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【ヤルヨル】眠る君を、

2019/12/29 03:18
ヤルヴァ×ヨルク(男男)
 先ほどまで、抱きしめていなくてはわからないほどに抑えきった緊張を感じていた。本当に目の前の男は感情を殺すのがうまい、と、ただただ感心する。身構えているのに、緊張しているのに表情に出さず、生真面目に抱きしめられていた彼の背を何度も撫でて、そうしてやっと、不自然な体の力が抜けて眠った彼の顔を見ることができる。眉間の皺が消え失せ、どこか泣きそうな表情のまま眠っている彼に、悪いと口には出さず謝罪を告げて、小さく唇を寄せる。
 すやすやと聞こえる呼吸の音に笑みがこぼれて、彼の短く切られた髪を撫でる。大切にしてあげたい、と思うのに、なぜか自分の言動で彼は身を切り裂かれでもしているような表情を浮かべて、何かに耐えるものだから、少し自信がない。どれ程、どの程度にすれば彼が笑ってくれるだろうと探りながら今日も彼が笑った顔を見ることが出来なかった。
 同僚へは、良く笑っているのに、笑うというか、柔らかなのに、俺にはしてくれない、と少し寂しい。寂しいが、過ごした時間と、共に乗り越えた苦楽を鑑みれば仕方がないことではある。昨日今日であった男より、共に戦場を駆け抜けた友の方が気を抜いていられるのは当たり前だ。

「…でもちょっと悔しいんだよな」

 何もしないからと彼へ誓った手前、これ以上はもう何も出来ない。もう少し、もう少しと、急いてしまうものの、彼の様子を見ると、彼の不慣れな様子を見ては強く自分を戒めようと思える。
 もみあげをさりさりと触っても彼は深く眠っているようで、起きない。起きる気配がないことに、ぞくぞくとしてしまう。

「俺の事、信じてくれてるの…?」

 眠る彼の腰を少し強く抱き寄せ囁く。

「無防備な君を見て欲情してる悪い男だよ…?」

 ちり、と脳裏に浮かぶのは彼の泣きそうな顔と、熱に困惑する表情で、それしかみたことがない事にも悔しい、とは思う。

「ヨルク、」

 ヨルク、と彼を呼ぶ。優しく、優しく。夢の中でさえ怖い思いはさせられない。

「君と、残りの命、幸せに包んで過ごしたいんだ、……良いかな」

 でも、まだ、難しい問題だ、と思いながら彼の頬に一つ、口づけた。

◆ ◆ ◆
可愛いカップル描いちゃったー様から
『寝てしまった相手の髪を撫でている』『ヤルヨル』の、
ヤルヴァ殿視点をかいた。

あー!寝込みを襲ってる!

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