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【叔父+兄】我儘だから、諦めろ
2019/07/13 03:31CP無し
「ヴェールりん、みーつけた」
「なんだそれは」
「ヴェルティカルだから、ヴェルりん」
ダメ?と笑う少し年下の男の子は、その長く伸ばした髪を後ろで一つに結わえているせいで、首をかしげると一緒になって尾のようにてろりと髪の毛の房が動く。
「別に」
クヴェル、という名の男の子は、自分と同じで既に「レヴェンデル」を名乗ることを許されるだけの実力のある子だ。何かの集まりだと遠くからでもこうして見つけて近寄って隣に座る。大人の話にはまだ混じれないが、雰囲気と年の近い「レヴェンデル」の子たちとの交友の為、として何人かが連れてこられてはいる。
話すのは得意ではないし、一人の方が好きだから、本を片手にいつも参加しては隅で読書をして時間を潰していた。本を読む時間が減ったのは彼がこうして話しかけてくるからだ。
「吾輩とあそぼーよーねえねえ」
「遊ばない」
「えーやだやだ、ヴェルりんってばー」
ねえねえ、と腕を掴んで来る彼の力は相当なものだ。父から聞く話では、ブラッディ家の血も混ざっている、とのことで腕力も申し分ないほどに、若いながら備わっているのだろう。鍛えないといけない自分と違って、潜在的にそういう基礎が高い彼が素直に羨ましい。
「痛い」
「うそだあー」
「はあ…」
「えー!あからさまにため息だあ!!」
けらけらと笑う彼は、まだ腕を離す気はないらしい。首を縦に振るまであきらめないつもりなんだろうか。
「遊ぶ気分ではない」
「ええーーーそんなあ」
「他の奴と遊んでくればいいだろ」
「ヴェルりんとがいいよーー」
「我儘」
「吾輩ワガママなんだよー!諦めてー!」
笑顔を浮かべたまま、楽しそうに言う事だろうか。
「他の子じゃア遊び相手にならないよ、すぐ壊れたら怒られちゃうし、ヴェルりんが一番強いから、君とがいいよー」
「力の加減を覚えることも大事だと思わないか」
「えー???えー……うーん」
眉を下げて困ったような顔をする。
「加減をして遊ぶことも、レヴェンデルを名乗るうえでは大切だ。君の力は聞き知っているが、だからこそ加減を覚えて爪を隠すということを覚えるのは損はないはずだ」
「じゃあじゃあヴェルりんが教えてよ!!」
「俺が?」
「そう、そう、ヴェルりんがいい!!」
ねえねえとねだる彼に根負けしたのは自分だった。本を閉じると彼は背筋を伸ばしてきらきらとこちらを見る。
「少しだけだぞ」
「やたーーー!!」
行こう、と引かれた手の強さを、今でも鮮明に、思いだせるのはなぜだろう。
「ヴェルりんどしたの」
すっかり声は低く落ち、どっしりとした音になった男の雰囲気はいくらかかわった。それは、自分も同じだろう。それだけ年も取った。月日も流れた。
「…昔を思い出した」
「えー???ホライゾンのことかい?」
「いいや、お前との、」
「吾輩!?」
ぱ、と笑顔になる男のわかりやすいことといったらない。
「お前も随分落ち着いたと思ってな」
「そりゃあまあ、いい年になったから多少はねえ」
「もう少し、落ち着いてくれれば、…」
「あーだめだめ、まだ駄目、やれって言われたってまだそんなつもりないよ」
「お前が次期当主に適任なんだが、」
ちらりと伺うと、男が眉間にしわを寄せる。
「やだ、まだやだ、……いやだよ」
「我儘」
「…吾輩、ワガママなんだ」
「諦めろ、か」
「許さないよ」
「はあ」
だめだ、と少し強い口調で腕を掴む男の力は、あの日より、随分と強くなった。
◆ ◆ ◆
当主が交代になると、前当主は星から出るのが決まりなので……( ˘ω˘ )
「なんだそれは」
「ヴェルティカルだから、ヴェルりん」
ダメ?と笑う少し年下の男の子は、その長く伸ばした髪を後ろで一つに結わえているせいで、首をかしげると一緒になって尾のようにてろりと髪の毛の房が動く。
「別に」
クヴェル、という名の男の子は、自分と同じで既に「レヴェンデル」を名乗ることを許されるだけの実力のある子だ。何かの集まりだと遠くからでもこうして見つけて近寄って隣に座る。大人の話にはまだ混じれないが、雰囲気と年の近い「レヴェンデル」の子たちとの交友の為、として何人かが連れてこられてはいる。
話すのは得意ではないし、一人の方が好きだから、本を片手にいつも参加しては隅で読書をして時間を潰していた。本を読む時間が減ったのは彼がこうして話しかけてくるからだ。
「吾輩とあそぼーよーねえねえ」
「遊ばない」
「えーやだやだ、ヴェルりんってばー」
ねえねえ、と腕を掴んで来る彼の力は相当なものだ。父から聞く話では、ブラッディ家の血も混ざっている、とのことで腕力も申し分ないほどに、若いながら備わっているのだろう。鍛えないといけない自分と違って、潜在的にそういう基礎が高い彼が素直に羨ましい。
「痛い」
「うそだあー」
「はあ…」
「えー!あからさまにため息だあ!!」
けらけらと笑う彼は、まだ腕を離す気はないらしい。首を縦に振るまであきらめないつもりなんだろうか。
「遊ぶ気分ではない」
「ええーーーそんなあ」
「他の奴と遊んでくればいいだろ」
「ヴェルりんとがいいよーー」
「我儘」
「吾輩ワガママなんだよー!諦めてー!」
笑顔を浮かべたまま、楽しそうに言う事だろうか。
「他の子じゃア遊び相手にならないよ、すぐ壊れたら怒られちゃうし、ヴェルりんが一番強いから、君とがいいよー」
「力の加減を覚えることも大事だと思わないか」
「えー???えー……うーん」
眉を下げて困ったような顔をする。
「加減をして遊ぶことも、レヴェンデルを名乗るうえでは大切だ。君の力は聞き知っているが、だからこそ加減を覚えて爪を隠すということを覚えるのは損はないはずだ」
「じゃあじゃあヴェルりんが教えてよ!!」
「俺が?」
「そう、そう、ヴェルりんがいい!!」
ねえねえとねだる彼に根負けしたのは自分だった。本を閉じると彼は背筋を伸ばしてきらきらとこちらを見る。
「少しだけだぞ」
「やたーーー!!」
行こう、と引かれた手の強さを、今でも鮮明に、思いだせるのはなぜだろう。
「ヴェルりんどしたの」
すっかり声は低く落ち、どっしりとした音になった男の雰囲気はいくらかかわった。それは、自分も同じだろう。それだけ年も取った。月日も流れた。
「…昔を思い出した」
「えー???ホライゾンのことかい?」
「いいや、お前との、」
「吾輩!?」
ぱ、と笑顔になる男のわかりやすいことといったらない。
「お前も随分落ち着いたと思ってな」
「そりゃあまあ、いい年になったから多少はねえ」
「もう少し、落ち着いてくれれば、…」
「あーだめだめ、まだ駄目、やれって言われたってまだそんなつもりないよ」
「お前が次期当主に適任なんだが、」
ちらりと伺うと、男が眉間にしわを寄せる。
「やだ、まだやだ、……いやだよ」
「我儘」
「…吾輩、ワガママなんだ」
「諦めろ、か」
「許さないよ」
「はあ」
だめだ、と少し強い口調で腕を掴む男の力は、あの日より、随分と強くなった。
◆ ◆ ◆
当主が交代になると、前当主は星から出るのが決まりなので……( ˘ω˘ )