「なーDJ、オマエおれッチのことどう思ってる？ どう思ってる？」
　怖いです、なんて正直に言えるわけがない。正直に言ったら穴を空けられる。だから私は、
「パンチさんは……いつも輝いてますね」
　と言った。嘘ではない、彼はステップもダンスもキレキレで、ノリがいいという言葉だけで片付けるのが勿体ないほどだ。
　輝いている、それは真の、心からの言葉であったが、それを言ってもなお彼の気に召さない可能性はあったし、結局私はこうして震えながら彼の返しを待つのだ。
「お、わかってんじゃん。おれッチはいつもノリノリフリークさ」
　パンチさんの声は軽い。私の返答は気に入ってもらえたようだ。
「なー、他には？ 他にはどう思ってる？」
「ほか、とは」
「決まってんじゃーん。好きとか、嫌いとか。あるだろー？」
「えっ」
「DJ」
「な……」
　パンチさんがずい、と身を乗り出す。大きな影が落ちる。
「お前」
「は、はい」
「おれのこと好きだろ」
　一瞬、何を言われたかわからなかった。
「……は！？」
「ハハハ、ジョーダンだよジョーダン」
「……は」
　ペラペラの心臓が早鐘を打っている。理解できない、私は今何を思った？
「あ、怒った？」
「そ、そんな、とんでもありませんっ」
「焦ってる焦ってる、あーおもしれー」
　ケラケラと笑うパンチさん。
　おれッチ寝るから部屋帰るわー、ミラーボールの点検忘れんなよー、と言い残してパンチさんは去って行った。
　今日は機嫌が良かったな、と思う。
　何が原因なのかはわからない。でも、機嫌が良ければ良いほど穴を空けられる確率は下がるのだし、いや、機嫌が良ければ良いほど穴を空けられる確率が上がるのか？ だんだんわからなくなってきた。そもそもこのうるさい心臓がよくない、こううるさくては落ち着いて機材の手入れをすることさえできない。
「……はあ」
　ため息をついてミラーボールを見上げる。
　それはきらきら、きらきらと輝いていて、
「パンチさんみたいだ……」
　言ってしまってから、はっと口を押さえる。
　反応はない。
　ああ。私は――
　そうしてもう一度ため息をついて、のろのろと機材の手入れに戻った。