一つ一つ重ねたカミは

「DJ」
「はい」
「オマエ、紅茶とかコーヒーとか好きなの?」
「え」
「どうなんだよ」
「好き、というか……」
「好きだから飲んでるんじゃねえのか?」
「まあ、そうですね」
「違うのか?」
「こういう系のやつって結構習慣で、くせになるんですよね。毎日飲んじゃうっていうか……好きだから、というよりは、習慣だから、と言った方が正しいでしょうね」
「ふーん……」
「パンチさんは違うんですか?」
「……」
「パンチさん?」
「教えねー」
「えっ」
 なんで?
「秘密が多い方がミリョクテキだろ?」
「えっ」
 どういう?
「なァDJ」
「な、なんですか」
「なんでもねー。けどオマエも毎日飲めよ」
「言われなくても飲みますけど」
「あっそ」
 ならいい、と後ろを向くパンチさん。
 なんだったんだろうと考えても思い当たることはないし、まあいつものわがままなんだろう、と結論付けて。
 それが何だったのか、なんて、本当はあまり考えない方がよかった。
 ……今となってはもう、遅いのだけれど。
50/82ページ
スキ