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【ヤルヨル】雨が降っている
2019/12/29 02:48ヤルヴァ×ヨルク(男男)
【A】
雨が降っている。窓にしとり、と、つく雨粒を見ながら、晴れた空をおもう。
彼も、この空を見ているのだろうか、と、いつかみたあの横顔を思い出す。思い出して、俯いて、かさついた指で、下唇を軽く抓った。
「(馬鹿な事、考えて)」
そんなわけないのに。考えてしまう。戒めのつもりで抓る力は強くなる。
私には遠い方。私では、釣り合わない、あの方、なのに、私を選ぶ、あの方。会いたい、と、ふとわいた感情に熱があがる。小さく首を左右に振る。ぽす、と、ベッドに体を横たえて休暇だというのに時間をただただ無為に。
しょうもない感情で、彼の時間をつぶすわけにはいかず、こんな感情で、彼を縛ってはいけない、とも思い、だというのに、彼の笑顔が頭に浮かんで、苦しくなる。
「(すき、で)」
すき、以外の言葉が見当たらない。すきで、くるしくて、申し訳がなくて、なのに浮かぶのは彼の優しい笑顔と、大きな瞳で。いつも、彼が、彼から触れてくる手首を強く握る。
「(私が、)」
こんな私が、触れたら、彼は困るのだろうか。
× × × × × × ×
【B】
雨が降っている。彼は今日は休みで、ここに監視の視線はない。でも、彼が好きで、彼と思いを通じさせることが、出来たはず、と思っているから、休日でも彼がいればいいのに、と思いながら窓の外を眺めている。
窓を開けて、彼に会いに行こうかな、なんて考えてしまう。彼の家を知らないから、それは、ロマンチックだけど無謀だ。彼は俺に会いたい、と、思ってくれたりするのだろうか、と思考して、ため息が零れる。
「(どうかな)」
自信がない。そう感じてくれていればいい、なんて思ってしまうことは初めてな気がする。諦めていたから、どこか、思わないようにしていたのに、思ってしまう。
彼に沢山触れてみたいけど、彼は消極的に見えて、指に触れるだけでいじらしい反応をするからそれ以上踏み込めないと思うのに、もっと、と思ってしまう。
「(こんなこと考えてる、って知られたら嫌われそう)」
ああ、彼の家の窓と、この窓が通じてしまえばいいのに。
× × × × × × ×
【C】
雨が降っている。隣にいる彼はしぶしぶ座っていて、むっすりと、変わらぬ表情でそこにいる。
「雨だね」
そう声をかけて近くによると、静かに彼が緊張する気配を感じて、罪悪感が僅かにありながら、彼の腰に手をまわしてみた。
「静かでいい」
抵抗してくれない彼にドキドキしながら、囁いても、彼は少しだけ目元を赤くしただけだ。悪い気はしていないらしい、と安心して、それから頬に口づけても、僅かに肩を揺らしただけの彼に、少し不安になる。無理してないだろうか、とか、嫌なのを隠してないか、なんて思いながらヨルク、と彼を呼ぶ。
「ふたりきりだね、」
囁いただけ。くす、と、ただ、下心はなくて、彼の緊張が解けたら、と思っただけ。
「(あ、ぁ…)」
それだけなのに、目を見開いて、目じりに涙を浮かべて、首まで赤くして、小さくあいた唇が震えて、
「きょ、う、は」
「あ、ち、違う、違う、違うよヨルク!」
そんな気で伝えた言葉じゃないんだ、と慌てて彼の頭を抱きしめると、呻いて、泣き啜る音が聞こえて、焦る。
「ごめん、ごめんね、違うんだ、」
「も、すこし、だけ、時間、くだ、さい、かならず、うけ、う、うけいれ、ます、かならず」
「…ぁ、」
たどたどしい言葉に、期待で、熱を燻ぶらせた自分は、なんてひどい人なんだろう。
× × × × × × ×
こういうの大好きですね
雨が降っている。窓にしとり、と、つく雨粒を見ながら、晴れた空をおもう。
彼も、この空を見ているのだろうか、と、いつかみたあの横顔を思い出す。思い出して、俯いて、かさついた指で、下唇を軽く抓った。
「(馬鹿な事、考えて)」
そんなわけないのに。考えてしまう。戒めのつもりで抓る力は強くなる。
私には遠い方。私では、釣り合わない、あの方、なのに、私を選ぶ、あの方。会いたい、と、ふとわいた感情に熱があがる。小さく首を左右に振る。ぽす、と、ベッドに体を横たえて休暇だというのに時間をただただ無為に。
しょうもない感情で、彼の時間をつぶすわけにはいかず、こんな感情で、彼を縛ってはいけない、とも思い、だというのに、彼の笑顔が頭に浮かんで、苦しくなる。
「(すき、で)」
すき、以外の言葉が見当たらない。すきで、くるしくて、申し訳がなくて、なのに浮かぶのは彼の優しい笑顔と、大きな瞳で。いつも、彼が、彼から触れてくる手首を強く握る。
「(私が、)」
こんな私が、触れたら、彼は困るのだろうか。
× × × × × × ×
【B】
雨が降っている。彼は今日は休みで、ここに監視の視線はない。でも、彼が好きで、彼と思いを通じさせることが、出来たはず、と思っているから、休日でも彼がいればいいのに、と思いながら窓の外を眺めている。
窓を開けて、彼に会いに行こうかな、なんて考えてしまう。彼の家を知らないから、それは、ロマンチックだけど無謀だ。彼は俺に会いたい、と、思ってくれたりするのだろうか、と思考して、ため息が零れる。
「(どうかな)」
自信がない。そう感じてくれていればいい、なんて思ってしまうことは初めてな気がする。諦めていたから、どこか、思わないようにしていたのに、思ってしまう。
彼に沢山触れてみたいけど、彼は消極的に見えて、指に触れるだけでいじらしい反応をするからそれ以上踏み込めないと思うのに、もっと、と思ってしまう。
「(こんなこと考えてる、って知られたら嫌われそう)」
ああ、彼の家の窓と、この窓が通じてしまえばいいのに。
× × × × × × ×
【C】
雨が降っている。隣にいる彼はしぶしぶ座っていて、むっすりと、変わらぬ表情でそこにいる。
「雨だね」
そう声をかけて近くによると、静かに彼が緊張する気配を感じて、罪悪感が僅かにありながら、彼の腰に手をまわしてみた。
「静かでいい」
抵抗してくれない彼にドキドキしながら、囁いても、彼は少しだけ目元を赤くしただけだ。悪い気はしていないらしい、と安心して、それから頬に口づけても、僅かに肩を揺らしただけの彼に、少し不安になる。無理してないだろうか、とか、嫌なのを隠してないか、なんて思いながらヨルク、と彼を呼ぶ。
「ふたりきりだね、」
囁いただけ。くす、と、ただ、下心はなくて、彼の緊張が解けたら、と思っただけ。
「(あ、ぁ…)」
それだけなのに、目を見開いて、目じりに涙を浮かべて、首まで赤くして、小さくあいた唇が震えて、
「きょ、う、は」
「あ、ち、違う、違う、違うよヨルク!」
そんな気で伝えた言葉じゃないんだ、と慌てて彼の頭を抱きしめると、呻いて、泣き啜る音が聞こえて、焦る。
「ごめん、ごめんね、違うんだ、」
「も、すこし、だけ、時間、くだ、さい、かならず、うけ、う、うけいれ、ます、かならず」
「…ぁ、」
たどたどしい言葉に、期待で、熱を燻ぶらせた自分は、なんてひどい人なんだろう。
× × × × × × ×
こういうの大好きですね