一つ一つ重ねたカミは

「パンチさん、私あなたのことが、す……」
「す?」
「何でもありません……」
「なんだよ、おれッチに言えないこと? 悪口?」
「ち、違います」
「言いかけといてやめるの冷めるからやめてくんない?」
「すみません……」
「で、何」
「いえ……素敵だなと思っただけです」
「当然だろ? おれッチはサイコーにイカしたノリノリ穴あけフリークなんだよ」
「そ、そうですね……」
「オマエも穴空けてほしーだろ?」
「えっ」
「空けてやろうか」
「け、結構です」
「で、本当は何て言おうとしたの?」
「ヒッ」
「誤魔化しても無駄だぜー。おれッチそういうのわかるから」
「す、すみません……」
「何何、やっぱ悪口?」
「違います」
「言えないこと?」
「い、言えな……」
 バチン!
「ヒェッ」
「はは、惜しい」
「勘弁してくださいよ……」
 カチ、カチ、と刃を鳴らす。
 本当は知っている。
 こいつが何を言おうとしたか。
 だがそんなことは「許されねー」、おれッチは知ってる。
 それに黙ってた方がおもしれー。隠し事があるって思わせてた方が都合がいいし、退屈な日常も少しは紛れるってもんだろ?
 このまま黙っとけ、だがいつまで黙ってられるかは知らねえ。おれッチは踊るだけ、煽るだけ。
 せいぜい見てろ、見とれてろ。楽しい夜は永遠に続く。永遠じゃないのは知ってる。だけどおれッチには永遠なんだよ。夢を見ている。長すぎる夢。シラけないようプレイしてろ、そうすりゃずっと踊ってやるよ。
 DJ。
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