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【萌ガナ】きみがすきだから邪魔できない

2019/03/04 02:44
萌葱×ガナッシュ(男男)
 寝ている。そう判断するのに何の疑いもない状態だった。少しだけ近くのコンビニに支払いを済ませに行って来ますと告げ、遊びに来ていた萌葱はじゃあ待ってる、と笑って送り出してくれた。
 ほんの10分かそこら。支払いをあわせても15分と少しだろうか。そんな程度だったが、扉を開けて目に入ってきたのはベッドにもたれかかり、腕組みをし、胡坐をかいて眠っている姿の萌葱だった。
 萌葱の仕事は体力仕事だ。朝早くから夕方まで。天候にも左右されるので工期が迫ってくると会えないことも多い。無理をして欲しいわけではないので余裕がある時でいいから、としょっちゅう来てくれる彼に伝えた時、申し訳なさそうにわかったと笑ったのを思い出す。
 決して無理はしていない筈だと思うが、それでも疲れが完全に取れているわけではないのだろうし、もしかしたら、少しくらいはと無理を押してきてくれている可能性はいなめない。折角気持ちよく眠っているのなら邪魔をするわけにもいかないと、そっと音を出さないように動く。
 今まで本が積み上がっていただけのローテーブルは萌葱が来るようになってから彼のスマホやら家の鍵がポンと置いてあるようになった。それらを雪崩に巻き込まないようにせっせと本を下ろしてすっかり広くなっているのが常になったそこへ自分の財布を置いて、西日が眩しくないように半分だけ遮光カーテンを閉める。レールを滑る音ひとつ大きすぎではないだろうかと気にするのだが、萌葱はそんなささやかな音では起きないらしい。
 ほっとしつつ、そろそろと近くに座る。何をしても彼が起きてしまうような気がしてスマホを触るのも遠慮してしまう。
 彼なら気にしなくてもいいのにと笑って言ってはくれそうだが、睡眠の浅い深いもあれば気持ちの良い瞬間もあるだろう。そこを邪魔するのは大変気が引けて仕方がない。
 どうしよう、と何度も何度も考えて、ちらりと伺う彼はまだ眠っている。いつだったか、彼に茶化す様な感じで、頬をちょんとつつかれたのを思い出す。あの時はされるがままだったし驚いて何もできなかった。

 つついて、何か楽しいのか。いや、楽しいことは無さそうなのだが、と思いながら、ズルくはあるが眠っている彼の頬を、そろりと指先でつつく。乾いている肌が少しだけ指にそってへこむ。

「うーー…」

 むずがるように動いた彼に驚いて手を引っ込めたが、起きる気配がないことに安心しながら、もう少しばかり、傍に寄ってみる。腕を触れ合わすのには遠慮が入り、ただ、健やかに寝ている彼の横顔だけを見つめていた。


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可愛いカップル描いちゃったー様から
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