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【ノニエル】まるで私を責めるよう
2019/06/20 00:58ノニン×エデルガルド(男女)雨の日のふたり
※なんでもありな箱庭時空のノニエルです(絵でかいてる小ネタ時空のと連結してると思っていいやつ)
◆ ◆ ◆
雨が窓にあたる音が部屋に入ってくる。そんな必要はないとわかっているのに、視線を左右に彷徨わせて誰も見ていないだろうかと警戒してしまう。ドアはロックをそっとかけたし(遠隔操作、という魔術のような技術で離れていても鍵をかけられるというのは凄いとつくづく思う)、大きな物音はたまに遠くで聞こえる雷鳴くらいで、気を張ることは何もない。
恐る恐る、右肩の方に視線をやってから、確かな現実である重みと微かな呼吸のリズムに心臓が苦しくなる。
レスライン殿が、自分の右肩を枕にして寝入ってしまっている、という事実を再度噛みしめる。お付き合いを初めて、ずいぶん経つが未だに彼女とは何もない。文字通り何もない。キスはしたものの、唇をあわせた程度で、肉体関係もない。彼女が恐らくそう望んでいるだろう健全で清らかな付き合い方を出来ていると自負している。接触も多くは持たない。たまに彼女が見せる少女のような顔を見ると疚しい気持ちにはなるが律して堪えている。
だが今のコレはダメだ。
耐え切る自信はある、何もしない自信はないが、求められているだろう健全さは保ち切れるという自信はあっても、俺も男だという現実。
こんなに、心を許されているということを彼女が意図して行ったものでなくとも、示されてしまっていて何も感じない方がおかしい。
常日頃から警戒を怠らず、気を張っていて、いつも厳しくある女性が、全ての張りつめていた糸を緩めて、体をこちらに預けて、眠っているという事実。例えそれが疲れが蓄積した故であったとしても彼女ならば、きっと自室に向かう筈なのにそんなすきもなく、ふらりと頭が揺れてぽすん、と、預けられた重み。
雨が降っていたから、外での逢瀬を、あまり人の往来のない俺の自室に場所を変えてしただけだった。並んで座れるようなものは寝具しかなくて、それでも応じてくれたことが嬉しくて、それで、それで、こんなに、こんな。
(どう、しよう)
どうしよう、と何度も思いながらドアを誰もあけないように鍵を丁寧にかけて部屋の明かりも咄嗟に落とした自分の頭を叩きつけたいが、彼女のこんな無防備さを誰にも見られたくない、見せたくないという独占欲は隠しきれたものではない。こんなときくらいは、彼女に見られていないなら独占欲のひとつでも出したい。
そろり、となるべく動きが急にならないように右腕をあげる。
そのまま右手で腰に触れて、女性らしいウェストの曲線に首の後ろがざわつく。当たり前すぎる事だが、女性なのだとつくづく実感する。レスライン殿は背も高い方だ。体躯は確かに女性だががっちりしている軍人らしい鍛えられているのだろうなという逞しさがあるし、歩き方も男性寄りの大股の歩幅で、所作もそうやってきたからか随分男性的である。でもこうして触れて、やはり女性だ、と思う。
煩いくらいの自分の心臓の音を聞きながら、腰を抱いた右手人差し指に僅かに力を籠める。僅かに筋肉がついているのを感じるが、眠っていて身体の力が緩んでいるせいか、ふくっと指が彼女の体に沈む。もっと、と、欲が出る。そのまま、彼女の右腕を掴む。
力の入らない腕は、柔らかい。するすると腕を伝って、手首に触れて、改めて、華奢ではないにしても、男の自分の手でつかみきれる手首の細さを痛感する。手の甲をゆっくり撫でて、つい、その薬指の付け根を親指の腹で撫でてしまう。
呼吸が荒くならないように深呼吸を静かに繰り返しながら、馬鹿なと笑われそうだが、彼女の薬指にいつか、と思いを馳せる。
どれだけ傷が多くあっても、肉付きは確かに女性で、柔らかだ。この手で、いつか触れてほしいと思ってしまう。心から愛している彼女に触れて貰ったら、いったいどれ程気持ちが良いのだろうかと不意に思ってしまって、思考をぐしゃぐしゃに丸めて、部屋の隅に捨てる。
規則正しい呼吸のリズムと、彼女の使う整髪剤だろうか、その香りが鼻をくすぐる。
一度捨てても、悲しいことに男の自分の思考は再びめぐってくる。ぐるぐると同じことを思考して、とりとめがない。何度も何度も彼女の望むお付き合いをしなくてはいけないと自分に言い聞かせていても、このまま、あわよくばと考えてしまう自分も確かにいる。誤魔化すように何度も彼女の髪へ口づける。本当は、許されるなら唇へ触れたいが彼女は許してくれないかもしれない。彼女は、規律と理性と、禁欲的なものを望むだろう。
それでも、素肌に触れてみたいと思考してしまって、何度も彼女の右手を撫でながら、ぞくぞくと湧き上がった熱は胸から喉に駆けあがったのち、腹の下へ溜まっていく。あまりにも、みっともないと自分を叱責する。
後一度だけ、髪に口づけを、そう思った時に血の気のひけていく気持ちになる。規則正しかった呼吸のリズムが、異なっている。時々、微かに大きく上下する胸部に、起きているのだと気が付いて手に力が入ったのと、彼女が身じろぎをしたのは同時で、咄嗟に、本当に何も考えられないまま右肩を強く抱いて抱き寄せてしまう。
顔を見られたくないというのもあったかもしれない。彼女の怒った顔を見たくないというのもあったと思うが、それ以上に、逃がしたくないというどうしようもない本能に負けてしまった。
「すみません、お叱りは、あ、あとで、いくらでもッ…」
「ッ……」
「す、みませ、ん」
雷鳴の音が先ほどより近く、雨脚も強くなって、風と一緒に窓を叩いている。まるで言葉を発しない彼女の代わりのように、雨風が己を叱咤しているような心地になる。
左手で彼女の後頭部を捉えて、自分の肩口に押し付けておきながら手を離す勇気がまだない。
「すみません」
何度謝罪を重ねても、寝込みを襲ってしまったことに変わりはなく、許されないかもしれない恐怖が背中に這いずっている。
「レ、スライン殿、お、俺、は」
腕に力が入ってしまう。彼女が苦しいかもしれないと思う暇さえない。
「お、俺ッ…は、」
自分で何を言おうとしているのかわからない。それでも何か言わなくてはならないと思うのに、なにも言葉は出ない。「もうしない」とは言えない。触れたいことはきっとずっと抱えるだろうし、また、してしまうかもしれない。
「触っても、楽しくないだろ…私の、体など」
「そ、そんなことありません……」
低く落ちた声に心臓は委縮している。
「女らしいとこなんか胸だけだ」
「そのような事は、」
肉付きも、柔らかさもすべて女性らしいのにというと怒るかもしれない、と思ってしまう。
「本当にそう思うのか」
はく、と口が戦慄く。また腕に力がこもる。嫌われるかもしれない、と思っても、彼女の問いに答えなくてはいけない。
「も、っと、触れたくなりますから、本当に、本当に、そ、の、好きで」
貴女に触れたい、と零れた言葉に、彼女の体が大きく震えて、体温がまたひとつ上がった気がした。
「す、きです」
「知っている」
ぐり、と額が押し付けられて肩が跳ねる。そろり、と力を緩めても彼女の頭が上がることはない。
「そんなに触りたい、の、か」
しりすぼみになっていく声に期待からかぞくぞくと背中にまた熱が駆け巡る。
「い、一度だけでも、触れてみたい、です」
「さっき触っていただろ」
「ぁ……そ、じゃ、なくて、直接、触れて、みたい、です、手じゃ、なく」
「触ってみればいいだろ」
「え」
頭が白く塗りつぶされたようだった。獣の自分が牙を持ち上げたようで、それを、ねじ伏せるのに必死で、何も、考えられない。
まだ、雨が強く降っている。
◆ ◆ ◆
可愛いカップル描いちゃったー様から
『髪にキスしている』『ノニンとエデルガルド』を描きor書きましょう。
『相手の肩にもたれかかって眠ってしまった』『ノニエル』を描きor書きましょう。
どっちもはいってるのいつぞや書いてたなと思ったらやっぱりかいてたのでちょっと加筆した\\\\٩( 'ω' )و ////
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雨が窓にあたる音が部屋に入ってくる。そんな必要はないとわかっているのに、視線を左右に彷徨わせて誰も見ていないだろうかと警戒してしまう。ドアはロックをそっとかけたし(遠隔操作、という魔術のような技術で離れていても鍵をかけられるというのは凄いとつくづく思う)、大きな物音はたまに遠くで聞こえる雷鳴くらいで、気を張ることは何もない。
恐る恐る、右肩の方に視線をやってから、確かな現実である重みと微かな呼吸のリズムに心臓が苦しくなる。
レスライン殿が、自分の右肩を枕にして寝入ってしまっている、という事実を再度噛みしめる。お付き合いを初めて、ずいぶん経つが未だに彼女とは何もない。文字通り何もない。キスはしたものの、唇をあわせた程度で、肉体関係もない。彼女が恐らくそう望んでいるだろう健全で清らかな付き合い方を出来ていると自負している。接触も多くは持たない。たまに彼女が見せる少女のような顔を見ると疚しい気持ちにはなるが律して堪えている。
だが今のコレはダメだ。
耐え切る自信はある、何もしない自信はないが、求められているだろう健全さは保ち切れるという自信はあっても、俺も男だという現実。
こんなに、心を許されているということを彼女が意図して行ったものでなくとも、示されてしまっていて何も感じない方がおかしい。
常日頃から警戒を怠らず、気を張っていて、いつも厳しくある女性が、全ての張りつめていた糸を緩めて、体をこちらに預けて、眠っているという事実。例えそれが疲れが蓄積した故であったとしても彼女ならば、きっと自室に向かう筈なのにそんなすきもなく、ふらりと頭が揺れてぽすん、と、預けられた重み。
雨が降っていたから、外での逢瀬を、あまり人の往来のない俺の自室に場所を変えてしただけだった。並んで座れるようなものは寝具しかなくて、それでも応じてくれたことが嬉しくて、それで、それで、こんなに、こんな。
(どう、しよう)
どうしよう、と何度も思いながらドアを誰もあけないように鍵を丁寧にかけて部屋の明かりも咄嗟に落とした自分の頭を叩きつけたいが、彼女のこんな無防備さを誰にも見られたくない、見せたくないという独占欲は隠しきれたものではない。こんなときくらいは、彼女に見られていないなら独占欲のひとつでも出したい。
そろり、となるべく動きが急にならないように右腕をあげる。
そのまま右手で腰に触れて、女性らしいウェストの曲線に首の後ろがざわつく。当たり前すぎる事だが、女性なのだとつくづく実感する。レスライン殿は背も高い方だ。体躯は確かに女性だががっちりしている軍人らしい鍛えられているのだろうなという逞しさがあるし、歩き方も男性寄りの大股の歩幅で、所作もそうやってきたからか随分男性的である。でもこうして触れて、やはり女性だ、と思う。
煩いくらいの自分の心臓の音を聞きながら、腰を抱いた右手人差し指に僅かに力を籠める。僅かに筋肉がついているのを感じるが、眠っていて身体の力が緩んでいるせいか、ふくっと指が彼女の体に沈む。もっと、と、欲が出る。そのまま、彼女の右腕を掴む。
力の入らない腕は、柔らかい。するすると腕を伝って、手首に触れて、改めて、華奢ではないにしても、男の自分の手でつかみきれる手首の細さを痛感する。手の甲をゆっくり撫でて、つい、その薬指の付け根を親指の腹で撫でてしまう。
呼吸が荒くならないように深呼吸を静かに繰り返しながら、馬鹿なと笑われそうだが、彼女の薬指にいつか、と思いを馳せる。
どれだけ傷が多くあっても、肉付きは確かに女性で、柔らかだ。この手で、いつか触れてほしいと思ってしまう。心から愛している彼女に触れて貰ったら、いったいどれ程気持ちが良いのだろうかと不意に思ってしまって、思考をぐしゃぐしゃに丸めて、部屋の隅に捨てる。
規則正しい呼吸のリズムと、彼女の使う整髪剤だろうか、その香りが鼻をくすぐる。
一度捨てても、悲しいことに男の自分の思考は再びめぐってくる。ぐるぐると同じことを思考して、とりとめがない。何度も何度も彼女の望むお付き合いをしなくてはいけないと自分に言い聞かせていても、このまま、あわよくばと考えてしまう自分も確かにいる。誤魔化すように何度も彼女の髪へ口づける。本当は、許されるなら唇へ触れたいが彼女は許してくれないかもしれない。彼女は、規律と理性と、禁欲的なものを望むだろう。
それでも、素肌に触れてみたいと思考してしまって、何度も彼女の右手を撫でながら、ぞくぞくと湧き上がった熱は胸から喉に駆けあがったのち、腹の下へ溜まっていく。あまりにも、みっともないと自分を叱責する。
後一度だけ、髪に口づけを、そう思った時に血の気のひけていく気持ちになる。規則正しかった呼吸のリズムが、異なっている。時々、微かに大きく上下する胸部に、起きているのだと気が付いて手に力が入ったのと、彼女が身じろぎをしたのは同時で、咄嗟に、本当に何も考えられないまま右肩を強く抱いて抱き寄せてしまう。
顔を見られたくないというのもあったかもしれない。彼女の怒った顔を見たくないというのもあったと思うが、それ以上に、逃がしたくないというどうしようもない本能に負けてしまった。
「すみません、お叱りは、あ、あとで、いくらでもッ…」
「ッ……」
「す、みませ、ん」
雷鳴の音が先ほどより近く、雨脚も強くなって、風と一緒に窓を叩いている。まるで言葉を発しない彼女の代わりのように、雨風が己を叱咤しているような心地になる。
左手で彼女の後頭部を捉えて、自分の肩口に押し付けておきながら手を離す勇気がまだない。
「すみません」
何度謝罪を重ねても、寝込みを襲ってしまったことに変わりはなく、許されないかもしれない恐怖が背中に這いずっている。
「レ、スライン殿、お、俺、は」
腕に力が入ってしまう。彼女が苦しいかもしれないと思う暇さえない。
「お、俺ッ…は、」
自分で何を言おうとしているのかわからない。それでも何か言わなくてはならないと思うのに、なにも言葉は出ない。「もうしない」とは言えない。触れたいことはきっとずっと抱えるだろうし、また、してしまうかもしれない。
「触っても、楽しくないだろ…私の、体など」
「そ、そんなことありません……」
低く落ちた声に心臓は委縮している。
「女らしいとこなんか胸だけだ」
「そのような事は、」
肉付きも、柔らかさもすべて女性らしいのにというと怒るかもしれない、と思ってしまう。
「本当にそう思うのか」
はく、と口が戦慄く。また腕に力がこもる。嫌われるかもしれない、と思っても、彼女の問いに答えなくてはいけない。
「も、っと、触れたくなりますから、本当に、本当に、そ、の、好きで」
貴女に触れたい、と零れた言葉に、彼女の体が大きく震えて、体温がまたひとつ上がった気がした。
「す、きです」
「知っている」
ぐり、と額が押し付けられて肩が跳ねる。そろり、と力を緩めても彼女の頭が上がることはない。
「そんなに触りたい、の、か」
しりすぼみになっていく声に期待からかぞくぞくと背中にまた熱が駆け巡る。
「い、一度だけでも、触れてみたい、です」
「さっき触っていただろ」
「ぁ……そ、じゃ、なくて、直接、触れて、みたい、です、手じゃ、なく」
「触ってみればいいだろ」
「え」
頭が白く塗りつぶされたようだった。獣の自分が牙を持ち上げたようで、それを、ねじ伏せるのに必死で、何も、考えられない。
まだ、雨が強く降っている。
◆ ◆ ◆
可愛いカップル描いちゃったー様から
『髪にキスしている』『ノニンとエデルガルド』を描きor書きましょう。
『相手の肩にもたれかかって眠ってしまった』『ノニエル』を描きor書きましょう。
どっちもはいってるのいつぞや書いてたなと思ったらやっぱりかいてたのでちょっと加筆した\\\\٩( 'ω' )و ////