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【ノニエル】優しい人

2019/12/29 03:31
ノニン×エデルガルド(男女)
 優しく右手をとられて、あとはされるがままになってしまう。不意に空気を男がかえたとおもうと、優しい瞳とともに手に触れられて、そのまま掬うように持ち上げられる。まるで慣れることがなさそうな行動に、いつも緊張してしまう。
 小さく手の甲へ口づけが落とされる。一瞬、男と目があってしまい、慌てて逸らす。もっと、もっと可憐で、綺麗な手へ、口づけた方が良いのにと思う。かさつく男の唇の感触を意識しないように別の意識を手繰り寄せようとして、手首の近くへ口づけが落ちる。
 酷く恥ずかしい。
 酷く胸が苦しい。
 酷く、ひどく、熱い呼吸がずっと肺の中に留まっているような熱を感じている。
 そっと近づいてきた男の顔に咄嗟に顔を逸らしてから、しまった、と思う。また、男の事を傷つけてしまった、と自分を責める。男の中で自分が、そういう対象だ、と、言葉でも今までの行動でもわかっているはずなのに、腹もくくった、と自分では思っていても、実際は出来ていないことが暗く頭の隅に侵食する。

「いいんです」

 謝罪をしなくては、と口を開きかけたところで男がそう声をおとす。

「俺が、その、急に、近寄ったから、謝らないで…」

 いつだって、男は私へ優しく言葉をかけるのに私ときたら。

「まだ、なにも」
「いいから…」

 男の手が強く私の手を握る。痛みはなく、私が手を引けば男は、すぐにこの手を離すだろうとは予想できる。

「ゆ、ゆっくり、ゆっくり、いきましょう…。…大丈夫だから…」

 どこまでも優しく声をかけられる。申し訳なく思いながら、普段の自分なら、しないとわかっていながら、この男の前でなら、少しばかりは弱くなってしまってもいいのだろうか、とそんな風に考えて首を縦に振る。

 この男は、私を馬鹿にしない。それは、よく知っている。それでも固く奥へ沈めたものを素直に浮かばせることは戸惑いも警戒心も多すぎて、だというのにこの男は、私の中を無理に荒立てることをしない。

「す、すまん、いつも…」

 情けない声は聞こえたのか、わからない。
 それでもまた、彼が優しく目を細めた姿が視界の隅に入った。

◆ ◆ ◆
だぶってるかもしれないんだけど(タイトルその場でつけるから)、だぶってたらすまん・・・・ちょっと仲良くって密度のある二人

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