そんな時もあったな、なんて
「なんだ、これ」
バチン!
◆
いつからだったかは忘れた、赤い糸みてえなものが見えるようになってた。
ハンドル部分から伸びて、部屋の外に続く。
とりあえず穴空けてみようとしても、空かねえ。確かに空いた手ごたえはあるんだが。
仕方ねえからどこに続いてるか確認しようとして、外を覗く。
糸の先にあったのは、
「DJか……」
「何ですか、パンチさん」
「いや、別に?」
「そうですか……」
あいつの小指に巻き付いてた。
なんだってんだ? 意味がわからねー。
別にどうでもよかったが、繋がれてるみてえなのは気になる。触った感じとか、つっぱる感じとかそういうのはなかったし、絡まりもせずどこまでも伸びるしで邪魔にもならねえ。ただ見る分にはだっせえしセンスもねえから視界に入る度に穴空けようとしてたんだが空かねー。
ハサミでもいれば切らせたんだが、穴が空かねえとなると切ることもできねーかもしれないし、まあ、手詰まりってとこか。
どうでもいい、どうでもいいんだが、繋がってる先、DJに嫌でも視線は行くし、あいつで遊んでるときに視界に入ってくるしで気が散る。
めんどくせえ。
「めんどくせえ……」
「どうしたんですか、パンチさん」
声に出てたか、うざってえ。
「なんでもねーよ」
「そうですか」
機材の手入れに戻るDJ。
「お前は何か言うことないの?」
「何がですか?」
「小指」
「小指? 何かついてます?」
やっぱりこいつには見えてねーんだ。
どうでもいい、どうでもいいけど、何だか……腹が立った。
なんでおれッチだけが気にしないといけないんだ。
「DJ」
「なんです、」
バチン!
「ヒェッ」
「あーつまんねぇ」
「あ、あ、あぶないじゃないですかぁ……」
「素直に空けさせろよ」
「いやですよ!」
「は?」
「す、すみません、空けないでください」
「はー、つまんねぇ」
つまんねえ、最高につまんねえ。
「次はもっといい曲かけろよ」
「は、はい、わかってます……パンチさん」
「何」
「次は絶対ノらせてみせます!」
「はァ……」
「あ、す、すみません……」
「まあ、期待してるぜ」
◆
つまんねえ、つまんねえ日々が続く。
そんな中でもたまにノれる日があって、悪くねーかもなんて思う自分がうざってえ、一日を終わろうとしたときいつも赤い糸が視界に入って、その先にあいつ。
うざってえ、うざってえ。
パチン、パチン、空打ちしても糸は切れず。
怯えるあいつがまたうざってえ。
◆
つまんねえ日々が引き延ばされて、おもんねえ日々が続く。
天から地へ、地から天へ。
扉は開かねえ。
外で何かやってる気配があって、曲が入れ替わって、かかったのは今まででサイコーにノれる曲。
なんだあいつ、やればできるじゃん。
評価を直したくなった自分自身も、ああうざってえ。
でもそんなのは全部ノリにかき消されて。
踊る、うざったい、うざったい敵。
そこで悟る、そうか、おれッチはここで「終わる」のか。
「さいごまでハデにいこうぜ」
カウントダウン。
3。
赤い糸。
2。
あいつの顔。
1。
目が合う。糸は消えない。
ふと、あいつが糸に目をやる、瞬き、サングラスの奥の色は……驚愕。と。
「気付いた」ってか。
消える意識。
けれども糸だけは残ったまま。
たぶんあいつは縛られ続ける。証拠はねーけどそうわかる。
ざまあみろ、で、その時初めて「満たされた」。
呑まれる、永遠の白。
それで、終わり。
バチン!
◆
いつからだったかは忘れた、赤い糸みてえなものが見えるようになってた。
ハンドル部分から伸びて、部屋の外に続く。
とりあえず穴空けてみようとしても、空かねえ。確かに空いた手ごたえはあるんだが。
仕方ねえからどこに続いてるか確認しようとして、外を覗く。
糸の先にあったのは、
「DJか……」
「何ですか、パンチさん」
「いや、別に?」
「そうですか……」
あいつの小指に巻き付いてた。
なんだってんだ? 意味がわからねー。
別にどうでもよかったが、繋がれてるみてえなのは気になる。触った感じとか、つっぱる感じとかそういうのはなかったし、絡まりもせずどこまでも伸びるしで邪魔にもならねえ。ただ見る分にはだっせえしセンスもねえから視界に入る度に穴空けようとしてたんだが空かねー。
ハサミでもいれば切らせたんだが、穴が空かねえとなると切ることもできねーかもしれないし、まあ、手詰まりってとこか。
どうでもいい、どうでもいいんだが、繋がってる先、DJに嫌でも視線は行くし、あいつで遊んでるときに視界に入ってくるしで気が散る。
めんどくせえ。
「めんどくせえ……」
「どうしたんですか、パンチさん」
声に出てたか、うざってえ。
「なんでもねーよ」
「そうですか」
機材の手入れに戻るDJ。
「お前は何か言うことないの?」
「何がですか?」
「小指」
「小指? 何かついてます?」
やっぱりこいつには見えてねーんだ。
どうでもいい、どうでもいいけど、何だか……腹が立った。
なんでおれッチだけが気にしないといけないんだ。
「DJ」
「なんです、」
バチン!
「ヒェッ」
「あーつまんねぇ」
「あ、あ、あぶないじゃないですかぁ……」
「素直に空けさせろよ」
「いやですよ!」
「は?」
「す、すみません、空けないでください」
「はー、つまんねぇ」
つまんねえ、最高につまんねえ。
「次はもっといい曲かけろよ」
「は、はい、わかってます……パンチさん」
「何」
「次は絶対ノらせてみせます!」
「はァ……」
「あ、す、すみません……」
「まあ、期待してるぜ」
◆
つまんねえ、つまんねえ日々が続く。
そんな中でもたまにノれる日があって、悪くねーかもなんて思う自分がうざってえ、一日を終わろうとしたときいつも赤い糸が視界に入って、その先にあいつ。
うざってえ、うざってえ。
パチン、パチン、空打ちしても糸は切れず。
怯えるあいつがまたうざってえ。
◆
つまんねえ日々が引き延ばされて、おもんねえ日々が続く。
天から地へ、地から天へ。
扉は開かねえ。
外で何かやってる気配があって、曲が入れ替わって、かかったのは今まででサイコーにノれる曲。
なんだあいつ、やればできるじゃん。
評価を直したくなった自分自身も、ああうざってえ。
でもそんなのは全部ノリにかき消されて。
踊る、うざったい、うざったい敵。
そこで悟る、そうか、おれッチはここで「終わる」のか。
「さいごまでハデにいこうぜ」
カウントダウン。
3。
赤い糸。
2。
あいつの顔。
1。
目が合う。糸は消えない。
ふと、あいつが糸に目をやる、瞬き、サングラスの奥の色は……驚愕。と。
「気付いた」ってか。
消える意識。
けれども糸だけは残ったまま。
たぶんあいつは縛られ続ける。証拠はねーけどそうわかる。
ざまあみろ、で、その時初めて「満たされた」。
呑まれる、永遠の白。
それで、終わり。