そんな時もあったな、なんて
『そんな曲つまんねーよ全然ダメ。オマエ才能ないんじゃない?』
『ナイスDJ、今のはよかった。やっぱりオマエはトクベツだな!』
『クソみてえな曲流してんじゃねーよ、本当に穴空けられたいわけ?』
『そうそうそれでいいんだよ、いいプレイするじゃん』
くるくるくるくるひっくり返す。
気分屋ってだけ?
違うんだな。
そっちの方が面白いからあえて気分屋をやってる、そうかもしれねえ。
怯えたり喜んだり、そう、喜んでるんだよあいつは。おもしれー。あんだけビビらせてるのになんであんな態度取れるわけ? おもしれえにも程がある。
紙ッペラって種族が鳥頭なのか知らねえが、あいつ褒めるとものすごく嬉しそうな顔すんの。その後慌てて表情消すけどバレてんぞ。おもしれえ。
ビビらせた時も本当にいい顔してる。この世の終わりみてーな、恐怖の表情。サイコーだな。それを見ながら今この瞬間穴を空けたらビビった顔のままおれの腹の中に入るのかなんて思って、でも勿体ないから後回しにしてる。そういう実験は他の奴らでやればいいし。
面白くて面白くてでも壊しちまったら意味がないからほどほどに嬲る。壊したらDJいなくなるし。
「なあDJ」
「な、なんですか……」
ビビってるビビってる、超おもしれえ。
「今日のプレイはよかったぜ」
「ほ、ほんとですか!」
「やっぱオマエはサイコーだな」
「あ……ありがとうございます!」
超喜んでる、あーおもしれえ。こいつなんでこんな喜ぶの? おもしれえ、超おもしれえ。
「なーDJ、オマエとならテッペン目指せるかもな」
「えっ」
んー? この反応は何だ?
「オマエはどう思う?」
「そ、そんな……でも私なんか」
あーそういう系ね。元からそうなのかここに来てからそうなったのか知らねーけどこいつのそれを折りに折ったのおれッチだしな。
「ダイジョブダイジョブ、オマエはトクベツ、すばらしーDJだっておれッチだけは知ってるぜ。オマエとならどこまでも行けるって、絶対」
「パ、パンチさん……」
俯くDJ。これはどういう反応だ?
肩が震えてる。怒ったか?
「DJ?」
「……」
「なんか喋れよ」
「あ、ありがとうございます……」
声も震えてる。なんだ?
「俯いてちゃわかんねーぜ、顔上げろ」
「え……」
「仕方ねー奴だな」
ずい、と近付く。腹側の角でくい、と顎を持ち上げる。
「パ、ンチさん……」
サングラスの下の瞳は濡れていた。それを見て、
「…………」
「恥ずかしいです……」
こみ上げたものが何なのかわからなかった。
ぐるぐるした、渦巻く何らかの衝動。
穴を空けてえときと似てる。じゃあ穴空ければ戻るのか?
「あの、パンチさ……」
一歩退く。
カチ、カチ、と刃を鳴らす。
「パンチさん?」
バチン!
「ひっ」
避けるDJ。
「びっくりしたか?」
「な、なんで」
「さあな」
「私が泣いたから……?」
「さあ。お前の泣き顔、」
「見たくないですよね……」
「サイコーだよな」
「えっ」
「穴、空けたくなる」
「や、やめてください……」
「まだだ。まだ空けねえよオマエには。なぜってオマエは」
トクベツだからな。
告げるとあいつは瞬きをして、その拍子に涙が散って、ミラーボールのライトに照らされたそれは、
「……ハ」
「あ、あの……」
「おれッチは寝る、起こすなよ」
「は、はい、あの」
「何だ」
「ありがとうございます……」
「当然だ。何度も感謝しろよ。おれッチの気まぐれにな」
「はい」
嬉しそうに笑うそいつにまた衝動がこみ上げて、刃を鳴らしたくなるのを我慢する。
一番いいときに空けてやる。一番盛り上がった夜、サイコーの瞬間に空けてやる。きっと楽しい、それがきっと、一番楽しい。
それまでに色々な顔を見てやろう。笑った顔、怯える顔、泣いた顔、他にもたくさん、全部見るまで空けねえ。ヤバいなおれッチ天才じゃん。それって絶対おもしれー。
そう思うとこの我慢もまあ、そんなに悪かねえんじゃないかって気がして、まあ。
それはもう、
「なくなった」ものの話。
『ナイスDJ、今のはよかった。やっぱりオマエはトクベツだな!』
『クソみてえな曲流してんじゃねーよ、本当に穴空けられたいわけ?』
『そうそうそれでいいんだよ、いいプレイするじゃん』
くるくるくるくるひっくり返す。
気分屋ってだけ?
違うんだな。
そっちの方が面白いからあえて気分屋をやってる、そうかもしれねえ。
怯えたり喜んだり、そう、喜んでるんだよあいつは。おもしれー。あんだけビビらせてるのになんであんな態度取れるわけ? おもしれえにも程がある。
紙ッペラって種族が鳥頭なのか知らねえが、あいつ褒めるとものすごく嬉しそうな顔すんの。その後慌てて表情消すけどバレてんぞ。おもしれえ。
ビビらせた時も本当にいい顔してる。この世の終わりみてーな、恐怖の表情。サイコーだな。それを見ながら今この瞬間穴を空けたらビビった顔のままおれの腹の中に入るのかなんて思って、でも勿体ないから後回しにしてる。そういう実験は他の奴らでやればいいし。
面白くて面白くてでも壊しちまったら意味がないからほどほどに嬲る。壊したらDJいなくなるし。
「なあDJ」
「な、なんですか……」
ビビってるビビってる、超おもしれえ。
「今日のプレイはよかったぜ」
「ほ、ほんとですか!」
「やっぱオマエはサイコーだな」
「あ……ありがとうございます!」
超喜んでる、あーおもしれえ。こいつなんでこんな喜ぶの? おもしれえ、超おもしれえ。
「なーDJ、オマエとならテッペン目指せるかもな」
「えっ」
んー? この反応は何だ?
「オマエはどう思う?」
「そ、そんな……でも私なんか」
あーそういう系ね。元からそうなのかここに来てからそうなったのか知らねーけどこいつのそれを折りに折ったのおれッチだしな。
「ダイジョブダイジョブ、オマエはトクベツ、すばらしーDJだっておれッチだけは知ってるぜ。オマエとならどこまでも行けるって、絶対」
「パ、パンチさん……」
俯くDJ。これはどういう反応だ?
肩が震えてる。怒ったか?
「DJ?」
「……」
「なんか喋れよ」
「あ、ありがとうございます……」
声も震えてる。なんだ?
「俯いてちゃわかんねーぜ、顔上げろ」
「え……」
「仕方ねー奴だな」
ずい、と近付く。腹側の角でくい、と顎を持ち上げる。
「パ、ンチさん……」
サングラスの下の瞳は濡れていた。それを見て、
「…………」
「恥ずかしいです……」
こみ上げたものが何なのかわからなかった。
ぐるぐるした、渦巻く何らかの衝動。
穴を空けてえときと似てる。じゃあ穴空ければ戻るのか?
「あの、パンチさ……」
一歩退く。
カチ、カチ、と刃を鳴らす。
「パンチさん?」
バチン!
「ひっ」
避けるDJ。
「びっくりしたか?」
「な、なんで」
「さあな」
「私が泣いたから……?」
「さあ。お前の泣き顔、」
「見たくないですよね……」
「サイコーだよな」
「えっ」
「穴、空けたくなる」
「や、やめてください……」
「まだだ。まだ空けねえよオマエには。なぜってオマエは」
トクベツだからな。
告げるとあいつは瞬きをして、その拍子に涙が散って、ミラーボールのライトに照らされたそれは、
「……ハ」
「あ、あの……」
「おれッチは寝る、起こすなよ」
「は、はい、あの」
「何だ」
「ありがとうございます……」
「当然だ。何度も感謝しろよ。おれッチの気まぐれにな」
「はい」
嬉しそうに笑うそいつにまた衝動がこみ上げて、刃を鳴らしたくなるのを我慢する。
一番いいときに空けてやる。一番盛り上がった夜、サイコーの瞬間に空けてやる。きっと楽しい、それがきっと、一番楽しい。
それまでに色々な顔を見てやろう。笑った顔、怯える顔、泣いた顔、他にもたくさん、全部見るまで空けねえ。ヤバいなおれッチ天才じゃん。それって絶対おもしれー。
そう思うとこの我慢もまあ、そんなに悪かねえんじゃないかって気がして、まあ。
それはもう、
「なくなった」ものの話。