一つ一つ重ねたカミは

「ジャーン! 見ろDJ!」
「な、なんですかそれは」
「白衣!」
「どうしたんですか」
「わゴムに借りっぱなしだったの見つけた! なー似合う? 似合う?」
 パンチさんはそう言って一回転する。
 白衣の裾がたなびいて、残像。黄色、白、黒。
「……」
「オイオイDJ、反応悪ぃぜ?」
「……」
「あっもしかして見惚れちゃった? 何せおれッチはイケメンだからな! イケメンは何着ても似合う!」
「えっと」
 私は困惑した。
 文房具が白衣を羽織っている謎の図なのにものすごく煌めいて見えるこれは一体何なのだろうか。
「なァ」
 ずい、とパンチさんが寄る。
「は、はい」
「これで何かプレイ思い付いた?」
「ぷ、ぷれい」
 何の???????
「インスピレーション受けただろ? 選曲も冴えるってもんだぜ」
「あ、あー、選曲ですね、ああー!」
「……オマエ、今何考えてた?」
「べ、別に何も」
「……」
「そんな、パンチさんに言えないようなことは何も考えてませんよ! 当然じゃないですか!」
「へえ~?」
 にやにやと笑うパンチさん。顔はないけど雰囲気でわかる。
「教師と生徒ごっこでもするか?」
「し、しませんよそんな」
「おれッチ攻める方ね」
「勝手に決めないでください……」
「オマエ攻めがよかったの?」
「や、やめてくださいよー!」
「ハハハ!」
 散々私をからかった後パンチさんは白衣を丸めて部屋のすみに押し込んだ。
 それを見る度に白衣パンチさんがチラついて頭がぐるぐるするのを誤魔化したり誤魔化せなかったりして、しかもたまにパンチさんは白衣を着た。
 そういうのは本当にやめてほしかったです。
55/82ページ
スキ