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【ホライゾン&ファゼット】暖かい手だった
2019/10/03 03:50CP無し
「行こうか」
そういって差し出された手の指は一本一本が長く、手袋に覆われた掌は大きかった。どうしようかと悩んでいる俺を、ホライゾン、と名乗った大人の男は急かすでもなく、怒鳴るでもなく、ただじっと手を差し出して待っていた。
「嫌、ならまあ、しょうがないんだけれども」
吾輩の我儘だから、とそう付け足しながら、どうするかとこちらを見ている人と目があう。右腕に、先ほど競り落とした赤子がはいった簡易式のユリカゴが抱かれていてこの手を掴んでしまうと、この人は、この人自身を防衛する手段を失ってしまうのに、と考えてしまう。
「お、おっさんだって、……あの、手が、ふさがっちゃう、だろ」
「え?ああうん、そう、だねえ」
優しく笑った目元は、酷く安心した。ただそれだけを言葉にしたきり、目の前の大人は手を下ろそうとはしない。
どうしよう、と考えた。確かに、おっさんのいう通り、この大人の言う通り、此処に残った俺の末路は、子供の俺でも想像ができる。多分、殴られるし、蹴られるし、酷いことになる。生かされるかどうかも怪しい。残る、なんて選択は自殺に近い。近いが、この大人についていけば、困るのはこの人だというのもわかっている。
この人はだって、あの赤ん坊を買いにきた。そこへ、ぽっとわいて出た俺が入っていいのか。金の問題も、家の問題もある。ついていくのは簡単だけど、その、その先。俺は働けるからだになれるかもわからない。未来が不明瞭なのに、彼の保護下へ入っていいのか考える。
「ファゼット君」
優しい声音と、呼ばれた自分の名前に顔を上げる。
「良かったら、吾輩の事を助けて」
「え?」
「君の助けが必要だ」
「お、おれ、なんにも、できない、」
「それを言われると吾輩も何もできないから安心して欲しいなあ」
「大人なのにできねえのかよ」
つい棘のある言い方をして、しまった、と首を竦めるが、短時間しか触れ合っていないこの大人が、俺へ暴力を向けない大人だ、というのは、知ってしまっていた。
「大人になっても出来ない事はあるよお」
「ダセー」
「あはは、そうだねえ…頼りないってよく言われるよ」
「ダッセー」
困ったように笑ったその人の、長い指を握る。関節がぼこり、と出ていて、特徴的な感触がした。さっきまで痛い痛いと半泣きだった姿と、今の情けない言葉に、警戒心の全て、失った。柔らかく握られた手が、この大人の全てを差しているようなそんな気さえする。
「いっしょに行ってやるよ」
「……、うん、宜しくね」
いってやる、んじゃない。この人が、俺を拾ってくれたのに、最後の選択肢は俺に預けてくれた。この人はもしかして、俺に、何かを与えてくれる。何かを。
だから、いってやる、のじゃなくて、この人と、生きたい。いきてみたい、と思った。
繋いだ手が暖かく、そうして、優しくて、ふわふわとした気持ちになった。
◆ ◆ ◆
誰かと手をつなぐシリーズ( ˘ω˘ )
ファゼット君にとっては、ホライゾンさんは大きい存在なんです……です…
そういって差し出された手の指は一本一本が長く、手袋に覆われた掌は大きかった。どうしようかと悩んでいる俺を、ホライゾン、と名乗った大人の男は急かすでもなく、怒鳴るでもなく、ただじっと手を差し出して待っていた。
「嫌、ならまあ、しょうがないんだけれども」
吾輩の我儘だから、とそう付け足しながら、どうするかとこちらを見ている人と目があう。右腕に、先ほど競り落とした赤子がはいった簡易式のユリカゴが抱かれていてこの手を掴んでしまうと、この人は、この人自身を防衛する手段を失ってしまうのに、と考えてしまう。
「お、おっさんだって、……あの、手が、ふさがっちゃう、だろ」
「え?ああうん、そう、だねえ」
優しく笑った目元は、酷く安心した。ただそれだけを言葉にしたきり、目の前の大人は手を下ろそうとはしない。
どうしよう、と考えた。確かに、おっさんのいう通り、この大人の言う通り、此処に残った俺の末路は、子供の俺でも想像ができる。多分、殴られるし、蹴られるし、酷いことになる。生かされるかどうかも怪しい。残る、なんて選択は自殺に近い。近いが、この大人についていけば、困るのはこの人だというのもわかっている。
この人はだって、あの赤ん坊を買いにきた。そこへ、ぽっとわいて出た俺が入っていいのか。金の問題も、家の問題もある。ついていくのは簡単だけど、その、その先。俺は働けるからだになれるかもわからない。未来が不明瞭なのに、彼の保護下へ入っていいのか考える。
「ファゼット君」
優しい声音と、呼ばれた自分の名前に顔を上げる。
「良かったら、吾輩の事を助けて」
「え?」
「君の助けが必要だ」
「お、おれ、なんにも、できない、」
「それを言われると吾輩も何もできないから安心して欲しいなあ」
「大人なのにできねえのかよ」
つい棘のある言い方をして、しまった、と首を竦めるが、短時間しか触れ合っていないこの大人が、俺へ暴力を向けない大人だ、というのは、知ってしまっていた。
「大人になっても出来ない事はあるよお」
「ダセー」
「あはは、そうだねえ…頼りないってよく言われるよ」
「ダッセー」
困ったように笑ったその人の、長い指を握る。関節がぼこり、と出ていて、特徴的な感触がした。さっきまで痛い痛いと半泣きだった姿と、今の情けない言葉に、警戒心の全て、失った。柔らかく握られた手が、この大人の全てを差しているようなそんな気さえする。
「いっしょに行ってやるよ」
「……、うん、宜しくね」
いってやる、んじゃない。この人が、俺を拾ってくれたのに、最後の選択肢は俺に預けてくれた。この人はもしかして、俺に、何かを与えてくれる。何かを。
だから、いってやる、のじゃなくて、この人と、生きたい。いきてみたい、と思った。
繋いだ手が暖かく、そうして、優しくて、ふわふわとした気持ちになった。
◆ ◆ ◆
誰かと手をつなぐシリーズ( ˘ω˘ )
ファゼット君にとっては、ホライゾンさんは大きい存在なんです……です…