一つ一つ重ねたカミは

「パンチさん……いいこと、しませんか?」
「いいのか?」
「パンチさんなら、いいですよ」
「よっしゃー、じゃあさっそく!」
 バチン!



「ふざけた夢だな……」
 寝起きの機嫌は最悪で、あいつがあんなこと言うわけがないのにクソみたいな気分になった。
 それにノったおれッチもおれッチだぜ。穴あけフリークの名は伊達じゃないってか。
 っていうか何だあの夢は? 願望? それならおれッチは何かを我慢してるとでも? わかりやすく言うなら、あいつに穴を空けるのを?
「パ、パンチさん」
「ああ?」
 珍しくあいつから声をかけてくる。
『いいこと、しませんか?』
 いやいやそんなこと言うわけがない。思考を振り払う。
「大丈夫ですか?」
「は?」
「起きてる、んですよね、ずっと黙ってるから……」
「はー? そんなことオマエに心配される筋合いないんだが? 勝手に心配してんじゃねー」
「そ、そうですよね、すみません……」
「おい」
 声をかける。
「顔見せろ」
「え、か、顔……?」
「早く」
「は、はい……」
 おずおずと扉の隙間から顔を出すあいつに穴は、ない。
「わかった、もういい」
「えっ」
「もういいっつってんの、ポジション戻れ」
「……? はい……」
 安堵した、なんてぜってー認めたくなかった。
 そんなのふざけてる。ふざけきってる。
 あいつに穴を空けるのは夢の中なんかじゃ駄目だ。現実。現実じゃないと。
 悪夢のような現実の中で行うからこそ穴あけは美しくて気持ちイイ。
 だからあいつを空けるのは一番盛り上がった夜じゃないと。
 そう、そうだ、そうでなくちゃ。
「DJ!」
「は、はい」
「期待してるぜ」
「は……はい!」
 大丈夫、おれッチは今日もノれる。
 そして回帰する。■■のような日常に。
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