一つ一つ重ねたカミは

 怖い、怖い、恐ろしい。煌めく黄色が視界から離れなくてぐるぐる、ぐるぐる、寝ても覚めてもあの人がいて、ノれる曲をかけられなきゃ穴、かけられなくても穴、私はどうすればいいのか、どうすればいいのか、プロとしては場を盛り上げるしかないけれどぐるぐる、ぐるぐる、でも、曲を回せばそんなことも気にならなくなって、煌めくあの人の姿に私もアガって、ほらテッペン目指そうぜ、二人ならいけんじゃね? そんな幻聴。



 シケた世界で唯一おれッチをアガらせてくれるもの、それは音楽。ノリノリの曲が来ると身体が勝手に動きだす、ステップを踏む、ハンドルが動き出す。いいねDJそのまま回してろ、二人ならテッペン目指せるぜ。
 口をついたその言葉に違和感を覚えて、今おれッチは何て言った?
 だがノリノリのミュージックがそれをかき消す、まあいいか! こんなこと滅多にねーよ、シケたノリはつまんねー、今夜はアゲていくぜ!



 思い返せば呪いのように私を縛り付けて、ああ、幻聴であったほうがまだよかったと。
 思えど煌めきは遠く。
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