一つ一つ重ねたカミは
いとしい。
それは果たしてその類の感情なのだろうか。
オレの師匠はたまに遠くを見ている。
その先に何があるのかはわからない。ただそのときの師匠はすごく、どこかに行ってしまいそうな雰囲気を漂わせていて、
「師匠」
声をかけるとはっと身体を震わせて、
「なんですか、弟子くん」
どこ見てたんですか、とか、そういう言葉を飲み込んだまま、このやり取りも何十回目になる。
「……何でもありません」
「そう? 悩み事があったら何でも言ってくださいよ、私たちは師匠と弟子なんだから」
「ありがとうございます」
そうしてしばらく日が経って、師匠は再び遠くを見る。
捕まえ閉じ込めてどこにも行けないようにしてしまいたいなんて衝動を覚え始めたのはいつからか。
「師匠」
名を呼ぶだけ。呼べば引き戻すことができる。
「なんですか、弟子くん」
オレだけのものになってくださいよ。
そんなことは言えなくて。
「……何でもありません」
そうして繰り返すのだ。感情を停滞させたまま。
それは果たしてその類の感情なのだろうか。
オレの師匠はたまに遠くを見ている。
その先に何があるのかはわからない。ただそのときの師匠はすごく、どこかに行ってしまいそうな雰囲気を漂わせていて、
「師匠」
声をかけるとはっと身体を震わせて、
「なんですか、弟子くん」
どこ見てたんですか、とか、そういう言葉を飲み込んだまま、このやり取りも何十回目になる。
「……何でもありません」
「そう? 悩み事があったら何でも言ってくださいよ、私たちは師匠と弟子なんだから」
「ありがとうございます」
そうしてしばらく日が経って、師匠は再び遠くを見る。
捕まえ閉じ込めてどこにも行けないようにしてしまいたいなんて衝動を覚え始めたのはいつからか。
「師匠」
名を呼ぶだけ。呼べば引き戻すことができる。
「なんですか、弟子くん」
オレだけのものになってくださいよ。
そんなことは言えなくて。
「……何でもありません」
そうして繰り返すのだ。感情を停滞させたまま。