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【セルイダ】君を視線で追う毎日

2019/09/25 01:16
セルベル×イダ(男女)
 困った時、顎の髭をもしょ、と少し触って眉が下がる姿。
 レヴェンデルさんにからかわれて、少し慌てて赤くなった顔。
 急いでいたのか、襟を片方だけぴんとたったままあちこち動き回る姿。
 厨房の奥で野菜や果物を切っている横顔。

 どれも小さい。遠くからいつもみているから、どの姿も小さくて、はっきり見えないけれど、でも近くで見る勇気はない。失礼だと思いつつ、大声を出すのが恥ずかしいから、テーブルを叩くと、足を少し引きずりながら「いつものですか」と聞いてくれる優しい声と、その時だけはっきり、大きく見える姿。小さく頷く私に微笑んで、はい、と言って、それから戻っていく大きい背中。
 料理を持ってきて、熱いので、という静かな声。視界に入る男性らしい手と指。指先に小さな切り傷があって、怪我をしたの?と聞きたいけどそんな会話で時間をとらせるのが申し訳なくて、また一人、頷いて終わり。

 ノニンさんに、彼の事を相談した。
 ノニンさんは優しい人で、物静かだ。私の小さな声も聞き取ろうとしてくれる。それから、私が内緒、と言わなくても、黙っていてくれることが多い。口が堅い、ということは酷く安心した。男の人が何を喜ぶかわからない。だから聞いてみたかったことがあったけど、ノニンさんは考え込みながら答えてくれた。そういう、優しい人。
 彼も、優しい人。私の声を聴こうと耳を傾けて、静かに見てくれる。口数は普段多くないけど、好きな事になると沢山彼が話して、沢山声が聴けるのが嬉しいのに、私は口下手だから、上手に相槌がうてない。
 リーゼロッテさんやレヴェンデルさんみたいに、大人で綺麗で、御話上手になれたらよかったのかもしれないけど、彼が、私と話すのは落ち着くから、好き、といってくれたことがずっと大事な言葉で胸にある。
 迷惑じゃないんだ、と嬉しかったし、それが、お世辞だ、と思えないのは、彼がそういうの、苦手なのを知ってるからだ。

 話に困って、顎の髭をもしょ、と少し触って、すいませんという横顔。
 ノニンさんと楽しそうに何か話している顔。
 会釈をしたら、にこりとわらって返してくれる顔。

 あれから少し、彼を見ていい距離が近くなった。少しだけ、彼の傍に座る勇気が、出た。
 もうちょっと、もう少しでいい。
 彼の笑った顔を、もう少し近くで見れるようになったら、言ってみたい言葉がある。


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タイトルは診断メーカー様より!

君に恋したあの日から。
https://shindanmaker.com/287899

イダちゃんは、もじもじ奥手な子なので推しです

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