SSS倉庫
【ミケ+アマカワ】概念と付与された姉属性の人
2019/08/19 05:04CP無し雨の日のふたり
雨の日はいつもより憂鬱だ。傷跡がしくしくと痛むし、幻覚もいつもより頻発しておきかけては、ハッとして術を施した飴だとか、錠剤だとか、手放せないから、やるべきことに行きつかない。やらなくてはいけないわけじゃないけど、でもやっておいた方がいい、上から与えられた書類とか、目を通した方が良いものとか、未読ファイルに溜まってきている。
コツコツ、と小さくドアが鳴る。呼び出すならドア横のインターフォンを押せばいいのに、それをしないアナログな人が来たことを告げていて、時間を確認する。夜の時間も更けて来たころ。
少し考えて、それから少しだけ急ぎドアに向かう。ドアを開ければ、赤が淡くなったような柔らかい髪と目の色を持った彼女がそこにいる。
「アマカワさん、夜更けですよ」
「しってル」
蛇、の魔神族である彼女は、その大きく長い身体をずるりと部屋の中に収めてしまう。髪の色よりも深い赤の身体は、硬質な鱗で覆われていて、部屋の微かな明かりでてかてかと光っている。
「みケ、は、アメのヒ、つらイない、カ?」
彼女とは、先の事件の際、密かに契約を結ばせてもらった。彼女からの申し出ではあったけど。ただ、そのあと、この契約の事はお互いに黙っていよう、と提案してきたのも彼女だった。曰く、同性ならまだ大丈夫だが、異性同士だと、勘繰る面倒な輩もいるだろうし、いくら軍内が寛容とはいえ、そういう面倒な詮索は互いにさけておいていいだろうとのことだったから。
「……少し辛い、ですけど、でも」
「いたイ?」
「大丈夫ですから」
「みケ、すぐ、イイ、いう、だメ」
身体の通り、女性にすれば大きな手でわしゃわしゃと頭を撫でられる。
彼女と、俺の間に、恋情はない。
彼女は俺の事を「可愛い弟」として見ている側面が強く、そもそも「弟っていうものが欲しかった」と言われたので、同じ年ではあるけどそのように扱ってもらっても自分は差支えがないことを伝えたら以来こんなだ。
こんな天気の日は俺がつらいのでは、と時々伺ってきてくれる頻度は非常に適切に思える。彼女は言葉こそたどたどしいが賢い方だ。あれこれと人が思うだろう事へ思考を回しては先に手を打つこともある。
「心配、してくれてどうも」
「ン」
にこりと優しく微笑む顔は、まあ、姉というものが居たらこういう感じなのかなと思うに近い優しいものだ。
「でもアマカワさん、も、夜更かしはダメですよ」
「ンー」
んふふ、と笑ってごまかす彼女を少し眉をひそめて見つめると、両手を目の前で合わせて、それから「今日は赦して」と言わんばかりに頭を少し下げて祈る様にしてくる。
「あまりこういう時に使うのは申し訳ないんだけど、アマカワさんは姉さんなんですから、」
「ン、ン。わかっタ、ちゅーイ、すル」
にこにこと上機嫌な彼女を見て、ああ、と少し罪悪感がある。お姉さんと意図して呼ぶことで彼女の感情を操作してしまったようで。まあ、そういう狙いがあってしたんだけど。でも彼女は純粋に俺を「弟」としてくれているから申し訳なさは凄い。こんな時ばかり「弟」だという盾をかざしてしまう。
「みケは、やさしイ、だいじょうブ!きにしなイ、イイか?」
「あ、…えと、ありがとうございます」
「わたシ、おねえさン、いわれルの、すき、きにしなイ、ね」
「あ、……はい、ありがとう」
えらい、とまた頭をわしゃわしゃ撫でられる。
「ほんと、夜更かしダメですからね、アマカワさん」
「みケもよふかし、ダメ、イイ?」
「あ、はい、わかってます」
「ん、イイコ」
えらいえらい、と乱した髪を今度は整えるように撫でてくれる。撫でるのが好きな方だと思う。
「あれ、そういえば、雨降ってるのにどうやって…?」
「キョー、は、すこシ、ふってルから、カサ?は、オッケー」
「ああ、そうだったんだ・・・出てないから、わからなかった」
言われてから端末を取り出して確認すれば確かにこの時間帯は雨量が少ない設定だ。
「……アマカワさん、寒いんじゃ?」
「ん???ふふん…あったかイ、ある」
「あ」
ぺろり、と上着の袷を開いてくれる。中には掌くらいで収まる簡易的な暖をとるための商品が貼ってある。
「みケに、も、あげル」
「え、どうも……」
未開封のものが渡されて、目の前でそれを使わずにポケットへしまっても何も言わないでいてくれるのが彼女の好ましい所だ。
「というかアマカワさん眠いんじゃ」
「ねむイ」
「送っていくから、寝て下さい」
「ンンンンー」
「んんーじゃなくて」
にこにこずっと笑っている彼女は、俺の世話を焼くのも好きらしいが、俺がこうして世話を焼くのも好きなようだ。
◆ ◆
ミケちゃんと天河さんヽ( ´¬`)ノ
コツコツ、と小さくドアが鳴る。呼び出すならドア横のインターフォンを押せばいいのに、それをしないアナログな人が来たことを告げていて、時間を確認する。夜の時間も更けて来たころ。
少し考えて、それから少しだけ急ぎドアに向かう。ドアを開ければ、赤が淡くなったような柔らかい髪と目の色を持った彼女がそこにいる。
「アマカワさん、夜更けですよ」
「しってル」
蛇、の魔神族である彼女は、その大きく長い身体をずるりと部屋の中に収めてしまう。髪の色よりも深い赤の身体は、硬質な鱗で覆われていて、部屋の微かな明かりでてかてかと光っている。
「みケ、は、アメのヒ、つらイない、カ?」
彼女とは、先の事件の際、密かに契約を結ばせてもらった。彼女からの申し出ではあったけど。ただ、そのあと、この契約の事はお互いに黙っていよう、と提案してきたのも彼女だった。曰く、同性ならまだ大丈夫だが、異性同士だと、勘繰る面倒な輩もいるだろうし、いくら軍内が寛容とはいえ、そういう面倒な詮索は互いにさけておいていいだろうとのことだったから。
「……少し辛い、ですけど、でも」
「いたイ?」
「大丈夫ですから」
「みケ、すぐ、イイ、いう、だメ」
身体の通り、女性にすれば大きな手でわしゃわしゃと頭を撫でられる。
彼女と、俺の間に、恋情はない。
彼女は俺の事を「可愛い弟」として見ている側面が強く、そもそも「弟っていうものが欲しかった」と言われたので、同じ年ではあるけどそのように扱ってもらっても自分は差支えがないことを伝えたら以来こんなだ。
こんな天気の日は俺がつらいのでは、と時々伺ってきてくれる頻度は非常に適切に思える。彼女は言葉こそたどたどしいが賢い方だ。あれこれと人が思うだろう事へ思考を回しては先に手を打つこともある。
「心配、してくれてどうも」
「ン」
にこりと優しく微笑む顔は、まあ、姉というものが居たらこういう感じなのかなと思うに近い優しいものだ。
「でもアマカワさん、も、夜更かしはダメですよ」
「ンー」
んふふ、と笑ってごまかす彼女を少し眉をひそめて見つめると、両手を目の前で合わせて、それから「今日は赦して」と言わんばかりに頭を少し下げて祈る様にしてくる。
「あまりこういう時に使うのは申し訳ないんだけど、アマカワさんは姉さんなんですから、」
「ン、ン。わかっタ、ちゅーイ、すル」
にこにこと上機嫌な彼女を見て、ああ、と少し罪悪感がある。お姉さんと意図して呼ぶことで彼女の感情を操作してしまったようで。まあ、そういう狙いがあってしたんだけど。でも彼女は純粋に俺を「弟」としてくれているから申し訳なさは凄い。こんな時ばかり「弟」だという盾をかざしてしまう。
「みケは、やさしイ、だいじょうブ!きにしなイ、イイか?」
「あ、…えと、ありがとうございます」
「わたシ、おねえさン、いわれルの、すき、きにしなイ、ね」
「あ、……はい、ありがとう」
えらい、とまた頭をわしゃわしゃ撫でられる。
「ほんと、夜更かしダメですからね、アマカワさん」
「みケもよふかし、ダメ、イイ?」
「あ、はい、わかってます」
「ん、イイコ」
えらいえらい、と乱した髪を今度は整えるように撫でてくれる。撫でるのが好きな方だと思う。
「あれ、そういえば、雨降ってるのにどうやって…?」
「キョー、は、すこシ、ふってルから、カサ?は、オッケー」
「ああ、そうだったんだ・・・出てないから、わからなかった」
言われてから端末を取り出して確認すれば確かにこの時間帯は雨量が少ない設定だ。
「……アマカワさん、寒いんじゃ?」
「ん???ふふん…あったかイ、ある」
「あ」
ぺろり、と上着の袷を開いてくれる。中には掌くらいで収まる簡易的な暖をとるための商品が貼ってある。
「みケに、も、あげル」
「え、どうも……」
未開封のものが渡されて、目の前でそれを使わずにポケットへしまっても何も言わないでいてくれるのが彼女の好ましい所だ。
「というかアマカワさん眠いんじゃ」
「ねむイ」
「送っていくから、寝て下さい」
「ンンンンー」
「んんーじゃなくて」
にこにこずっと笑っている彼女は、俺の世話を焼くのも好きらしいが、俺がこうして世話を焼くのも好きなようだ。
◆ ◆
ミケちゃんと天河さんヽ( ´¬`)ノ