SSS倉庫
【セルイダ】とくべつのおと
2019/07/10 04:40セルベル×イダ(男女)
彼女はいつも静かだ。席は奥の窓際か、カウンターの一番隅。四人掛けの席に座ることは滅多になくて、話もたいして交わさない。
そんな彼女とお付き合いをさせて頂くようになって、色々と気が付くことが増えた。彼女が気になるから自然と目で追う所為でそうなってしまうのだろうけど。彼女は小川の横でぼんやりとするのが好きだったり、ノニンさんが黙々と作業をしているのを見ているのも好きらしい。リーゼロッテさんが話すのをいつも小さく頷き返して聞いている。自分は、ノニンさんのように気が利くわけではないし、話が楽しいわけでもない。
「……あの、」
「…はい」
じっとこちらの後片付けを見ている彼女に声をかける。小さな声がして、ほとりとテーブルに落ちるかのように細やかだ。
「退屈、じゃないですか?」
ぱち、ぱち、と二度、ゆっくり瞬きをしてから、彼女は首を左右へ小さく振る。
「………楽しい、です」
それなら、良いのかな、と、食器を洗う手を黙々と動かすことを再開する。
「……迷惑、ですか」
「えっ??」
「………あの、ここ、いるの、邪魔、だったら、ごめんなさい…」
彼女の声は細やかすぎて、手を止めないと聞き取れない。
「めっ、迷惑だなんてことは、ない、ですけど、あの、えっと、……」
「じゃあ、………ここにまだ、座っていて、良いですか」
「は、…はい、イダさんが、良い、んだったら」
こく、と頷いて、彼女は結局そのまま、片付けが終わるまでそこにいた。
「おわり?」
エプロンを外そうとしたところで、彼女がそう尋ねて来たので、はい、と頷けばお疲れ様、と小さく言葉を送られる。
「ど、どうも」
「じゃあ、帰ります……」
「えっ、もう陽が落ちますよ」
「うん」
「えっと、あ、じゃあ、あの馬を使ってください、その方が」
「良いの…?」
きょとんとした彼女に何度も頷くと、それなら、と納得してくれる。
「ありがとうございます」
「い、いいえ、こちらこそ」
「あの、セルベルさん」
「はっ、はい」
名前を呼ばれるとドキリとする。特別な名前になってしまったような、そんな錯覚にさえなる。
「ま、また、来ます」
「あ、は、はい」
目元だけ、緩やかに優しく細められ微笑まれた。つい顔に熱が集まったのを自覚して俯くと、彼女もつられたように俯いたらしかった。
◆ ◆ ◆
いいね×小話のやつ\( •̀∀•́ )/
そんな彼女とお付き合いをさせて頂くようになって、色々と気が付くことが増えた。彼女が気になるから自然と目で追う所為でそうなってしまうのだろうけど。彼女は小川の横でぼんやりとするのが好きだったり、ノニンさんが黙々と作業をしているのを見ているのも好きらしい。リーゼロッテさんが話すのをいつも小さく頷き返して聞いている。自分は、ノニンさんのように気が利くわけではないし、話が楽しいわけでもない。
「……あの、」
「…はい」
じっとこちらの後片付けを見ている彼女に声をかける。小さな声がして、ほとりとテーブルに落ちるかのように細やかだ。
「退屈、じゃないですか?」
ぱち、ぱち、と二度、ゆっくり瞬きをしてから、彼女は首を左右へ小さく振る。
「………楽しい、です」
それなら、良いのかな、と、食器を洗う手を黙々と動かすことを再開する。
「……迷惑、ですか」
「えっ??」
「………あの、ここ、いるの、邪魔、だったら、ごめんなさい…」
彼女の声は細やかすぎて、手を止めないと聞き取れない。
「めっ、迷惑だなんてことは、ない、ですけど、あの、えっと、……」
「じゃあ、………ここにまだ、座っていて、良いですか」
「は、…はい、イダさんが、良い、んだったら」
こく、と頷いて、彼女は結局そのまま、片付けが終わるまでそこにいた。
「おわり?」
エプロンを外そうとしたところで、彼女がそう尋ねて来たので、はい、と頷けばお疲れ様、と小さく言葉を送られる。
「ど、どうも」
「じゃあ、帰ります……」
「えっ、もう陽が落ちますよ」
「うん」
「えっと、あ、じゃあ、あの馬を使ってください、その方が」
「良いの…?」
きょとんとした彼女に何度も頷くと、それなら、と納得してくれる。
「ありがとうございます」
「い、いいえ、こちらこそ」
「あの、セルベルさん」
「はっ、はい」
名前を呼ばれるとドキリとする。特別な名前になってしまったような、そんな錯覚にさえなる。
「ま、また、来ます」
「あ、は、はい」
目元だけ、緩やかに優しく細められ微笑まれた。つい顔に熱が集まったのを自覚して俯くと、彼女もつられたように俯いたらしかった。
◆ ◆ ◆
いいね×小話のやつ\( •̀∀•́ )/