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【ミハダン】「俺を苦しませて、楽しいですか」

2019/09/25 05:03
CP雑多
 ――「俺を苦しませて、楽しいですか」

 見ている小説でそんな言葉が出てくる。恋しい人に弄ばれて思い悩む登場人物の一言。何の気なしに読み飛ばした一文も少し考えてそわりとしてしまう。俺は身勝手にミハルに好きだから距離を置こう、といったのに、ミハルは優しいからずるずる俺とお試しの期間を続けている。いつまで、なんて特に設けなかったし、ミハルは限りを設けたら自分の気持ちを見誤るかもしれないから、なんていう。
 ミハルは、俺の所為で苦しんでいたりしないだろうか、なんて一瞬思う。一瞬、というのはまあ彼の性格からして無理なら無理、いやならいやだとはっきりいうところがあるとわかっているからだ。
 無理はしてない、させてない筈と思う。忙しいから時間は取りにくいというのはあっても、それでも隙間の時間で会おうかとか会えそうかだとか、俺の勝手でミハルを呼びつけるとかはしたことがない。

「…」

 してみようか、なんて思って端末を起動させて、登録している連絡先のタブを開いてやっぱりちょっと、と手を下ろす。我儘をしてみたらミハルが「やってられない」なんて気持ちになって白黒つけてくれるかもなんてちょっとでも思ってしまった。
 俺から好きかもしれないんだ、なんて言い出したのにあんまりな思考に座っていた椅子の背もたれに思い切り体重をかけてため息をつく。

「あー……最低だ」

 別に今の状態が苦なわけじゃない。むしろ楽しい。好きかもと思った人が時折顔を出して話をして、僅かなプライベートの時間に訪ねてきて。

「………ん」

 そういえば、ミハルは暇が出来た、といってよく訪ねてくる。性格的にマメな人だから、まあ実際俺と過ごす時間をとっていろいろと彼は彼で考えていることがあるんだろうなと思うけど、本当によく訪ねてくれる。
 ミハルを弄ぶわけじゃないけど、でも、試しに、通話をかけてみたらどうするんだろう。
 思った時にはもう一度タブを開いて彼にプライベート回線で連絡をとってしまっていた。ああ、やってしまったなあと思いつつ姿勢を正す。間もなくして、通話の可否を受けた音と一緒にミハルの声が聞こえる。

「どうかしたのか」

 彼も彼で忙しい。何かぱらぱらと紙媒体のものを見ている音が聞こえる。

「うん、間違った」
「間違った?」
「そう、悪かったよ、ごめん」
「そうか」

 ソゾやカタシロたちと違って、俺は今、基地内であれこれと処理するものがあるし、ミハルも基地内に居るのは知っているんだけど、それでもやっぱり彼にもプライベートの時間やらあると思う。彼の声を聴いてから情けないけど、やっぱり何も言えないなあとおもって嘘をついた。通話をきってから腕組みをする。

「うぅん」

 あまり根を詰めると皆に怒られてしまうし、今日は、もう仕事は終わらせてしまおうかな。そうしよう。それで寝たらすっきりしそう。
 のそりと立ち上がったときに、端末が着信を知らせる画面になる。

「……はい」

 ミハルからだ、と思いつつ出たのに、返事がない。

「ミハル?」

 彼もまたプライベートな回線でかけてきたから、名前を呼ぶけどやっぱり返事がないので首をかしげる。

「間違った」
「え?」
「間違った、といったんだ」
「そう…?」

 ミハルってこういうの間違うタイプだったかな、と思いながらそれじゃあ、と切ろうとしたところで、待てなんて言われる。

「なんだい?」
「今お前が考えていた事だからな」
「え?」
「わかりやすい奴め」
「………あ、は、は」

 俺が間違って連絡をしたわけじゃない、ってことはわかってる、と言われてしまっているに等しい。参ったな、と思いながら謝罪すると、ぷつりと通話が切れる。

「(怒らせちゃったなあ)」

 まあこれで愛想をつかされたらしょうがないかと少しだけ気は楽だった。ミハルは同じ男から見てもかっこいい。小柄だけど大きい背中を俺も、カタシロもソゾも、ナツヒコも眩しく見ていた人だ。はっきりものをいうし、面倒見も悪くない。切れ長の目がいつも凛々しいなあと思うし。笑うとカッコいい。性格だって真面目で、誠実というかまっすぐだし、俺とは全然違う育ちと生き方をしてきたんだなと思う。うん。やっぱり好きだ。
 ミハルは俺に呆れてるとは思うけど、でも俺が好きで居てもたぶんミハルは許容してくれると思う。

「シャワー浴びよう」

 一人が長いと独り言が多くてしょうがないなと反省してしまう。好意的な声をかけて来てくれる人は多かったけどいまいちピンとは来なかったから、俺も独身だ。
 というか所帯を持ったのはナツヒコとイストくらいなもので、あとは独身だなあとふと思う。最近ソゾとミケが良い仲だとは聞いてるし、ソゾも結構行動派だから、そういうことにはなりそうだなとは思う。
 皆やっとそういう余裕が出来て来た時代なんだなあなんてぼんやりと思いながらシャワールームにはいって、それから、寝るだけの支度をして出てきてびっくりしてしまった。いや、どうしてって、ミハルが座ってるんだもの。ソファーに。

「ミハル、なにか仕事?ごめんねこんな格好で」
「こっちに来てくれるか」
「うん、構わないよ」

 来客もあるから部屋に、ローテーブルを挟んで向かい合わせで備えてあるそのソファーにミハルは座っていて、丁度反対側をを指さしてそういうミハルに従って腰かける。

「それで?何か問題でもあったかい?」

 そう尋ねると、ミハルがすくっと立ち上がって、隣に座ってくるからちょっと驚きつつ詰める。

「ミハル?」
「顔を見に来ただけだ。何かあったかと思ってな」
「……あ、そんな……。ありがとう、えっと、ごめん、ほんとう、何でもないんだけどさ」
「良い」

 気落ちしている様子がなくて安心した、なんて笑って肩を叩かれる。

「ほんと、ごめん」
「暇だったから丁度いい」

 暇、なわけはないと思うけど、な、と思ったけど言わない方がいい。ああ、心配してきてくれたんだ。

「ありがとう」

 片側だけ口角をあげて笑う姿が自信にあふれていていつみてもカッコいいなあと思う。まあ、カタシロやソゾだってそういう自信たっぷりな笑顔はかっこいいんだけど。

「とっとと寝ろ。じゃあな」
「うん、おやすみ」

 一度だけこちらを振り返ったミハルは、何をするわけでもないけど、視線だけ合わせて、それから退室していく。正直言うと、わざわざ来てくれたことに嬉しいなあと、大はしゃぎはしないけど思ってしまう。じんわりとした嬉しさだ。
 答えがなくったっていい。ミハルの少しの優しさを、ほんのちょっとだけ、独り占め出来ているから、これでいい、と随分と穏やかに納得して、それから笑ってしまった。

「(ああ、でもいつかは)」

 いつかは、ミハルと白か黒か、決めないとな、とも改めて、強く思った。

◆ ◆ ◆

タイトルは診断メーカー様からヽ( ´¬`)ノ


君に恋したあの日から。
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増えそうな気がしている二次創作CP

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