そんな時もあったな、なんて

「おいDJ、こっち来いよ」
「なんです、」
 バチン!



「……は」
 そこは自室。あの遺跡ではなく。
 そうだった、パンチさんはもういない。
 穴を空けられるんじゃないかと怯えることはもうないんだ、怯えなくてもいいんだ。
 でもあんな夢を見るなんて怖いな。本当に穴が空けられたんじゃないかと思った。
 外はまだ暗いし、二度寝しよう。



「おいDJ」
「……」
「DJ、返事」
「は……はい?」
 バチン!



「……はっ」
 そこは自室。当然、遺跡ではない。
 パンチさんはいない、そうですよね?
 私が穴を空けられることなんて二度とない。怯えなくてもいいんだ。
 でもあんな夢を見るなんて嫌だな。夢の中だとしても、怖いもの。
 外はまだ暗いし、今度は朝まで眠れるといいな。



「DJェ」
「……」
「返事もしないなんていい度胸じゃねーか」
「……」
「こっちに来いよ、気付いてんだろ?」



「……はあ」
 遺跡ではない、はずだ。
 それなのにこのベッドはやけに硬くて、冷たくて。
 おかしいな、まだ夜が続いている。もう充分寝たような気がしてるんだけど。
 でもさっきは穴を空けられなかったからいいのかな。
 いっそ朝まで起きていようかと思ったが、瞼が重くなって気付くと――

「なあ、DJ」
「……」
「こっちに来いよ」
「……」
「おれッチの命令が聞けないってか?」
「……」
「なあ、もう一度過ごしてみてーと思わないか、あのスリリング・ナイト」
「……」
「アガらせてくれよDJ、こっちに来てくれ、」
『頼むから』
「……パンチ、さ、」

 バチン!



「あー駄目ですね、穴が空きすぎて修復できません」
「なんでこんな穴が空いたんだろうな?」
「さあ?」
「師匠は……」
「お気の毒です」
「師匠、」
 行って、しまった。
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