まっくらやみはうごかない
『死んじゃったカレシにいつまで囚われてるの? ハハ、ウケる』
パンチさん、それがあなたなんですよ、とは口が裂けても言えなかった。
◆
白昼夢を見ていたようだ。
ぼうっとした頭から霧が晴れると、
「師匠」
押し殺した声で、弟子くん。
「……何かな?」
「……何でも」
「何でもって顔じゃないよ」
「オレ、仮面被ってますけど」
「私は師匠だからね、わかるんだ」
「……師匠だから、ですか」
「そうだよ」
「……オレ、の?」
「そう」
ふ、と笑う弟子くん。その声は嬉しげに嬉しげに。
ああ。この子は――
なんて。
『死んじゃった私にいつまで囚われてるの?』
私の夜は死んだ。
そのときに私も死んだようなものだったんだ。弟子を取るとか、本当はやめておけばよかったんだ。
だって、誰も救われない。
「師匠」
「……何かな」
「オレにできることがあれば、なんて言ってもあなたは大丈夫だよって言うんでしょうね」
「そうだね」
「だったらせめて」
ぐ、と弟子くんが接近する。
私をぎゅう、と抱きしめて、
――オレといるときはアイツのこと、忘れてくださいよ。
マスクで籠った声はまるで縋るようで、私は。
「……それでも」
真昼になってもなお。
白昼夢は私をさらってゆくのです。
『あーあ!』
全てを台無しにする悪魔に、このときだけは、いえ、ずっと。ずっと、本当はいてほしかった、と。
思った。
パンチさん、それがあなたなんですよ、とは口が裂けても言えなかった。
◆
白昼夢を見ていたようだ。
ぼうっとした頭から霧が晴れると、
「師匠」
押し殺した声で、弟子くん。
「……何かな?」
「……何でも」
「何でもって顔じゃないよ」
「オレ、仮面被ってますけど」
「私は師匠だからね、わかるんだ」
「……師匠だから、ですか」
「そうだよ」
「……オレ、の?」
「そう」
ふ、と笑う弟子くん。その声は嬉しげに嬉しげに。
ああ。この子は――
なんて。
『死んじゃった私にいつまで囚われてるの?』
私の夜は死んだ。
そのときに私も死んだようなものだったんだ。弟子を取るとか、本当はやめておけばよかったんだ。
だって、誰も救われない。
「師匠」
「……何かな」
「オレにできることがあれば、なんて言ってもあなたは大丈夫だよって言うんでしょうね」
「そうだね」
「だったらせめて」
ぐ、と弟子くんが接近する。
私をぎゅう、と抱きしめて、
――オレといるときはアイツのこと、忘れてくださいよ。
マスクで籠った声はまるで縋るようで、私は。
「……それでも」
真昼になってもなお。
白昼夢は私をさらってゆくのです。
『あーあ!』
全てを台無しにする悪魔に、このときだけは、いえ、ずっと。ずっと、本当はいてほしかった、と。
思った。
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