SSS倉庫

【リンカタ】口惜しく、酷く嬉しい

2019/03/04 02:51
リーンハルト×カタシロ(男男)
 ベッドで盛大にため息を吐く。気を付けていた。基本的に健康優良児と言っても差し支えない健康的な生活を、心掛けてはいたけど不規則な生活リズムに陥ることもままあるわけで。いくら気を付けていてもなってしまうときはなってしまうのだ。風邪に。
 熱なんて出したの久しぶりだなあと暢気に思いながら医療班から処方してもらった薬をそろそろ飲む時間だな、と起き上ったのと、施錠してあるはずのドアが音をたてて開き、するりと誰かが入ってまた鍵を閉めた。

「う、ぇ、た、大佐」
「うぇーとはなんだ」
「いやちが、うっ」

 いやとかじゃなくてと訂正しようとして咳き込むと大佐がつかつかと歩み寄ってきて、背中をさすってくれる。

「ぅ、すいませ」
「熱はどうだ」
「へ」

 手袋をわざわざ外して、ひやりとして少しだけ骨ばっている手が額に添えられる。どぎまぎしていると「少しまだ熱いのじゃないか」といって大佐の手が遠くなる。あまり大佐から触れてもらえる事がないので思わず額を触ろうとした手をぎゅっとシーツを掴んで耐える。

「も、もうちょっとですよお、今、薬飲むとこで」
「これか?そこにいなさい。持っていこう」
「いえ!そ、そんな!!大佐にそんなことさせられません!」
「…私がしたい、させてくれるか」
「えっ」
「いいな?」

 おろおろしている間に有無を言わさず、錠剤の薬と水が運ばれてきてしまう。

「す、すいません…」
「……いや、……恋人の、…恋人の世話くらいは、させてほしい」
「へっ」
「あまりそういう、らしいことは出来ないからな…すまない」

 すい、と視線を外した大佐の耳は少し赤く、つられてしまう。恋人、と大佐の口から出た言葉を脳内で何度も噛みしめてしまう。まだまだ子供っぽく見られているんだろうという気持ちが依然強いせいで、貰う言葉の衝撃が強い。

「う、あ、えと、えと、…」
「お前まで恥ずかしがるな。…俺がますます恥ずかしくなるだろうが」
「んんっ、は、はい」

 俺、とおっしゃるときの大佐は所謂プライベートな状態で、つまるところ、この状況は上司として行っているのではなくてプライベートで行っているものだということで、あ、どうしよう、顔あっつい。やば。

「リーンハルト」

 呆れたような声にぎくっと肩が跳ねる。大変わかりやすい反応をしてしまったことは自覚しているので、ますます顔に熱が集まっていく。

「す、すいません、あの、嬉しくて、はは、え、えと、治ったら大佐にお礼をしなくちゃ…」
「また元気になればそれでいい」
「ど、努力します」

 そうしなさい、といって笑った顔をみて、ああ、風邪なんか引いてなきゃ抱きしめたのに、とシーツを握りしめた。


◆ ◆ ◆
可愛いカップル描いちゃったー様から
『風邪を引いてしまった相手の看病をする』『リンカタ』を描きor書きましょう。

コメント

コメントを受け付けていません。