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【イオ+イニャス】可愛いお友達と

2019/08/19 05:18
CP無しセルフクロスオーバー
「いにーちゃんだ、おーい、いにーちゃん」
「……あ、イオさん」

 昨日、助けてもらった彼女とまた会うことが出来た事に感謝をした。今日も仕事帰りなのだろうかと思わせる仕事に適しているだろう恰好で彼女は駆け寄ってくる。

「今日もいにーちゃん一人だね」
「あ、はい、お爺様はホテルで読書中です」
「そーなんだ、お爺ちゃんインドア派なんだね」
「そうですね、ですので本日は一人で散策中でした」
「そーなんだ」

 マジマジとまた上から下までじっと見られ、今日の恰好も可愛いと褒められる。今日は、淡いグリーンを基調にしたキュロットスカートと丸襟の白いブラウスに、薄手のカーディガンという格好だ。

「イオさんはもうお仕事終わりですか」
「うん、これからホライゾンさんとごーりゅー」
「ああ、そうだったんですね」
「うん、…いにーちゃんも行こ?多分ホライゾンさんがくーってする」
「え?わ、わたし?」
「うん、行こう行こう」

 断る暇もなく手を握られてぐいぐいと進む彼女に引きずられるようにして街を進む。周りより少し背の高いタワーは確か内外の研究者の方たちが集まって話し合いなどをするときに使われる会場、と案内マップに書いてあったはずだ。

「こ、此処ですか?」
「うん、今日はここで会議っていってたから、一緒に帰ろ―って約束してた」
「私たちのような子供でも入れるんでしょうか?」
「エントランスには入れるよ」

 行こう行こう、と再び言われて入ったタワーの中はスリムな見た目より随分と広く感じられてついつい天井を見上げてしまう。

「売店」
「わ」

 アレニエさんと少し違うコロニーを歩いたことがあるけど、イオさんは、少し彼女に似ていて戸惑ってしまう。なんというか、強引さが。

「何飲む?」
「えっ」
「イオはねえー、ホワイトソーダ」

 いにーちゃんは?と聞かれて慌ててレモンティーを頼みつつ、彼女に払わせるわけにはいかないと、せめて自分のぶんは自分で、そう思ってお財布を出してしまう自分は流されやすいかもしれないと少し項垂れそうになる。注文しないという手もあったとは思うけど。
 売店は無人ではあるものの、案内のロボットが常駐していて注文の商品を手渡してくれた。受け取った飲み物を抱えて、ソファーに腰かけると勝手知ったる、といった様子でイオさんはちゅるちゅるとストローで飲み物を飲んでいる。

「イオさんは、こちらでよく御父様と待ち合わせて?」
「うん、ホライゾンさんちゃんとイオが見ててあげないとダメだから」
「えっ」
「クビネッコ掴んで引っ張って連れてこないと最悪ここからでてこないから連れてこい!……っておじちゃんに言われてる」
「叔父上様に」
「うん」

 一度飲み物を置いてたぷたぷ、と端末を弄っているイオさんは、多分御父上に連絡していらっしゃるのだろうなと今の会話から察せられる。

「急かしてる」
「そうかなと思いました」
「手がかかる父親なんです」
「ふふっ、そうですか?」

 急に畏まった言い方なのに、表情は変わらないままなのがおかしくてくすりと笑ってしまう。

「でもいにーちゃんにもホライゾンさんは好きだなーって思ってもらえるかなーってイオは思う、自慢のパパだから」
「お話を伺う限り楽しそうな御父様です」

 羨ましいな、と思ってしまうものの、自分にも祖父や、父親代わりになってくれている人たちはいるのだから、良いのだとその羨望をそっと奥へしまい込む。
 暫くしてぱたぱたとせわしない足音と一緒に、すらりとした長身の男性が階段を駆け下りてくるのが見えた。

「ご、ごめ、ごめんねイオちゃん、おっ、おまた、せ……!!」
「おっせー」
「それファゼット君の真似!?」

 緩やかに癖が掛かった明るい紫の髪を肩にかかるくらいで切りそろえた男性の耳はしゅ、と長くとがっている。イオさんがつけている髪飾りと同じ青いハートの形のピアスがちらりと見える。ちょん、とはやした髭と、優しそうに下がった眦と、それから彼女の視線に合わせるように自然に膝をついた紳士な様子は、確かに、イオさんが自慢したくなる御父様かもしれない。

「あ、ホライゾンさん、友達のいにーちゃん」
「えっ?ともだ……」
「初めまして、イニィと申します」

 ぺこ、と頭を下げるとイオさんの御父上は少しばかり視線を彷徨わせる。

「シャイなのイオのパパ」
「ふふっ、そうなんですか?」
「かわいーでしょ」

 可愛い、かはわからないがイオさんがそう思うのなら彼女には素敵な可愛い御父上に見えているんだろうと微笑ましくなる。イオさんの御父上はといったら、なぜか口元を手で覆って何か考えるようにした後、畏まって、初めましてとあいさつを返して下った。

「ごめんね、娘に引っ張られてきたんじゃないかな?」
「引っ張ってきた」
「イオちゃん、あまりにも正直」
「いえいえ、私が付いてきたので」
「いにーちゃん良い子、イオが引っ張ってきました」
「そうかなって思ってたよ」

 本当の父親ではない、と彼女は言っていたが、やり取りを聞いていても彼女の父上の言葉には一切とげとげしい物や嫌味だと感じるような音がない。穏やかに彼女の全て受け止めて、それでいいのだと見守っているような優しい音を感じる。少しだけロトアさんを思い出す。

「何か昼食でもどうかな?イニィちゃんの時間を頂いてしまったお詫びに」
「あ、お構いなく、イオさんとお話できる時間は有意義ですし」
「良い子が過ぎる、はなまる上げたい……」
「声に出てるよ」
「はっ…」

 くす、と二人のやりとりに何度笑ったか分からない。

「イオさんのご自慢の御父上からはなまるを頂けたら光栄です」
「イオがあげちゃう」
「待って吾輩があげちゃうから」
「イオが先だからセンテヒッショーだから」
「ぐぅぅぅぅ」

 何故そこで争っているのだろう、と思いつつ、イオさんが頭を撫でてくれることについつい顔がほころびっぱなしになってしまう。

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いつだったかセルフクロスオーバーってひとりでやってたものを発掘したので載せました()

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