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【リンカタ】親子ごっこ

2019/06/20 02:50
リーンハルト×カタシロ(男男)
 降ろした前髪は彼の寝顔を聊か隠してしまっていた。
 緊張していた、のだろう。恐らく。偵察には慣れている彼だろうが、上司の自分と、というのは真面目な彼の性格からすれば気を張っていたには違いなく、まして、恋人同士のように振る舞うわけにもいかない中での距離の取り方を模索させてしまったようにも思う。
 何も知らない他人が見れば、自分と彼は、「親子」に見えるだろう。こうして短い距離を移動する為に乗った小型船にだって、親子の姿はありふれている。
 本当は、優しく起こしてやりたい。頬を撫でて、優しく肩を揺すって、起きなさいと声をかけてやりたいが、自分たちは今、まさに、対外的に「親子」でなくてはいけない。

「リーンハルト」

 健やかに眠っている彼が頭を預けてくれていた左肩をぐ、っとあげて、少しだけ語気を強く名を呼ぶと、慌てたように青年がしゃんと姿勢を正す。

「すっ…、ごめんっ、」
「良い」

 少し開き過ぎだった胸もとの釦を直しながら謝罪した彼の目じりが少し赤いのを見て、小さく咳払いをする。勘づいたらしく、すぐに深呼吸を数度繰り返すと、彼の顔色はいつものように、何もないかのような色を取り戻す。

「疲れたんだろう、今日はもう、ホテルに行こう」
「え、でも」
「無理をするものじゃない」

 すいません、と小さく零した言葉に、同じように良い、と返す。

「俺もお前に無理をさせている」
「い、いや、そんなこと…ないよ」

 父さん、と小さく呼ぶ彼の声が何処かぎこちない。「親子」のふりをする以上、彼は自分を「父さん」と呼ぶのだが、思えば、彼は確か母と祖母と暮らしていて、父は早くに亡くなった為にそう呼ぶ機会が無かったのだろう。
 それはそれで、まあ、義理の親子にも見えるだろうから良しとする。

「今日はちゃんと寝なさい、ゲームをするのは止して」
「はあい」

 通りかかった切符確認のアンドロイドを見ながらそんな会話をする。

「ねえ、父さん」
「なんだ」

 誰からも決して見えはしないだろう位置で、左の袖を少しひかれる。そのまま、彼の指が手首を少しだけ触る。
 そのまま左腕を動かして、彼の頭を少しだけ撫でると、少しだけ、彼は嬉しそうに笑った。

◆ ◆ ◆
可愛いカップル描いちゃったー様から
『相手の肩にもたれかかって眠ってしまった』『リーンハルトとカタシロ』を描きor書きましょう。

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