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【リンカタ】君のその手さえ、

2019/10/03 03:54
リーンハルト×カタシロ(男男)
 大佐は殆ど黒い手袋をつけている。そうでないことも多いけれど、見かける限り自分の前では黒い手袋をつけていた。外して下さらないのかなあ、とはあまり思わないのは見慣れ過ぎたせいかもしれない。
 だから、手袋を外している大佐はかなり貴重だった。
 普段あまりみない場所だからか、ついつい、じろじろと見てしまう。皺と、血管と、年を感じるだけの皮膚のたるみと、げんなりするのかなあ、と思ったりしていたけど、大丈夫、というよりいっそますます好きだな、と思う。

「カタシロさん」

 二人きりで、ここは大佐の部屋で、だからそうお呼びしても差支えはない。呼びかけに顔をあげた大佐を見て、ペンを握っていた手が一度書き方をやめて、置いたのを見てからそっと手を重ねて笑う。

「呼んでみたくなっちゃったんです、すいません」

 ふふふ、と笑うと、大佐も少し笑ってくださる。

「皺だらけの手だ、触ったところで」
「いーんです、そこがすきだから」

 いや、語弊があるな、と思い直す。

「いえ失礼、そこも、好きだから良いんです」
「そこも、か……、年寄りなのだが」
「大人の魅力たっぷりなので、どんどん好きになっちゃいます」
「……そうか」

 目を伏せて笑う口元の皺も、愛しいです、なんていったらまずいだろうか。

「リーンハルト」

 大佐の手がするりと抜けた、と思えば、逆に握られる。

「俺も、……その、好きだ」
「……はい」

 いつもより、優しげに笑う彼も、やはり好きだ。

◆ ◆ ◆
物静か、な雰囲気だなと個人的に思っています。これはこれでとっても好きですありがとうございます。

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