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【ホライゾン】楽しい夜の訪れ

2019/11/09 01:42
CP無し
「ホライゾンさん、何か手伝おうか、俺」

 夜中に、彼にとっては随分重いはずの扉を開けて、そう尋ねてくる。年頃の割には華奢過ぎて買った寝巻もかなりぶかぶかだな、と改めて思いながら、タイピングしていた指先を止める。

「じゃあ、一緒に休憩してくれる?」
「それ手伝いっていうか?」
「ボッチ寂しいじゃん……?」

 はあ、とため息をついた彼が重い扉を閉めて、近くに備えていた椅子に腰かける。

「何か飲み物を用意しようか、何が良い?」
「水」
「みず」
「それかお湯」
「おゆ」
「あんた味ついてるのほぼわかんねえじゃん。いいよそれで」

 味がついてる飲み物もあるのに、と思いながら待っていてねと声をかけ、なるべく早く、ふたつ、グラスに水を注いで部屋まで戻る。彼が夜遅くに起きている事を咎めようとは思わない。不眠気味なのは知っているし、リズムがある生活を送ってきたわけじゃないから急に直せというのもちょっと酷いかな、と思って、夜更かしだとは言えない。

「何の仕事してるの」
「色々、色々かなあ……」
「ふうん…」
「好きな事をさせてもらえてるからね、何でもしてみたくてつい」
「欲張りだな」
「まあー…欲張りになっちゃった、のかな」

 ここへ来てから、好きな事を許されて、好きにやっている。誰に咎められることもないし、しいて言うなら仕事を滞納するとレイフ君にお小言を言われるくらいなので、確かに、あれもこれもとしてしまう今の自分は、欲張りなのかもしれない。

「ファゼットくんもそのうちなっちゃうかもよ」
「そうかな」

 グラスに口をつけた彼は、そう言ってから、一口飲み込む。

「…あんたは、あんたが、なんでも良いっていってくれるから、そうなる、のかな」
「なってもいいし、ならなくてもいいよ、そこは吾輩が口を出すことではないけど、でも、君が好きにやってくれれば嬉しいかな」
「……あんたって、怒らないよな。俺口悪いだろ、直せとも言わないし」

 彼のたらりと下に垂れていた尻尾が小さく揺れる。

「生きるために君が頑張って身に着けたものだからね、それを、吾輩が否定は出来ないでしょ」
「………ふうん、そう、なんだ」
「身についたものはなかなか直せないもの」
「あんたもあるの?」
「うーん、ある、かな、あるね」

 例えば外に出るといつも警戒してしまうし、人と話すときはいつ攻撃されてもいいように気を抜けないし、目を合わせるのも苦手だし、無意識に目の前にいる人物の急所に防具があるか確認してしまうし、やってしまっていることは多々ある。

「膝から崩れ落ちるのとか?」
「や、それは、感情が極まりすぎちゃってるだけっていうか」
「そうなんだ、じゃあ口元抑えてニヤついてるのも違うんだ」
「待って吾輩ニヤついてるの隠せてたつもりだったのに!?」
「俺は騙せねえよ」

 ばかじゃねえの、と笑う彼に、つられて笑ってしまう。随分笑うようになって安心した。シリウス君の面倒も、なんだかんだと見ていてくれているらしいし。イイコなんだ、と思う。

「ファゼット君、観察力鋭いな」
「あんたがわかりやすいだけなんだよ」
「…そっか」

 思わず自分の顎を撫でる。わかりやすく、見えるようになっているんだと彼の言葉で猶更、自分の変化に気が付く。

「何笑ってんの?」
「や、うーん、そうだな、吾輩、仏頂面で分かりにくいって言われてたから、それなら嬉しいなと思って…そんなんじゃ子供泣くからって言われたことあるので猶更…」
「あんたが?嘘だろ…?めちゃくちゃ顔に出るじゃん」
「そっかなあー?へへへ」
「そうだよ、おかげで俺は、まあ、安心できるから、いい」

 わかりやすい方が好きだ、という彼の小さな声に、少しだけ眉が下がる。

「それなら良かった、吾輩も君が話し相手になってくれるからとても嬉しい」
「……ん、ん、あんたが、良いなら、良い」
「えーーー!!!照れてるの!?かわいい!!まさか!照れている!」
「う、うるせーーー!!!うるっせーー!」

 大声を出さないように二人で笑っている夜更けの時間が、孤独でないこんな時間が出来たことが、ただただ、あふれるほどに愛おしいと思いながら、感情を素直に出してくれるようになってきた彼を抱きしめた。

「あー!もおー!髭!邪魔!」
「邪魔にしないであげてー!」

× × × × × × ×
リプきたキャラかCPでかくやつでホライゾンさんをいただきました!いつもより静かな彼かなとおもいますヽ( ´¬`)ノ

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