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【くじゃくさんとおおかみさん】夕飯の約束

2019/11/09 01:40
CP無し
 くじゃくの男は髪の毛の色が派手だ。とにかく派手だ。赤と緑だとか、青と黄色だとか、とにかく一目みれば染めていない限りは「男性」と分かりやすく、間違えようがない。たとえ、女性的なまるみを持った胸があっても、だ。

「おおかみちゃんおはよー」

 朝一番でみた顔は同じアパートに住んでいるくじゃくだ。先ほど、メイクを落としてゴミ出しに来ました、みたいなかなり楽そうな格好でひらひらと振る手の爪にはまだ落とされない綺麗なきらきらとした桃色がそこにあった。

「おはよう」
「やったー!おおかみちゃんにおはようっていわれちゃった!」

 顔もよければ声も高めなのに、胸もあるのに、男であるのはまあ色々こいつも事情がある。ややこしいのだが、見た目は女性のパーツが備わったこのくじゃくは今現在まだ男性である。まだ。
 長い髪の毛を高い位置で結い上げて、それが揺れるたびにつけている香水なのか、部屋の匂いなのかわからないが、ふわふわと甘い香りが漂う。

「おおかみちゃん起きるの??起きる?」
「起きるよそりゃ」
「朝ごはん私が作ってあげよっか!ね!ね!」

 がさりとごみ置き場に袋を置いた手を、くじゃくが掴む。

「こら、手洗ってないから」
「やさしいーーー!」
「優しいんじゃなくて普通に俺が嫌なの、手を洗わせなさい」
「じゃあ私のお部屋にどうぞ!ちょうど石鹸を取り換えたの!」
「なんでそうなるの?」

 厚化粧というわけではない彼女(一応女の子としてありたいらしいので彼女という)はそもそも元の顔が良いので、メイクを落としていてもさほど変わりがないというと失礼なのかもしれない。どちらかといえば口紅を塗っていない今の方がまあ個人的に好ましいが、これをいうと舞い上がられてしまうので喉の奥にしまっておく。

「お気に入りの石鹸を使って欲しくて…っていうのは嘘なんだけど、たまたま変えたばっかりだったから」
「お前仕事終わりだろ、いいから早く寝なさい」
「ええーん!やだあ、やだあ」

 掴んだ手を離さないまま、ぷらぷらと揺らしてぐずるまねをしているものの、このぐずりはわざとで、決して本気ではない、と思いたい。

「やだじゃない」
「おおかみちゃんに朝食作ってあげたいの!」
「いいから!本当に遠慮するから!」
「材料買って来たのにー」
「買ったの!?」
「うん」

 うんじゃねえ、うん、じゃ。

「………じゃあ、夕飯は、食べに行くから、早く休みなさい」
「!!」

 目に見えて目を輝かせるな。まぶしい。

「約束ね!」
「はいはい、約束ね」

 ふわ、と甘い香りが酷く近くでしたのと、頬に柔らかいものがあたったな、と思ったのは殆ど同時だった。また夜ね、と嬉しそうに笑って、一足先にかけていく彼女に手を振り返しながら、のそのそと自分の部屋に戻った。

× × × × × × ×
リプきたキャラかCPでかくやつで、おおかみさんとできればくじゃくさん!とありがたいリプをいただきました!わーいわーい!

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