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【ニヒファゼ】ささやかながらのふたりきり

2019/06/02 04:21
ニヒツ×ファゼット(男男)
 ふっと、意識が浅くなったところで左の親指と人差し指の間を何度も優しく撫でる感覚を拾い上げる。そんな事するのは、同じベッドで寝ている男しかいないわけで、何をしているのかと聞くのも億劫で、なすがまま、されるがままに手をゆだねる。
 暫くそうして撫でていたかと思えば、優しく、人差し指がニヒツの親指と人差し指に挟まれて撫でられる。爪の先まで到達して、ふ、っと落とされたかと思えば、今度は中指、薬指、小指と順々に同じように撫でられていく。何してんだよと声を出すのも面倒で、壊れた扉みたいに重すぎる瞼をやっとの思いで開いて、ニヒツを見ようとしたが、こいつの部屋、滅茶苦茶暗い。

「に、ひつ」

 手の温度は手袋越しに微かに感じ取れるのに気配が薄すぎて、居るはずだろうにいないような気さえしてくる。

「なに、あそんでんだおまえ」

 二度寝をきめたいのであまり声は張りたくない。ぼそぼそと話しても、返事がないまま、また手を握られる。

「も、なに、わかんね、けど、ねろ、って」

 遊ばれていた手を掴んで、胸元に抱き寄せて、もうこのまま二度寝してやると下がってきた瞼に逆らうことなく眠りに入っていく。

「ファゼットさん」

 酷く近くでニヒツの声が聞こえる。

「ん」

 もう半分以上寝ているような意識で聞こえた名前に、返事らしい返事もろくに出来ないまま吐息交じりに応えると、抱き寄せられたような気がする。

「好き、です」

 いつ、どんな時に聞いても、こいつの公用語は綺麗な発音で感心する。妙な訛りもない。

「うん……おれも」

 ふ、と柔らかいものが額に触れる。

「ねろ、って、おまえ」
「はい」

 もぞもぞと懐に入り込んだ俺の背を、大きな手が優しく撫でている。

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