恋人らしいこと、恋人っぽい時間、そういうのを作るにはお互い難しい立ち位置だなあと思う。自分から大佐にそういう間柄を求めていったとはいえそこまで時間をとってどうにか二人で過ごしませんかという要望を通す難しさも知っている為、関係性を受け止めてくださったという以上のわがままは通すまいと気を付けてはいる。
　時々報告に上がった際などに贈り物のやりとりが細やかにあるくらいでも十分時間を作ってもらっていると思う。これくらいでも、凄く嬉しいと感じる気持ちに偽りはない。時折プライベート連絡用に持っている端末に連絡をやりとりしてくれるのだってうれしい。
　実際はもう少し会えたら本当にいいけれど、難しい問題でもあるし大佐を困らせたくないので、という気持ちで控えていた。控えていたからそうなったんだろうか、と思いながら、先ほど急に訪問してきた大佐を見る。
　急な来訪に簡易的に飲める飲料水のパックしか出せなかったがそれには何も言わない。ただただ静かに座って、時折端末を眺めている。もうそろそろ眠る時間だったはずの髪型は緩めに結わえているだけでいつものきっちりとしたものではない。

「……大佐、あの、」
「……なんだ」

　綺麗な顔立ちだな、と思う。年を重ねていらっしゃるとは言っても、整った顔立ちだと本当に思う。

「えと、来てくださって、嬉しいです、すごく」

　突然の訪問には驚いたものの、こうしてわざわざ時間を作って下さったことは素直にうれしいと思う。嬉しいけれど無理してきてくださったんだろうか、という考えも浮かぶが今言うのは野暮かもしれない。

「大佐に会いたいなあと、思ってましたのですごく、あの、……あ」

　伏せた目元がすぅっと赤く色づくのを見て、胸がいっぱいになる。許されるなら今すぐ抱きしめてベッドにもつれ込んでも良いくらいの感情はあったがさすがにがっつきすぎるしそこまでに至るにもどっちをされたいのかも聞いていない。
　キスくらいは、しても怒られないだろうか、と思って、そっと手を握っても、ただ静かに目を伏せたままの大佐が可愛いと思った。

「あのぉ……」
「……好きにしたらいい、」

　あ、それ、殺し文句だなあ、なんて思いながら、もしかして、もう少し自分はわがままになっても許されるんではないのだろうか、という可能性を、恋人の所作から勝手に感じてしまう。そう素直に感じて実行できるほど、もう素直な性格ではないけれど。
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純粋にイチャイチャしてほしかった、などと供述しており