなかった、いらなかったのに。
「ちょっと休んだ方がいいんじゃないですか?」
「あー……じゃあ、ちょっと外に出てきます」
「いってらっしゃい」
 夜。空に出ている満月は決してあの「穴」ではなく。
「穴」ではないのにそれがひどく暗く思えて、欠けているのはそう――
『踊ろうぜ』
 記憶の中から聞こえた呼び声を無視して綺麗だなあと呟く、とても白々しく響いて。
「……」
 この夜はいずれ明ける。それはもう数時間で。
 欠けた色彩、永遠の夜はもうここには来ないのだと。
 そう思った。
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