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俺の家に来ないか(睡眠的な意味で

2019/06/30 03:05
CP無し
「だーーかーーらーー!!フォンス!!!」
「ああ、おはよう、メルム」
「おう、おはよう。いやおはようじゃねえ!」

 雄の中でも大柄な方に入るメルムは体格に見合った大きく赤い翼をばさりと一度広げ、畳む。広げた時の風の動きの所為でふわりと飛びかけた書類の山の上に、喚かれた方のフォンスがさっと丸く蜂の蜜のような色をした石を置いて事なきを得た。

「お前また寝てねえな!?」
「安心してくれ、そんなに大きな声を出さなくても意識はしっかりしている」

 ぎりぎりと目を吊り上がらせて怒るメルムとは対照的に、フォンスは静かに頷き返している。

「そういうことじゃねえ!」
「睡眠はきちんととった」
「短時間か?」
「今日は…月があの山に降りきってから陽が昇るまでは」
「足りるかっ!!」

 怒りで再び広げた翼は広い部屋を狭く感じさせる。

「大分配慮したんだが」
「普段からすればそうだろうがな、良いか?お前はもっと王の親衛隊の隊長だっつう自覚を持てよ」
「勿論持っているとも」
「睡眠は、大事だって、師匠もいってただろーが!!!!」
「お師匠はまあ、言っていたが」
「わかってんなら!!寝ろ!!今日こそ寝ろ!!いいか!!月が真上になる前にねろ!」

 ひとつ呼吸をついて、再び小さく折りたたまれた翼はまだ少し開きそうに動いている。

「長くないか?」
「長くねえよ!!!うちの雛どもよりは遅く起きる猶予与えてやってんだろ!」
「そういえばお前の所の雛は今年で8つになるのか、元気にしているのか」
「心配してんだったらうちにくるか?あ?いやっつうほど寝かしてやる」
「あー…仕事が」
「フォンスー、うちに来いよーー、雛共が待ってるぞ」
「ええー……」

 にやりと笑ったメルムは、少しだけ低い位置の男の頭を見下ろした。

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