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【ニヒファゼ】すきをおしえてくれた
2019/06/20 02:51ニヒツ×ファゼット(男男)
目の前で、自分以外の誰かが寝ている、という状況は経験が無かった。泊まっていく、といったファゼットさんは、寝る、と告げてすぐ寝てしまった。規則的な呼吸。規則的な胸部の動き。閉じた瞼。少し、低い体温。余計な力の抜け落ちた肢体。
隣に、特別な彼がいる事にそわりと落ち着かないが、薬を飲んだので、突発的な発情期は来ない。彼に触れると、どうしても衝動的な感情に襲われてしまう。彼はそれを、仕方がないことだというし、誰にでもあることだ、ともいう。これからゆっくり慣れて調節していけばいい、とも言った。
もっと警戒していいはずなのに、もっと、気を付けてくれてもいいはずなのに、ファゼットさんは、深く眠っている。今だけ。命を預けられていると思う。
彼の眠りが酷く浅いことは、知っていた。知っていたし、彼自身もそう言った。昔よりは随分と良いけれど、浅いことは浅いのだと。深く眠るためにはそれ相応の薬が必要だけど、彼はそれにほとんど頼ることもないらしい。曰く、日中ずっと寝て過ごしている職無しだからと。
だから今も、今だけ、深く眠っているだけで、時々、浅い場所に意識が浮上しては、また暫くすると深くなるを繰り返しているようだった。
一緒に寝ればいい、と、彼は言ったけれど、当然、そんなことは慣れていないから出来るわけがなく、目を閉じてみても、彼を護らなくてはと思うと周囲を警戒してしまう。
ずっと、気が付いたときから、記憶の限り、一人だった。あの大きな筒が並んだ施設、沢山の大人と、同じくらいの年頃の子。でも、訓練の時以外は一人だった。硬いベッドで寝て、起きて。
そう言えば、ファゼットさんが泊まるようになってから、ベッドを替えた。枕も、彼が、眠りにくい、というので、レイフさんに聞いて、替えた。眠れればどこでもいい自分と、彼は違うから、出来るだけ彼が過ごしやすいようにするのは、番として、当然の行動だ、と本にもあったから、良いのだと思う。迷惑だ、とも彼は言わない。
彼の手は細い。指が、特に。薄くて、力を入れて握ったら間違いなく骨を折れると思う。そんな細さだ。彼はいつも襟の長い服を着ている。そっと、伺ってみた時、首にうっすらと絞められたような跡があった。最近ついたものじゃない。でも、消えない程頻繁に締め上げられた跡。レヴェンデルは、そんな男、じゃないと思いたい。彼の話から聞く、レヴェンデルという男は、暗殺者にしては優しすぎる性格だったし、彼は、彼も、レヴェンデルに酷いことをされたことは一度だってない、と言っていた。それを信じるなら、レヴェンデルと会う前に、誰かが、彼にこんな事をした、わけで、それを思うと、ああ、殺してやりたいと思う。
ファゼットさんが大事だ。大切だ。この人が良い、彼が良いと思った。番、というんだと、恋人と呼ぶ間柄だと、知るまでは、彼に固執するのが殺人衝動なのか、と考えていた。彼を滅茶苦茶にしたいのに、酷くしたくはない、矛盾したわけのわからない感情に悩んで、整えて、こうして「好き」を知ったから、だから、彼に酷くした奴が、例えもうこの世界のどこにもいないのだとしても、死ぬより辛いことをしてやりたいとは、思う。
思うのだけど、ファゼットさんは、多分、やれと言わない。やるな、という。そんな気がしている。
私と違う手。
命を奪ったことがない手。
武器を持たない手。
私に触れてくれる手。
薄い手は、低い体温の所為で、暖かさはあっても、ひやりとしている。
「に、ひつ」
瞼がうっすらと開いているけど、視線が定まっていないから、寝言かもしれない、と思いながら指を撫でていく。本で読んだ。番に、恋人になったら、パートナーになったら、何処かの指に、贈り物を捧げる風習があるのだと。何処だったか、思い出せない。
ファゼットさんに、贈り物をしたら、つけてくれるんだろうか。
「なに、あそんでんだおまえ」
弱弱しく手を彼の胸元に引き寄せられ、そのまま、ひとつ彼は大きく深呼吸する。そろそろと顔を寄せる。彼の瞳は、閉ざされている。
「ファゼットさん」
「ん」
そっと額をあわせてみても、彼は目を開けない。睫が瞼を縁取る様に綺麗に並んでいて、鼻筋を前髪がたらりと撫でて行ったのを擽ったそうに、くしゃ、と顔を歪めた。
「好き、です」
彼のおかげで、知った言葉。彼にこの気持ちを伝えると、胸の中の、もやもやしたものが流れていく。もやもやとしたら、好きだと言えばいくらかいいんじゃ、と彼が言ってくれたから、そうしている。確かに、言わないよりはいい。
「うん……おれも」
彼から返された言葉に、もやもやと、そわそわがまた出てしまう。そっと唇を額に押し付けると、やはりいくらかましで、それから、違うそわそわがある。
「ねろ、って、おまえ」
「はい」
彼が身体を寄せてくる。
贈り物、やはりしよう。彼は、要らないというかもしれないけど、本にはそうするところもあると聞いた。私と彼の母星でもあるあそこでは、どういう風習かわからないけど、私も彼も、あの星の者というには遠すぎる。かといって、私のもう一つの、遺伝子の母星ではどうなのかもわからない。
「ファゼットさん」
擦り寄ってきた彼の頭をそっと撫でる。
「好きです」
多分、まだ、彼の教えてくれた言葉と、好意を伝える手段は、私は知らなすぎる。拙いのだと思う。
それでも、うん、と言ってくれる彼が、一番、大事、で、一番、護りたい。傍にいたい人は、彼で、傍にいるのは、彼が、良い。
「好き、です」
「・・・うん、わか、ってる、よ」
薄い手が、背中を撫でて、彼が胸元に顔をうずめる。
ああ、でも、贈り物、は、何が、良いんだろう。指に、何を贈るのか、もう一度、本を読まないといけない。
◆ ◆ ◆
可愛いカップル描いちゃったー様から
『寝てしまった相手の寝顔を愛しそうに見つめる』『ニヒファゼ』を描きor書きましょう。
『「好き」と囁いている』『ニヒツとファゼット』を描きor書きましょう。
(`・ω・´)ため込んでいた診断結果なので手を替え品を変えのあれやこれや
隣に、特別な彼がいる事にそわりと落ち着かないが、薬を飲んだので、突発的な発情期は来ない。彼に触れると、どうしても衝動的な感情に襲われてしまう。彼はそれを、仕方がないことだというし、誰にでもあることだ、ともいう。これからゆっくり慣れて調節していけばいい、とも言った。
もっと警戒していいはずなのに、もっと、気を付けてくれてもいいはずなのに、ファゼットさんは、深く眠っている。今だけ。命を預けられていると思う。
彼の眠りが酷く浅いことは、知っていた。知っていたし、彼自身もそう言った。昔よりは随分と良いけれど、浅いことは浅いのだと。深く眠るためにはそれ相応の薬が必要だけど、彼はそれにほとんど頼ることもないらしい。曰く、日中ずっと寝て過ごしている職無しだからと。
だから今も、今だけ、深く眠っているだけで、時々、浅い場所に意識が浮上しては、また暫くすると深くなるを繰り返しているようだった。
一緒に寝ればいい、と、彼は言ったけれど、当然、そんなことは慣れていないから出来るわけがなく、目を閉じてみても、彼を護らなくてはと思うと周囲を警戒してしまう。
ずっと、気が付いたときから、記憶の限り、一人だった。あの大きな筒が並んだ施設、沢山の大人と、同じくらいの年頃の子。でも、訓練の時以外は一人だった。硬いベッドで寝て、起きて。
そう言えば、ファゼットさんが泊まるようになってから、ベッドを替えた。枕も、彼が、眠りにくい、というので、レイフさんに聞いて、替えた。眠れればどこでもいい自分と、彼は違うから、出来るだけ彼が過ごしやすいようにするのは、番として、当然の行動だ、と本にもあったから、良いのだと思う。迷惑だ、とも彼は言わない。
彼の手は細い。指が、特に。薄くて、力を入れて握ったら間違いなく骨を折れると思う。そんな細さだ。彼はいつも襟の長い服を着ている。そっと、伺ってみた時、首にうっすらと絞められたような跡があった。最近ついたものじゃない。でも、消えない程頻繁に締め上げられた跡。レヴェンデルは、そんな男、じゃないと思いたい。彼の話から聞く、レヴェンデルという男は、暗殺者にしては優しすぎる性格だったし、彼は、彼も、レヴェンデルに酷いことをされたことは一度だってない、と言っていた。それを信じるなら、レヴェンデルと会う前に、誰かが、彼にこんな事をした、わけで、それを思うと、ああ、殺してやりたいと思う。
ファゼットさんが大事だ。大切だ。この人が良い、彼が良いと思った。番、というんだと、恋人と呼ぶ間柄だと、知るまでは、彼に固執するのが殺人衝動なのか、と考えていた。彼を滅茶苦茶にしたいのに、酷くしたくはない、矛盾したわけのわからない感情に悩んで、整えて、こうして「好き」を知ったから、だから、彼に酷くした奴が、例えもうこの世界のどこにもいないのだとしても、死ぬより辛いことをしてやりたいとは、思う。
思うのだけど、ファゼットさんは、多分、やれと言わない。やるな、という。そんな気がしている。
私と違う手。
命を奪ったことがない手。
武器を持たない手。
私に触れてくれる手。
薄い手は、低い体温の所為で、暖かさはあっても、ひやりとしている。
「に、ひつ」
瞼がうっすらと開いているけど、視線が定まっていないから、寝言かもしれない、と思いながら指を撫でていく。本で読んだ。番に、恋人になったら、パートナーになったら、何処かの指に、贈り物を捧げる風習があるのだと。何処だったか、思い出せない。
ファゼットさんに、贈り物をしたら、つけてくれるんだろうか。
「なに、あそんでんだおまえ」
弱弱しく手を彼の胸元に引き寄せられ、そのまま、ひとつ彼は大きく深呼吸する。そろそろと顔を寄せる。彼の瞳は、閉ざされている。
「ファゼットさん」
「ん」
そっと額をあわせてみても、彼は目を開けない。睫が瞼を縁取る様に綺麗に並んでいて、鼻筋を前髪がたらりと撫でて行ったのを擽ったそうに、くしゃ、と顔を歪めた。
「好き、です」
彼のおかげで、知った言葉。彼にこの気持ちを伝えると、胸の中の、もやもやしたものが流れていく。もやもやとしたら、好きだと言えばいくらかいいんじゃ、と彼が言ってくれたから、そうしている。確かに、言わないよりはいい。
「うん……おれも」
彼から返された言葉に、もやもやと、そわそわがまた出てしまう。そっと唇を額に押し付けると、やはりいくらかましで、それから、違うそわそわがある。
「ねろ、って、おまえ」
「はい」
彼が身体を寄せてくる。
贈り物、やはりしよう。彼は、要らないというかもしれないけど、本にはそうするところもあると聞いた。私と彼の母星でもあるあそこでは、どういう風習かわからないけど、私も彼も、あの星の者というには遠すぎる。かといって、私のもう一つの、遺伝子の母星ではどうなのかもわからない。
「ファゼットさん」
擦り寄ってきた彼の頭をそっと撫でる。
「好きです」
多分、まだ、彼の教えてくれた言葉と、好意を伝える手段は、私は知らなすぎる。拙いのだと思う。
それでも、うん、と言ってくれる彼が、一番、大事、で、一番、護りたい。傍にいたい人は、彼で、傍にいるのは、彼が、良い。
「好き、です」
「・・・うん、わか、ってる、よ」
薄い手が、背中を撫でて、彼が胸元に顔をうずめる。
ああ、でも、贈り物、は、何が、良いんだろう。指に、何を贈るのか、もう一度、本を読まないといけない。
◆ ◆ ◆
可愛いカップル描いちゃったー様から
『寝てしまった相手の寝顔を愛しそうに見つめる』『ニヒファゼ』を描きor書きましょう。
『「好き」と囁いている』『ニヒツとファゼット』を描きor書きましょう。
(`・ω・´)ため込んでいた診断結果なので手を替え品を変えのあれやこれや