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【ニヒファゼ】あめのひ

2019/08/19 05:02
ニヒツ×ファゼット(男男)雨の日のふたり
「あの子とは仲良くやってんのか」

 そう、尋ねられる。どうせ暇したときに何もないのは困るだろ、と言って持ってきた陣取りのボードゲームを幾つか、小さいテーブルの上に置きながら。

「しています」

 あの子、と、言うのはファゼットさんの事。
 是と答えると、あの人はそうかと笑う。

「そりゃ何よりだが、泣かす様な真似はするなよ?レヴェンデルにどやされる」
「どや・・・?」
「怒られる」

 レヴェンデル。一度、会った時はとても厳しそうで、隙のない相手と見た。
 あの人にも、レヴェンデルは厳しいのだろうか。厳しそうだったから、そうかもしれないが、ファゼットさんから言わせると、レヴェンデルは優しすぎる人、ときいた。
 でも、あの人が怒るというなら怒るのだろう。

「ちゃんと仲良くしてりゃあ大丈夫だよ」
「仲、良いです」
「二人で暇つぶしに遊ぶとき使いな」

 正直、陣取り、というものは苦手だ。ファゼットさんは好き、といっていたけど、俺はあまり、得意ではないんだろうな、と思っている。命令されて、少しは考えるけど、実際やったほうが簡単にも思える。

「想像力鍛えねえとな」

 想像、空想、妄想、あまり、頭の中で、「オモイエガク」という行動が出来ない自覚があった。シミュレートみたいなもの、とファゼットさんは教えてくれたけど。

「ゆっくりな」
「はい」
「難しかったらあの子に聞きな」
「はい」

 ファゼットさんは色々、教えてくれる。尋ねると大概の事は答えてくれて、ぼそぼそと話す。ファゼットさんの唇から、ぽそぽそと零れる言葉は、色がついたように、そんな風に思える。無味でも無色でもなくて、彼の言葉が、どこか特別に思っている。そんなことは、ないのだろうけど。

「じゃあ、俺は戻る」
「はい」
「元気でな」
「はい」

 あの人は、あれから、少しだけ顔をだしてくれることが増えた。ファゼットさんに仕事を譲ってからは、ちっとも、顔はださなかったが、あの日、俺が彼と、彼の住む世界へ行ったときから、あの人は会いに来てくれるようになった。
 プレゼントも、時々くれる。プレゼント、という意味も、やっと、理解が得られた。言葉の意味は知っていても、なぜ自分にそれが与えられるのかわからないでいたけど、ファゼットさんやイオさんと、話して、過ごして、なんとなくは、わかった。
 完全な理解とは言えない。でも、あの人は、背を向けて、一度もこちらを振り向かず帰るあの人は、あの人なりに、俺に、想うものがあって、そうしてくれている、はずだと。
 あの人は、雨の降っている日だって、此処に来る。
 体に良くないといったのはあの人で。対処を教えてくれるのはあの人。ファゼットさんが濡れないようにと、傘をいくつか、置いてくれたのも、あの人。

◆ ◆

ちょっとずつなにかを得ていく人がすき。創作の中では、遅くないよを大事にしたいです。

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