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【ノニ+猫】わからないけれど、良い人

2019/07/10 04:44
CP無しセルフクロスオーバー
「ノーニンちゃん」
「あ……どう、も」
「おはよーーー」

 気さくな笑顔と自然な接触行動に相変わらず感心する。ロルフ・ガットネロ、と名乗った年上の男性は、女性のように艶々とした長い髪が特徴的な人だった。甘く低い声と、誰とでも親し気に接するその抜き出た能力であっという間にここの不思議な共同空間の輪を取り持つ人になっている。
 親し気過ぎるかと思えば「それ以上はダメだ」と示されたことには踏み込まないし、誰にでも愛を囁いてはいるがうわべを撫でるような、本気にされないような物言いをする。

「今日も可愛いね」
「いや、…どうも……」

 彼の人差し指が、三つ編みにしている髪の真ん中のあたり、首筋の近くをすっと掬って滑っていく。

「朝早くない??寝てる?」
「ガットネロ殿も早いように思うが」
「俺はホラお爺ちゃんだし?」
「……おじいちゃんですか」
「爺さんは朝早く夜も早めに寝るもんだろ?」

 うんうんと笑う彼の真意はいつも読み取れない。

「でも、書庫に来られるのは、意外です」
「ああーーーー、ノニンちゃんが入るの見たから」
「はあ」
「なぁによんでんの」
「読む、というか、読めないのも、あるのでなんとも」
「おっさんが音読してやろうか?難しいのでなきゃ読めるよ?」

 にこにこと、本当に屈託なく笑う。

「変な話ですよね、言葉は通じるのに、文字は、わからない……特に、レヴェンデル殿、あ、ホライゾン・レヴェンデル殿やギゴウ殿が書かれる文字は読めない…」
「ああーーー公用語ね」
「コウヨウ…?」
「そうそう、別々の国の人たちが話が通じ合うように作った共通の言葉」
「なるほど」
「ホライゾンちゃんもギゴウちゃんもそういうの専門の人らしいよー、俺はわかんないけど」

 あっはっは、と笑う彼はそのまま適当に本の背表紙を指で右の本から左にむかってなぞっていく。

「もし読みたいならこれだね、ご丁寧に教本がある」

 親切だねえ、といって手渡された本は、見た限り、教本、というより児童向けの本にみえる。何やら可愛らしい生き物が表紙にいる。

「子供向けだからとりあえず入門にピッタリ!」
「ありがとうございます」
「可愛いノニンちゃんの為だからね、おっさんがんばっちゃう」

 まるで、まるで自分の周りに居なかった人柄すぎて、全然どう接していいか、いまだにわからない。わからないが、彼もまた、「良い人」なのだとは、漠然と感じた。

◆ ◆ ◆
いいね×小話(‘・ω・´)
これでたぶん書ききったですね

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