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【ノニエル】重なる日々
2019/06/02 04:20ノニン×エデルガルド(男女)
繋いだところで決して触り心地が良いとは言えない手であることくらい、いやと言うほど自覚がある。傷だらけで、何一つ…いや、強いて言うなら、爪くらいは、女性的で、自分としては好きな一部分だ。だが、そこだけだ。
「手を、繋いでもよろしいですか」
「……、あぁ」
小声で話しかけたのは近くに人の気配がするからだろうか。男は、いつでもこちらの感情を尊重してくれるような気がする。嫌だと言えば、あっさりと引いて見せる。
どうせ人が通りかかったところで、手を繋いでいるかどうかなど見えない死角にいるのだから、何も、警戒するまでもないかもしれないと頷く。男との接触は未だもって少なく、数えられる程度だろう。
失礼します、という小さな声がしたあと、手首を優しく掴まれる。ぎゅ、と握った拳に、そのまま、肌を掠めるように滑り落ちて来た手で包まれ、顔が熱くなる。誰かが聞いたら笑うのかもしれないが、どうしても、なにか、酷くいけないことをしているような気になってしまう。つる、と少しだけ戻った男の人差し指が、こちらの人差し指の背を優しくその腹で撫でてくる。
短く切られた爪が少しだけ人差し指の背をかりかりと掠って、拳を開いてくれとでもいうかのようにぴたりと止まる。
男の顔を見ようにも、余裕も度胸もなく、また、俯いたまま、自分の大きすぎる胸が視界に入る。大きく息を吸い込むと伴って上下するのが、目立ってしまって少し忌々しい。
恐る恐る、緩めた拳の人差し指を、男の人差し指がつつ、と開いていく。少し性急さも感じる動きで人差し指と中指の間に、男の人差し指が滑り入って、きゅ、と握りこまれる。
繋いでいるというにはあまりにも不格好なのに、相変わらず、指が絡まっている事実だけで思考がぐらぐらする。何度も男の親指が、こちらの親指の付け根のあたりを撫でていく。
「ノ、ノニンっ」
それは、やめてくれないかと伝えようと少し顔を上げると、酷く優しく、嬉しそうな顔をした男と目があう。
「はい」
やめてくれ、とは言えないまま、再び俯いてしまう。あんな顔を見ては、やめろとは言えない。
「エデルガルド殿、何か」
「……い、いや、なにも、ない」
男に名前を呼ばれるのは、初めてな気がする。いつも、「レスライン」と呼ぶのに。今確かに、名前を呼んだ。
「お嫌、でしょうか」
「そ、そんなことは、ないが」
「そうですか……」
どういう風の吹き回しだろうか、と考えてしまう。名前で、何故呼ばれたのかわからない。
「あの、エデルガルド殿」
「……な、なんだ」
「お慕いしています」
「そ、そんな、こと」
重々知っている、と言おうとして、目じりを赤くした男と目があい、何も考えられなくなってしまった。
「手を、繋いでもよろしいですか」
「……、あぁ」
小声で話しかけたのは近くに人の気配がするからだろうか。男は、いつでもこちらの感情を尊重してくれるような気がする。嫌だと言えば、あっさりと引いて見せる。
どうせ人が通りかかったところで、手を繋いでいるかどうかなど見えない死角にいるのだから、何も、警戒するまでもないかもしれないと頷く。男との接触は未だもって少なく、数えられる程度だろう。
失礼します、という小さな声がしたあと、手首を優しく掴まれる。ぎゅ、と握った拳に、そのまま、肌を掠めるように滑り落ちて来た手で包まれ、顔が熱くなる。誰かが聞いたら笑うのかもしれないが、どうしても、なにか、酷くいけないことをしているような気になってしまう。つる、と少しだけ戻った男の人差し指が、こちらの人差し指の背を優しくその腹で撫でてくる。
短く切られた爪が少しだけ人差し指の背をかりかりと掠って、拳を開いてくれとでもいうかのようにぴたりと止まる。
男の顔を見ようにも、余裕も度胸もなく、また、俯いたまま、自分の大きすぎる胸が視界に入る。大きく息を吸い込むと伴って上下するのが、目立ってしまって少し忌々しい。
恐る恐る、緩めた拳の人差し指を、男の人差し指がつつ、と開いていく。少し性急さも感じる動きで人差し指と中指の間に、男の人差し指が滑り入って、きゅ、と握りこまれる。
繋いでいるというにはあまりにも不格好なのに、相変わらず、指が絡まっている事実だけで思考がぐらぐらする。何度も男の親指が、こちらの親指の付け根のあたりを撫でていく。
「ノ、ノニンっ」
それは、やめてくれないかと伝えようと少し顔を上げると、酷く優しく、嬉しそうな顔をした男と目があう。
「はい」
やめてくれ、とは言えないまま、再び俯いてしまう。あんな顔を見ては、やめろとは言えない。
「エデルガルド殿、何か」
「……い、いや、なにも、ない」
男に名前を呼ばれるのは、初めてな気がする。いつも、「レスライン」と呼ぶのに。今確かに、名前を呼んだ。
「お嫌、でしょうか」
「そ、そんなことは、ないが」
「そうですか……」
どういう風の吹き回しだろうか、と考えてしまう。名前で、何故呼ばれたのかわからない。
「あの、エデルガルド殿」
「……な、なんだ」
「お慕いしています」
「そ、そんな、こと」
重々知っている、と言おうとして、目じりを赤くした男と目があい、何も考えられなくなってしまった。