SSS倉庫
【ノニエル】二度目の星空
2019/03/04 02:52ノニン×エデルガルド(男女)
静かだと夏の星空を見上げて思う。屋敷の中から聞こえる賑やかな笑い声や音楽を聴くのは二度目の夏。その賑やかさから遠ざかるように抜け出してきて、この中庭の隅にそっと添えたように設置されたベンチに腰かけて空を眺めるのも二度目。
「また貴様は」
草を踏みしめる音を聞きながら顔を向けると巡回中のレスライン殿が少しだけ呆れた顔で、それでも常時の厳しさを保ったままこちらを見ているのが目に入る。
「す、すいません…」
「………私は勤務中だ」
「すいません」
勤務中だ、と言いながら自然と右隣に腰かけてくれたことに嬉しさばかりが募って、頬が緩みそうになるのを堪える。
「こ、…今年も、レスライン殿と、ここで星が眺められて光栄です、本当に」
「貴様も大概悪趣味だな」
背もたれに彼女が体重を預けて星を眺めている。ぎし、という木のきしんだ音を聞きながら横眼で盗み見る彼女の顔は月が出ていても暗がりで良く見えない。
逸る胸を抑えながらそっと彼女に近寄っても、何も苦言を呈されない。レスライン殿との仲は一度目の夏よりもいくらか…と自惚れだが、良い、と思っていて、しかしどこまで許されているのかはいまだ計り切れずにいるところがある。
そろりと腕を彼女の肩を抱こうかと動かし、少しだけベンチの背の上を掌でなぞって、拒絶されるかもしれない恐怖を殺し、震えを伴って右の肩に触れる。ぴくりと彼女の体が震えるも、何も言われない。
良いのだろうか、とまだ考えてしまう。考えながら、少しだけ、ほんの少しだけ力を込めて抱き寄せる真似をする。
「(あ……っ)」
気のせいではない、と思いたい。
少しだけ、ほんの少し、抵抗を示されたものの、僅かに身を寄せてくれたことに顔が熱くなる。泣き出しそうな気持になりながらもここで泣き出すのはあまりにも不自然ではないだろうかと思いながら歓喜に満ちていく感情を止められない。すり、と彼女の、しっかりと筋肉のついたその二の腕を摩っても、何も言わない。言われない。
「ら、いねん、も……その、よか、ったら、め、迷惑じゃ、なければ、あの、俺、また」
喉の奥が熱く締め上げられるような感覚で、たどたどしく言葉を吐き出す。来年も良かったらまたこうしてくださいますかと、言いたいのにうまく言葉にならない。
「………プライベートでなら、良い」
彼女の声に、びく、と自分の手が震えたのを自覚する。
「勤務に戻る」
するりと離れていく彼女をとっさに両腕で引き留めてベンチに座らせてしまう。驚いたような顔のレスライン殿と目があって、咄嗟にきつく目を閉じ、そのまま彼女の肩に顔をうずめてしまう。失礼なことをしている自覚はある。
「もうすこしだけ、お時間を」
「……もう少し、だけだ」
深く息を吸い込んで、夏の暖かい空気では冷めそうにない高鳴りを鎮めようと必死になりながら、彼女の手が控えめに左腕に添えられたのを感じた。
◆ ◆ ◆
可愛いカップル描いちゃったー様から
『寄り添って星空を眺める』『ノニエル』を描きor書きましょう。
「また貴様は」
草を踏みしめる音を聞きながら顔を向けると巡回中のレスライン殿が少しだけ呆れた顔で、それでも常時の厳しさを保ったままこちらを見ているのが目に入る。
「す、すいません…」
「………私は勤務中だ」
「すいません」
勤務中だ、と言いながら自然と右隣に腰かけてくれたことに嬉しさばかりが募って、頬が緩みそうになるのを堪える。
「こ、…今年も、レスライン殿と、ここで星が眺められて光栄です、本当に」
「貴様も大概悪趣味だな」
背もたれに彼女が体重を預けて星を眺めている。ぎし、という木のきしんだ音を聞きながら横眼で盗み見る彼女の顔は月が出ていても暗がりで良く見えない。
逸る胸を抑えながらそっと彼女に近寄っても、何も苦言を呈されない。レスライン殿との仲は一度目の夏よりもいくらか…と自惚れだが、良い、と思っていて、しかしどこまで許されているのかはいまだ計り切れずにいるところがある。
そろりと腕を彼女の肩を抱こうかと動かし、少しだけベンチの背の上を掌でなぞって、拒絶されるかもしれない恐怖を殺し、震えを伴って右の肩に触れる。ぴくりと彼女の体が震えるも、何も言われない。
良いのだろうか、とまだ考えてしまう。考えながら、少しだけ、ほんの少しだけ力を込めて抱き寄せる真似をする。
「(あ……っ)」
気のせいではない、と思いたい。
少しだけ、ほんの少し、抵抗を示されたものの、僅かに身を寄せてくれたことに顔が熱くなる。泣き出しそうな気持になりながらもここで泣き出すのはあまりにも不自然ではないだろうかと思いながら歓喜に満ちていく感情を止められない。すり、と彼女の、しっかりと筋肉のついたその二の腕を摩っても、何も言わない。言われない。
「ら、いねん、も……その、よか、ったら、め、迷惑じゃ、なければ、あの、俺、また」
喉の奥が熱く締め上げられるような感覚で、たどたどしく言葉を吐き出す。来年も良かったらまたこうしてくださいますかと、言いたいのにうまく言葉にならない。
「………プライベートでなら、良い」
彼女の声に、びく、と自分の手が震えたのを自覚する。
「勤務に戻る」
するりと離れていく彼女をとっさに両腕で引き留めてベンチに座らせてしまう。驚いたような顔のレスライン殿と目があって、咄嗟にきつく目を閉じ、そのまま彼女の肩に顔をうずめてしまう。失礼なことをしている自覚はある。
「もうすこしだけ、お時間を」
「……もう少し、だけだ」
深く息を吸い込んで、夏の暖かい空気では冷めそうにない高鳴りを鎮めようと必死になりながら、彼女の手が控えめに左腕に添えられたのを感じた。
◆ ◆ ◆
可愛いカップル描いちゃったー様から
『寄り添って星空を眺める』『ノニエル』を描きor書きましょう。