還らぬ永遠

「パ……パンチさん」
『おれッチたちがここにいること、誰にも気付かれてないんだろ?』
「弟子くんにはバレてるかもしれません」
『バカだな、あいつにおれッチたちは見えない』
「見えない……」
『そうだ、おれッチたちはもう、「魔のもの」なんだよ』
「魔のもの……」
『二度と元の世界には帰れない、帰るつもりもないだろ?』
「私には、まだ、やることが――」
『なァ?』
 パンチさんが角で私の顎をくい、と上げる。
『帰りたくなんてないよなァ? あんなにおれッチに会いたいって言ってたもんな、おれッチのこと呼んでたもんなー? 今さら帰りたいなんて……言わないよな?』
「は、あの、……」
『DーJェ?』
「あ、えっと、そうですね……」
 馬鹿か私は、どうして肯定する?
『正気なんてつまんねー、ずっと狂気の中にいようぜ。オマエもわかっててあんなことしてたんだろ? なァ?』
「えっとその……私は……」
『ダイジョーブダイジョーブ、おれッチってばなんでもわかっちゃうからさー、オマエのことなんてお見通しよ。DJはコッチ側の住民だって。おれッチが断言するんだから間違いない』
「そ、そうでしょうか」
『モチロン!』
 ああ、駄目だ、どんどんこの人のペースに巻き込まれていく。
『それにしても健気だよなー。おれッチが消えても残った遺跡に毎日来ておれッチのこと呼ぶなんて、何、ひょっとして惚れてた?』
「……そんなこと、は」
 きり、と何かが痛む。引っかかっているんだ、何かが。でも、何が?
『ハッハー。わかってるわかってる。オマエがおれッチのこと大好きだってことぐらいはな!』
「……」
 否定しない、否定しても無駄、な気がしたからだ。
『まあオマエもこれで晴れてコッチの住人、これから毎日DJしろよ。あの時みたいにさ』
「……ええと」
 ぴた、とパンチさんの動きが止まる。
『やってくれるよな?』
 空気が凍る、「魔のもの」になってしまったらしき私にまだ凍るような空気を感じられる感覚が残っていたとは驚きだ。
 なんて、もう順応し始めている自分が何よりも呪わしく、また、
「……もちろんですよ、パンチさん」
 決まり切った答えをどこか■■ながら返してしまう自分自身もまた、呪わしかった。

 そうして本当に二人きり。
 ■■は戻った。
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