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【レイヴァル】雨の日と彼女
2019/12/29 03:05CP雑多雨の日のふたり
今夜は激しい雷雨に見舞われる予定です、と設置されたシステムがそう告げた。人工的な惑星でありながら自然の惑星に近い気象を再現してみせる事に驚きながら、静かに管理棟の開いた気象パネルを閉じた。個々に役割を決めて其々で広大なこの惑星を行き来し、出身も性別も価値観も異なる者達が交流を深めているのは興味深いことで、ずっと遠くからその様子を見ていた。つい先日までは、の話だ。
輪の中に入るようになったのは此処に彼女…ヴァルトルーデさんが来てからで、彼女はいつも誰にでもそうなのだが、優しく接する人だ。優しい、と思う。少なくとも俺には。ヴァルトルーデさんの夫は何人かいるが興味は無かった。それは、元から自分が興味を持っていなかったこともあるが、彼女自身がそういうことを気にしない、というか、彼女が他の夫を連れてきて紹介することもなかったし、それはそれ、という割り切っている人であるということも大きい。だから自分以外にどんな男性、あるいは女性の伴侶がいるのかも気にする必要が無くて…。
此処に来て初めて知った事だったが、あのレヴェンデル家のご当主とも関係があるとは驚いた。驚いただけで、彼女であれば、納得もした。
「レイズさん」
心地の良い鈴の音のように彼女が俺の名を呼んで近づいてくる。彼女はだれに対しても、優しく心地の良い微睡のように包んでくれる。
「て、天気の情報を見ていました、今夜は荒れるようです」
「あらあら、子供たちが怖がらないといいけど、といっても怖がるような子もあまりいないですね」
「そ、そうですね」
人と話すと緊張して言葉に詰まってしまう。するすると話すことが難しく、だからあまり他人と会話したくもないのだが、彼女は何でもないという風に受け止めてくれる。
「……レ、レヴェンデル様は今日はご一緒では」
「はい、あの方でしたら今日はアートルム様と遠方のコロニーに」
「あ、ああ、そ、そうでしたか……」
彼女と自分の間には肉体関係はない。ただ、自分の心の安寧の場として彼女がいてくれると安心感が高まるうえ、彼女と居るときは不思議といつも人の挙動を気にする自分が気を落ち着かせていられるということだけで夫と妻という間柄になった。本来なら、子を成していただくべきなのかもしれないが、そんなことよりもただ彼女と友人以上の繋がりの糸が欲しくて、それ程強く想う人は彼女以外考えられなくて、接触が不得手の自分にも彼女は気さくに触れてきてくれて、とにかく、気を遣わなくていい、というのが彼女の自分にとっての魅力だった。
「お天気が荒れるのでしたら今夜はレイズさんと過ごしたいです」
「え……?ど、どう、してですか、」
「あら、こう見えても私怖がりなんですよ?」
ふふ、と笑って首を傾げる彼女はそう言ってこちらを見上げる。思えば彼女と長時間一緒に過ごしたことはない、と思う。
「そ、そうだったんですか、それは、えっと、し、知らず…」
「ふふふ、謝らなくていいですからね」
「あ、は、はあ」
先回りされて釘を刺されてしまう。う、と首を竦めると彼女が手を握ってくれる。
「誰かといる方が安心できるんですよ」
寂しがり屋さんなんですと彼女はまたいう。こういった会話も、彼女とはしたことが無い。理由は、自分が会話が得意ではないからだ。
「そ、それも、初めて聞きました……」
「そうですか?」
「は、はい……し、知らないことが、多い、ですね、」
彼女の事については何も、と言っていいほど知らないかもしれない。もともと、深くお互いを探ることはしないが、他の種族はそうではないらしくあれこれと趣味や好きな物事やらを伺われたりすることも、そういうのを聞いているのを見聞きしたことも多々あった。
そんな影響もあるのかも知れない。少しだけ、彼女を知ってみたい、と思う。
「私もレイズさんの事はシャイな方だな、くらいしか知りませんから」
お互い様ですね、と彼女が笑う。
「そ、そ、それは、その、はい」
「控えめで可愛いですしね」
「かわ、いい、ですか」
「可愛いですよ?」
彼女がそう感じるなら、そういうものなのかもしれない。他人の事を気にしすぎるあまりよく体調を崩すので、人にどう思われているかなるだけ気にしないように気を付けてはいるのだが、可愛いと言われるとは思わなかった。
「あら、雨」
その声につられて外を見ると、あっという間に地面が濡れていくのが見える。
「そ、外作業は中断ですね………中で出来る作業を割り振りしないと…」
「お仕事お疲れ様です、レイズさん」
「あ、は、はあ、ど、どうも、です」
優しく背中を撫でられ、労わるように行き来する掌は小さい。
「背中、丸くなっちゃってますよ」
「うっ」
ぎゅ、と背骨を押されて背が伸びる。気を付けてはいるのだが、つい、下をむいてうつむきがちに歩いてしまう。
「そうそう、素敵ですよ」
「ど、どうも、ありがとうございます」
「じゃあ、今夜、お邪魔致しますね」
「は、あ、お待ちしております……」
彼女との関係は、強いて言うなら、雨のように、優しく心を潤す様な、そういう関係だ、と勝手に思っている。
× × × × × × ×
随分前にかいてたっぽいけどのせてなかったっぽかった(かった
輪の中に入るようになったのは此処に彼女…ヴァルトルーデさんが来てからで、彼女はいつも誰にでもそうなのだが、優しく接する人だ。優しい、と思う。少なくとも俺には。ヴァルトルーデさんの夫は何人かいるが興味は無かった。それは、元から自分が興味を持っていなかったこともあるが、彼女自身がそういうことを気にしない、というか、彼女が他の夫を連れてきて紹介することもなかったし、それはそれ、という割り切っている人であるということも大きい。だから自分以外にどんな男性、あるいは女性の伴侶がいるのかも気にする必要が無くて…。
此処に来て初めて知った事だったが、あのレヴェンデル家のご当主とも関係があるとは驚いた。驚いただけで、彼女であれば、納得もした。
「レイズさん」
心地の良い鈴の音のように彼女が俺の名を呼んで近づいてくる。彼女はだれに対しても、優しく心地の良い微睡のように包んでくれる。
「て、天気の情報を見ていました、今夜は荒れるようです」
「あらあら、子供たちが怖がらないといいけど、といっても怖がるような子もあまりいないですね」
「そ、そうですね」
人と話すと緊張して言葉に詰まってしまう。するすると話すことが難しく、だからあまり他人と会話したくもないのだが、彼女は何でもないという風に受け止めてくれる。
「……レ、レヴェンデル様は今日はご一緒では」
「はい、あの方でしたら今日はアートルム様と遠方のコロニーに」
「あ、ああ、そ、そうでしたか……」
彼女と自分の間には肉体関係はない。ただ、自分の心の安寧の場として彼女がいてくれると安心感が高まるうえ、彼女と居るときは不思議といつも人の挙動を気にする自分が気を落ち着かせていられるということだけで夫と妻という間柄になった。本来なら、子を成していただくべきなのかもしれないが、そんなことよりもただ彼女と友人以上の繋がりの糸が欲しくて、それ程強く想う人は彼女以外考えられなくて、接触が不得手の自分にも彼女は気さくに触れてきてくれて、とにかく、気を遣わなくていい、というのが彼女の自分にとっての魅力だった。
「お天気が荒れるのでしたら今夜はレイズさんと過ごしたいです」
「え……?ど、どう、してですか、」
「あら、こう見えても私怖がりなんですよ?」
ふふ、と笑って首を傾げる彼女はそう言ってこちらを見上げる。思えば彼女と長時間一緒に過ごしたことはない、と思う。
「そ、そうだったんですか、それは、えっと、し、知らず…」
「ふふふ、謝らなくていいですからね」
「あ、は、はあ」
先回りされて釘を刺されてしまう。う、と首を竦めると彼女が手を握ってくれる。
「誰かといる方が安心できるんですよ」
寂しがり屋さんなんですと彼女はまたいう。こういった会話も、彼女とはしたことが無い。理由は、自分が会話が得意ではないからだ。
「そ、それも、初めて聞きました……」
「そうですか?」
「は、はい……し、知らないことが、多い、ですね、」
彼女の事については何も、と言っていいほど知らないかもしれない。もともと、深くお互いを探ることはしないが、他の種族はそうではないらしくあれこれと趣味や好きな物事やらを伺われたりすることも、そういうのを聞いているのを見聞きしたことも多々あった。
そんな影響もあるのかも知れない。少しだけ、彼女を知ってみたい、と思う。
「私もレイズさんの事はシャイな方だな、くらいしか知りませんから」
お互い様ですね、と彼女が笑う。
「そ、そ、それは、その、はい」
「控えめで可愛いですしね」
「かわ、いい、ですか」
「可愛いですよ?」
彼女がそう感じるなら、そういうものなのかもしれない。他人の事を気にしすぎるあまりよく体調を崩すので、人にどう思われているかなるだけ気にしないように気を付けてはいるのだが、可愛いと言われるとは思わなかった。
「あら、雨」
その声につられて外を見ると、あっという間に地面が濡れていくのが見える。
「そ、外作業は中断ですね………中で出来る作業を割り振りしないと…」
「お仕事お疲れ様です、レイズさん」
「あ、は、はあ、ど、どうも、です」
優しく背中を撫でられ、労わるように行き来する掌は小さい。
「背中、丸くなっちゃってますよ」
「うっ」
ぎゅ、と背骨を押されて背が伸びる。気を付けてはいるのだが、つい、下をむいてうつむきがちに歩いてしまう。
「そうそう、素敵ですよ」
「ど、どうも、ありがとうございます」
「じゃあ、今夜、お邪魔致しますね」
「は、あ、お待ちしております……」
彼女との関係は、強いて言うなら、雨のように、優しく心を潤す様な、そういう関係だ、と勝手に思っている。
× × × × × × ×
随分前にかいてたっぽいけどのせてなかったっぽかった(かった