一つ一つ重ねたカミは

「なあDJ!」
「なんですか」
「DJの怖いものって何?」
「え」
 パンチさんです、とは口が裂けても言えない。
「なー何?」
「え……えーと、空、ですかね」
「空?」
 パンチさんが身体をかしげる。
「空とか怖いか?」
「まあたまに」
「なんで?」
「……」
「説明」
「は、はい」
 あまり気が進まないというか大いに気が進まなかったけれどここで言わなければ穴を空けられると思うし、ふうと息を吐いて、口を開く。
「空は広すぎるんです」
「広すぎる?」
「太陽のある青空は青すぎるし、月のある夜空も明るすぎるんです。私という存在に対して空というものは色々と広すぎて……怖い、といいますか、何か……」
 虚しい、というのが本当のところだったが口に出せずに言いよどむ。
「太陽があっちゃ駄目、明るすぎる夜空が駄目、ってことは今が一番いいってことじゃん! よかったなDJ! おれッチに感謝しろよ!」
「あ、えーと、はい、ありがとうございます……」
「ハハハ!」
 笑うパンチさんを見ながら、■■■、ああ、言えない、何も言えない。何も。
 言えなくなった。
57/82ページ
スキ