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【ナツユー】幸せばかり溢れていく

2019/06/02 04:20
ナツヒコ×ユーディルガー(男男)
 手持無沙汰にテーブルを人差し指でトントンと叩いて遊んでいる。向かいでは真面目にナツヒコが報告書なんだかわからないがモニターを眺めていて、その顔も随分男らしくというより、もはや年齢を重ねておっさんになったよなと思う。
 ただテーブルの上に置いてあるナツヒコの左手は髪の毛と同じ、深い青色の体毛と、長い爪が指先からニュ、と生えている。昔から、当然だけどこれは変わらないよなあと、頬杖をつきながら、ナツヒコの中指を自分の人差し指と中指とで挟んでむにむにと挟んで弄ぶ。

「なぁんだよ」
「お構いなくー」

 むにむにと遊びながら、そのまま人差し指を滑らせて、ナツヒコの人差し指の付け根の関節をとんとんと叩く。ふわふわとした毛に指先が埋もれてくすぐったくはあるが少し楽しい。

「……イスト」
「邪魔してる?」
「いや」

 ナツヒコは二人っきりの時にだけ、名前を呼ぶ。滅多にないことだが、その滅多にないことだからこそ特別のようで嬉しい。
 ナツヒコの左手の甲にそのまま自分の右手をそっと重ねて握ると、困ったような顔してナツヒコが笑う。

「イスト」
「いいじゃん、二人っきりだぞ?」
「そうだけど」

 そこまで言って、ナツヒコは口を閉ざしてはにかむ。

「なに、今更照れちゃって」
「だって、こんな事もあんまりしなかったから、…ドキッとするよ」
「あらぁーリンドウくん、そういうとこはまだ純情なのーキスもしたのにねえ」

 少し茶化して言うと、ナツヒコはますます目じりを赤くして困ったように笑う。

「いや、だってさあ」
「ははは、嘘々、俺もドキドキしてるって、あはは、いい年してなあ」
「あはははっ」

 するりと手の中から抜け出たナツヒコの左手が、そのまま俺の右手を握る。手を繋いだことが無いわけじゃあないけど、あまり穏やかに「いちゃつく」ってことはしたことがないから年甲斐もなくどきどきするし、照れ臭い。本当にお互いもういい年なんだけど。
 傷つけないように優しく握ってくれるナツヒコは頼りがいのある戦闘型って感じの男に成長してもなお、優しい。

「これから先、大事にするよ、イスト」

 するすると移動したナツヒコの手が、俺の右手を救い上げてそれから薬指の付け根を撫でる。指環つけてるのは、左手のほうだけど。両方つけてもいいくらいだな。

「………俺も、ナツヒコを大事にするよ」
「……はは、やっぱりちょっと恥ずかしい」
「あらあー、可愛いこと」

 くく、と漏れる優しい笑い声を、これから沢山、零していける幸せに顔が緩んでしまう。

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