Fate/Grand Order
『存在の本質を考えたことがあるか?』
ふとよぎる、デジャヴのような問いかけ。
我。
我の存在の本質は――
『憎悪』
……憎悪。憎悪。憎悪。憎悪、憎悪。
「バアル」
憎悪。憎悪。憎悪。
「バアル、」
憎、
「バアル!」
は、と我に返る。気がつけばじっと奴を見ていた。
「どうしたの? ぼーっとしてたよ?」
「いや」
我は今何を考えていたのだろうか。
幼馴染みの藤丸立香は高校でも同じクラスで、毎日しつこく絡んでくる。
だがそれも不快なものではなく、我はそんな立香のことを「好ましい」とすら感じ始めていた。
何のことはない、よくある高校生のよくある青春。
きっと我々はずっとこのままで、何も変わらぬ平和な日常が永遠に続くのだろうと。
思っていた。
「バアル~」
「何だ、立香」
「今日一緒に帰るんじゃなかったっけ?」
「今日も、だろう」
「そうだよ」
「断る理由はない」
「一緒に帰りたいんでしょ? 知ってる」
日だまりのように笑う立香を見、目を細める。
こやつは眩しい。我の側にいるには勿体無いほどに。
「さ、行こ。バアル」
「ああ」
◆
◆
◆
「バアル……」
「……」
「どうしちゃったのかな、私」
「どうもしない。年頃の高校生、性欲の存在は正常だ」
「表現が露骨すぎるよ……」
「いつもこうだろう。……良いぞ、我が相手になろう」
「え……?」
「貴様の性欲処理を手伝ってやろうというのだ」
「いやバアルおかしいよそれは……好きでもない相手に対して、そんな……悪いよ……」
「好きでもない?」
「そうでしょ……バアルにとって私はただの……」
「我は貴様を気に入っている」
「……え」
「それこそ、一生添い遂げても良いと思うほどにはな」
「バアル……それって」
「貴様はどうなんだ、立香」
「ずるいよ……そんなの……」
「…………」
「私も、そうだもの…………」
「では両思いだな」
「…………」
立香は顔を赤くして小さく頷く。
愛いな。
「……するか」
「……いいよ……」
◆
◆
◆
「……か……は……! バア……ル……?」
憎悪。憎悪憎悪憎悪憎悪憎悪。
絞めていた。我は、藤丸立香の首を……絞めていた。
熱で焼けていたはずの頭は漆黒、憎悪、憎悪、憎悪で埋まっている。
今すぐこいつを殺してやりたい。憎い、憎い、憎い。首を絞め、息の根を止め、死ぬよりもひどい目に。
「……ア……!」
「…………」
じとりとした目で見下ろす。次第に光のなくなる茜色。
「…………立香」
返事はなく、光が消える。閉じた茜色から雫が一筋。
「我は…………」
呆然と、手を離す。
あの漆黒は消えていて、ただ白い、"無"だった。
「立香、」
還らない。
『存在の本質を考えたことがあるか?』
古の記憶。抉るような問いかけがよぎり、失せた。
ふとよぎる、デジャヴのような問いかけ。
我。
我の存在の本質は――
『憎悪』
……憎悪。憎悪。憎悪。憎悪、憎悪。
「バアル」
憎悪。憎悪。憎悪。
「バアル、」
憎、
「バアル!」
は、と我に返る。気がつけばじっと奴を見ていた。
「どうしたの? ぼーっとしてたよ?」
「いや」
我は今何を考えていたのだろうか。
幼馴染みの藤丸立香は高校でも同じクラスで、毎日しつこく絡んでくる。
だがそれも不快なものではなく、我はそんな立香のことを「好ましい」とすら感じ始めていた。
何のことはない、よくある高校生のよくある青春。
きっと我々はずっとこのままで、何も変わらぬ平和な日常が永遠に続くのだろうと。
思っていた。
「バアル~」
「何だ、立香」
「今日一緒に帰るんじゃなかったっけ?」
「今日も、だろう」
「そうだよ」
「断る理由はない」
「一緒に帰りたいんでしょ? 知ってる」
日だまりのように笑う立香を見、目を細める。
こやつは眩しい。我の側にいるには勿体無いほどに。
「さ、行こ。バアル」
「ああ」
◆
◆
◆
「バアル……」
「……」
「どうしちゃったのかな、私」
「どうもしない。年頃の高校生、性欲の存在は正常だ」
「表現が露骨すぎるよ……」
「いつもこうだろう。……良いぞ、我が相手になろう」
「え……?」
「貴様の性欲処理を手伝ってやろうというのだ」
「いやバアルおかしいよそれは……好きでもない相手に対して、そんな……悪いよ……」
「好きでもない?」
「そうでしょ……バアルにとって私はただの……」
「我は貴様を気に入っている」
「……え」
「それこそ、一生添い遂げても良いと思うほどにはな」
「バアル……それって」
「貴様はどうなんだ、立香」
「ずるいよ……そんなの……」
「…………」
「私も、そうだもの…………」
「では両思いだな」
「…………」
立香は顔を赤くして小さく頷く。
愛いな。
「……するか」
「……いいよ……」
◆
◆
◆
「……か……は……! バア……ル……?」
憎悪。憎悪憎悪憎悪憎悪憎悪。
絞めていた。我は、藤丸立香の首を……絞めていた。
熱で焼けていたはずの頭は漆黒、憎悪、憎悪、憎悪で埋まっている。
今すぐこいつを殺してやりたい。憎い、憎い、憎い。首を絞め、息の根を止め、死ぬよりもひどい目に。
「……ア……!」
「…………」
じとりとした目で見下ろす。次第に光のなくなる茜色。
「…………立香」
返事はなく、光が消える。閉じた茜色から雫が一筋。
「我は…………」
呆然と、手を離す。
あの漆黒は消えていて、ただ白い、"無"だった。
「立香、」
還らない。
『存在の本質を考えたことがあるか?』
古の記憶。抉るような問いかけがよぎり、失せた。
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