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【ピスリゼ】どうして、どうして

2019/07/10 04:42
CP雑多
 やだー、という間延びした声とともに扉が押し開かれ、人が入ってきた。祈りの真似事の手を止め、振り向いて、ぎくりと目が泳ぐ。

「あ、ピスケスさん」

 急な雨に降られたらしい。彼女の髪はいささか濡れていて、床にぽつぽつと小さな水たまりを作る。
 手を振って頂いたのを、つい、と見ないふりをして、奥の扉に入る。寝泊まりするだけの簡易的な部屋が備えられているそこの、棚にしまってある布を取り出して再び戻ると、彼女はまだ扉のあたりでじっと佇んでいた。

「どうぞ」
「え、いいんですか?」
「はい」
「ありがとう!」

 彼女に触れないように細心の注意を払って手渡す。そのまま、もう一度、ありがとうと彼女は告げて、優しく自分の髪を布で撫でていく。

「多分、すぐ止むと思います」
「そうなの?」
「ええ……」

 彼女から出来る限り離れて、それから窓の外を伺う。幸い雨雲が通り過ぎていくだけのようで、長くは降り続かないだろう。

「何を見てるの?」

 ふと、隣にきた彼女が一緒になって窓の外を伺う。ぎょっと体を硬直させて、あからさまに半歩、横にずれてしまったのできょときょとと瞬きをされる。

「……あ、そ、その、え、と」
「ごめんなさい、近かったわよね…」

 目を伏せた彼女の表情に胸が痛む。彼女が悪いわけではないのだ。けっして彼女が悪いのじゃない。俺が悪いだけなのだ。

「驚いた、だけで、」
「うん、でも、ごめんなさいね」

 嗚呼、と目を強く閉じる。彼女に謝罪をさせたいわけじゃない。全て、俺が悪いというのに。

「ピスケスさん、」
「は、い」
「ごめんね、私、…ピスケスさんのことが好きよ」
「……は?」
「ふふっ、うん、好き」

 ごめんね、と重ねて言われる意味が分からない。
 顔が熱くなるのも止められない。
 言葉と意味とが繋がるのが時間がかかりすぎる。

「あ、ほんと、晴れた!」

 凄いわ、と笑う彼女の笑顔にまた、顔が酷く熱くなっていく。

◆ ◆ ◆ 
いいね×小話のやつです\( •̀∀•́ )/
ピスケスさんは国柄としてとってもシャイ

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