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【SSSとかいう長さではない】彼氏会typeA
2019/05/28 03:56リーンハルト×カタシロ(男男)ソゾ×ミケ(男男)ナツヒコ×ユーディルガー(男男)
艦内に設けられている多目的に使える部屋を借りて、ついに呼びつけてしまった。カタシロと、ユーディルガーを。呼びつけた、というか、たまたま近くの宙域にいた二人に、もし時間があったら相談したいことがあって、と話をして、まあ、ほぼほぼ無理だろうなあと思っていたら二人そろって時間を空けてきてくれてしまって。
対して広くはない室内で、四人掛けの机に着席している。
「ごめん、二人とも、忙しいのに」
「ミケが相談事というのは珍しいからな」
カタシロ・シア大佐。ソゾとは昔から喧嘩友達で、俺よりも5つ年上。キツめの顔立ちだけど整っていて、同性からも人気のある人だ。部下を持つ前はかなり短気な所もあったけど今は落ち着いていて、もともと世話焼きだったのもあって、ソゾとはまた違う方面で部下から信頼を得ている。黒い艶々した髪の、毛先が少しだけ、ちょんと、筆が絵の具を吸い上げたかのような青が目出つ。
「俺はもともと暇してるからぜぇんぜん、カタシロの方が時間調節大変そーなあ」
イスト・ユーディルガー軍曹。俺よりは3つ上で、諜報部隊に所属している。基本的に若い子の育成が主体で、最近はもっぱらデスクワークが多くて体力がやばいとか言ってる。同期のナツヒコ・リンドウ大佐と最近結婚した、と聞いていて、あ、やっと所帯を持つことになったのかとこっそり嬉しくも思っている、というかユーディルガーとナツヒコに関していうと大体皆「やっと落ち着くことにしたのか」という共通認識だと思ってる。昔から付き合っている二人だし。
深い緑色の髪を大雑把に三つ編みにして適当に結っているのをよく見るし、今日もそのスタイルだ。
「それで、話と言うのはなんだミケ」
「ああ、うん、あの、」
話を促してくれたカタシロと、腕組みをして椅子の背もたれにふんぞりかえるように座っているユーディルガーを見る。
「どーぞどーぞぉ、てかカタシロは兎も角俺役に立つのかね」
どちらかと言えばユーディルガーの方が頼りになりそうな案件でもある、と思いつつまず、報告しておかなくてはいけない。
「相談、の前に、ひとつ、報告が、あって、……付き合ってる、人が、いる、俺」
「ふぅん、良かったじゃん、あ、だから俺とカタシロ」
なるほどね、とユーディルガーがうんうんと頷いている。
「何故俺もなんだ…、いや、そういうのならユーディルガーだけでいいだろ」
少し居心地悪そうにしてるカタシロは新鮮だなあとつい思ってしまう。基本的にカタシロは自信を前面に出しているから、自信がなさそうな姿、ってもしかして初めて見たかもしれない。
「しゃーないだろぉ、俺とカタシロだけなんだから恋人ちゃんいるの」
「や、そう、そうだが…俺もお前も相手が同性だろう」
「ああ……いいんだ、俺も同性、だから、二人に相談したかった、ので」
驚いたような顔をしたのはカタシロだった。ユーディルガーは色々経験があるからか、あ、そうなんだみたいな顔だ。
「なに?うちのだぁさんの話めっちゃしとく?」
「いやそれは、今日はいいかな」
「やっぱり?話すとのろけ長い自信あるからなぁ」
にやっとした笑いがユーディルガーは特徴的だけど、ナツヒコの事となるとふにゃんとした笑顔になるのはわかりやすいし、幸せそうだなあと思う。いつだったか、ナツヒコが都度買ってくれるんだといっていた髪留めを弄りながらたぶん、ナツヒコの事を考えているんだろうなあという事は想像に容易い。
「幸せそうで何よりだ」
「めちゃくちゃ幸せだわ、羨ましいだろ」
へへへ、と笑って両手を頭の後ろで組んでそういうユーディルガーは穏やかに笑う。本当に、ナツヒコと落ち着くことになってから柔らかみが増したなあと思う。因みに、だぁさん、というのはナツヒコの愛称で「旦那さん」の短縮しまくったものだ。
「それで、なんだ、…俺は役に立つかはわからんが話くらいは聞く」
カタシロは最近、年の離れた恋人が出来た。俺はまだ直接見たことはないけど名簿にあった顔写真くらいは見た。少しダンに似てるかなあ、と思うのはおっとりした顔つきの所為かもしれない。ユーディルガーの自慢の部下の一人らしいけど。
「あの、デート、って、する?」
ぱちぱち、とカタシロが瞬きをして俺を見た後、そろりとユーディルガーに視線を流すのが新鮮だ。ユーディルガーは「え?俺?」みたいな顔をしている。
「ごめぇん、俺さぁ、だぁさんとデートっぽいのしたことないんだわ」
「忙しいもんね、二人とも」
「そぉそぉ、なにせ俺はまあこんなだけどだぁさん真面目だろ?ちゃんと仕事するからさぁ、時間あわないわけよ」
いや、ユーディルガーはだらけてるように振る舞ってるだけでちゃんと仕事してるのはみんな知ってるけど。ただ二人とも似ているところがあるから、自分たちのプライベートより仕事を優先してきたとこは確かに見てもわかっていて、したことがない、というのは納得だった。
「カタシロはぁ?…ってかカタシロのが出来ないんじゃない?」
「……まあそう、だな」
「うちのアロン君も俺に似てめっちゃ真面目だからねえ」
ユーディルガーは基本的に、部下の事を息子みたいに見ているところがあるから「うちの」なんて言うんだけど、どこか嬉しそうにうんうんと頷いている。
「リーンハルト・アロン上等兵君、のことは俺知らないんだけど、どんな子……?」
「うーん、俺的にはいい子だよ?仕事も真面目だし、自分の力量把握できてるから無謀なことはしないしねぇ、顔の傷で怖がられそうかと思いきや性格が穏やかな子だから女の子にもモテるし?お兄さん気質かなあ」
「そうなんだ」
「まさかカタシロを口説き落とすとは思わなかったけど?」
居心地悪そうな咳払いが聞こえてくる。
「…そこは、まあ、なんだ……」
「まあまあ、情熱的なとこはあった子だから?良いと思うけど?」
「確かにデート、難しそうだね、…ユーディルガーとナツヒコは兎も角、カタシロは上司と部下だし」
「それでカタシロはあ?デートしたことあるの?ないの?」
むす、としたカタシロは不機嫌と言うより、羞恥が見えている。こほん、と小さく咳払いをしたあと、かなり小声で「ある」と言ったのに対してユーディルガーは「いいなぁいいなぁ」と机に両手をのせて指先をぱたぱたと遊ばせている。
「何処でぇ」
「俺の部屋しかないだろ。まさか上等兵の部屋に俺が行くわけにもいくまい」
「お部屋デートぉ???いいなあーーーー俺もやりてぇーーーちゅーした?」
「なんでそんなこと……そのくらいとっくにした」
「ええーいいなぁーーー」
ユーディルガーはデートこそしてはいないにしても会えばナツヒコと軽くキスしてるの見るんだけどそれはそれとして別なんだろうなあと自分が相談で出した話題なのに他人事のように聞いてしまっている。いや実際他人だけど。とっくにした、といってるカタシロはちょっと耳が赤い。
「相談にならなくて済まないミケ」
「ううん、良い、俺も、ちょっと相手とは、難しいかな、って思ってたから」
「ちなみに?ミケちゃんが射止めた相手ってだれ?」
射止めた、と言われるとくすぐったいような、何か違うような、と思いながら何れわかる事だし、カタシロには、俺から言っておいた方がいい。ソゾから言うとすぐ喧嘩するかもしれないし。
「ソゾ……」
「は?」
やっぱりカタシロが凄い形相した。ユーディルガーは今度こそ驚いたみたいな顔してる。変、かな、変、だよね、うん。俺とソゾって繋がらないもの。
「…あの」
「ミケ、一つ確認する。…きちんとソゾはお前を好きだと言ったんだな?」
「う、うん、言った、大丈夫」
「………わかった、あいつに限って不誠実な事はせんだろうと思っているが、あの性格だからな、まさかと疑った、すまん」
「いい、俺が一番、びっくりしてる、から」
そう、俺が一番驚いてる。ソゾと付き合えるだなんて、夢みたいな事。
「ソゾがあ?ミケとぉ?うそぉ…やばいな」
「う、うん、ごめん」
「謝るとこじゃないからいいっていいって!お祝いとかしとく?」
「い、いや、いい、恥ずかしいし」
お祝いは嬉しいけど、やっぱり、恥ずかしさが勝る。
「ミケはシャイだもんなぁ、ソゾは絶対祝われたいと思うけど」
「ああ、あいつは好きなものは見せびらかしたいところがあるからな」
「ああ、そう、なの、やっぱり」
「思い当たる節あるんだ??」
何か飲む?といいつつユーディルガーはさっさと立ち上がって三人分のミネラルウォーターを持ってくる。容器に入っていて口が閉じれるタイプのもの。
「…う、うん、……毎日、すきってメッセージが来る、から」
「あいつマメだなぁ、えっ?ミケから告白した?」
「ちが、うんだけど、えと、ソゾのことはずっと、俺好きで、でも、黙っておこう、ってしてたんだけど、バレちゃって…」
「ほおー」
「ソゾは目敏いからな、…肝心なとこが鈍くもあるが」
「それで、まあ、その、お付き合い、してます」
「おお、おめでとぉー」
にこにこと笑ってそう言ってくれるユーディルガーと、同じように、あまり表情は変わらないにしても頷いてくれるカタシロの様子を見て、良いんだ、と改めて思う。ふたりがこうして、おめでとうという雰囲気をだしてくれると、少しだけ気持ちが軽くなる。
「俺もだぁさんから好きっていっぱいいわれてえー」
「これから飽きるほど言ってもらえ」
「飽きる自信全くないわ」
「何よりだ」
「へへへ」
ユーディルガーが笑いながら撫でた彼自身の左手の薬指には銀の指環が光っている。なんでもナツヒコが買って来た、とかで、恥ずかしいけど凄く嬉しいといった感じに見せてくれたのを思い出す。
「ソゾも忙しいから、やっぱり、えと、時間難しいよね」
「まあ、ナツも書類まみれとかのときあるし、カタシロも時期によってはどっと仕事たまるだろぉ?」
「まあな」
「やっぱあれじゃん?したかったらミケからソゾのとこいってお部屋デート」
「待て、ソゾの性格的に仕事がおろそかになる可能性もある」
「あ、そっか」
「え、そうなの…」
「ミケ、ソゾはお前にどんなことを言うんだ」
「ど、どんな、って」
言われてくるくると考えたけど、大概好きしか言われてないと思う。
「好き、とか、会いたい、とか」
「ひゅー、情熱的だわソゾちゃん」
「あいつはある程度我慢が出来るんだが、何かと集中力が乱れやすい…好きな男が傍にいて平気かどうか……」
「ソゾちゃんだってもういいおっさんなんだから我慢くらいできるでしょぉ、青少年じゃあるまいし」
「……どう、だろ」
「ええ?ミケェなにそれえ」
「我慢、はたぶんできる、ンだと思うけどカタシロの言う通り、集中力は散漫になるかも」
あの夜もだいぶ我慢してくれていたけど、すごく元気になってたし。カタシロのいう事は頷けてしまう。
「じゃあじゃああらかじめ連絡しとけば?俺とかナツんとこ行くときは連絡してから行くし」
「そうだな、ミケもそのほうが良いかもしれない。流石にソゾも仕事くらいは終わらせておくという頭は働くだろう」
「カタシロはあ?この中だとナツとソゾと同じ階級だから報告待つ側ぁ?それとも自分から聞いちゃうタイプ?」
「俺は良いだろうが別に」
「ミケちゃんが参考にするだろぉ」
「出来れば聞いておきたい、かな俺も…」
むう、とカタシロは少し難しそうな顔をする。
「……俺は別に、待ってるだけだ」
「うわー、それっぽいー」
「ぽいと思うなら聞くな」
「まあまあ、アロン君は真面目だから事前報告なしに行くとは思わないしねぇ」
「おかげさまで、良い部下だ」
「恋人的にはいい彼氏ぃ?」
「………いっ、いい彼氏だ」
「そっかそっか」
「いちいち聞くなっ」
「いいじゃんいいじゃん」
ミネラルウォーターのキャップをあける真似をしながらそんな二人のやりとりを聞いて、多分ユーディルガーも感じているんだろうけど赤くなったり焦るカタシロはかなり新鮮だとおもう。
「あ、でも気を付けないとソゾあたりアロン君捕まえるんじゃないかぁ?」
「あぁ?」
「ああ…捕まえそう、かも」
「なんっ…」
「ナツとアロン君捕まえてミケのこと相談するんじゃない?」
「おっ、俺っ…!?」
なんで俺?とびっくりしたものの、ユーディルガーはそうだよおとだけ言って会話を続ける気のようだ。
「もしそうだとしたら後で引きずり回してやる」
カタシロ、声が本気なんだけど…。
「ナツのことは引きずらないでくれよ?絶対巻き込まれタイプだからだぁさん」
「ナツヒコはそういうのは、面白がりはするだろうが…そうだな、ソゾに引き込まれていくタイプだろうから大目に見よう」
「サンキュー」
「……なんか、その、ごめん、ね、ソゾが」
「いや、いい、あいつは昔からそんなだ」
「ミケェ、セクハラされたときは俺に言うんだぞぉ??ソゾと警備宙域近いのうちのナツだから、ナツにガツンとしてもらうからさあ」
「セクハラ……って、」
「パンツの色聞きそうじゃんあいつ」
「………」
「聞かれたのか?」
「手遅れだった?」
「……」
「ソゾ・サザナミ大佐を個人的な用件で呼び出すか」
「カ、カタシロ、声、ガチだよ」
「ガチにもなるだろうが!あの馬鹿野郎!!」
「あっはっはっは!!!本気、本気で怒ってる!!あっはっはっは!!!」
「わ、笑ってないでユーディルガーっ」
「いやいやだめだめ、ガツンとしてもらったほうが良いって。俺もナツに言いつけてやろー」
「い、いやじゃない、嫌じゃなかったから」
「それとこれとは別だ!デリカシーがないんだあいつは!!」
全く、と怒りながらカタシロが連絡を取っているのはたぶんソゾに違いない。言いつける、といいながら全然そんな気配がなく、ただ腹を抱えて笑っているユーディルガーは楽しそうにカタシロの様子を見ていた。
間もなく応答したソゾがカタシロにきつく怒られて、またユーディルガーが声を殺して笑っていた。
対して広くはない室内で、四人掛けの机に着席している。
「ごめん、二人とも、忙しいのに」
「ミケが相談事というのは珍しいからな」
カタシロ・シア大佐。ソゾとは昔から喧嘩友達で、俺よりも5つ年上。キツめの顔立ちだけど整っていて、同性からも人気のある人だ。部下を持つ前はかなり短気な所もあったけど今は落ち着いていて、もともと世話焼きだったのもあって、ソゾとはまた違う方面で部下から信頼を得ている。黒い艶々した髪の、毛先が少しだけ、ちょんと、筆が絵の具を吸い上げたかのような青が目出つ。
「俺はもともと暇してるからぜぇんぜん、カタシロの方が時間調節大変そーなあ」
イスト・ユーディルガー軍曹。俺よりは3つ上で、諜報部隊に所属している。基本的に若い子の育成が主体で、最近はもっぱらデスクワークが多くて体力がやばいとか言ってる。同期のナツヒコ・リンドウ大佐と最近結婚した、と聞いていて、あ、やっと所帯を持つことになったのかとこっそり嬉しくも思っている、というかユーディルガーとナツヒコに関していうと大体皆「やっと落ち着くことにしたのか」という共通認識だと思ってる。昔から付き合っている二人だし。
深い緑色の髪を大雑把に三つ編みにして適当に結っているのをよく見るし、今日もそのスタイルだ。
「それで、話と言うのはなんだミケ」
「ああ、うん、あの、」
話を促してくれたカタシロと、腕組みをして椅子の背もたれにふんぞりかえるように座っているユーディルガーを見る。
「どーぞどーぞぉ、てかカタシロは兎も角俺役に立つのかね」
どちらかと言えばユーディルガーの方が頼りになりそうな案件でもある、と思いつつまず、報告しておかなくてはいけない。
「相談、の前に、ひとつ、報告が、あって、……付き合ってる、人が、いる、俺」
「ふぅん、良かったじゃん、あ、だから俺とカタシロ」
なるほどね、とユーディルガーがうんうんと頷いている。
「何故俺もなんだ…、いや、そういうのならユーディルガーだけでいいだろ」
少し居心地悪そうにしてるカタシロは新鮮だなあとつい思ってしまう。基本的にカタシロは自信を前面に出しているから、自信がなさそうな姿、ってもしかして初めて見たかもしれない。
「しゃーないだろぉ、俺とカタシロだけなんだから恋人ちゃんいるの」
「や、そう、そうだが…俺もお前も相手が同性だろう」
「ああ……いいんだ、俺も同性、だから、二人に相談したかった、ので」
驚いたような顔をしたのはカタシロだった。ユーディルガーは色々経験があるからか、あ、そうなんだみたいな顔だ。
「なに?うちのだぁさんの話めっちゃしとく?」
「いやそれは、今日はいいかな」
「やっぱり?話すとのろけ長い自信あるからなぁ」
にやっとした笑いがユーディルガーは特徴的だけど、ナツヒコの事となるとふにゃんとした笑顔になるのはわかりやすいし、幸せそうだなあと思う。いつだったか、ナツヒコが都度買ってくれるんだといっていた髪留めを弄りながらたぶん、ナツヒコの事を考えているんだろうなあという事は想像に容易い。
「幸せそうで何よりだ」
「めちゃくちゃ幸せだわ、羨ましいだろ」
へへへ、と笑って両手を頭の後ろで組んでそういうユーディルガーは穏やかに笑う。本当に、ナツヒコと落ち着くことになってから柔らかみが増したなあと思う。因みに、だぁさん、というのはナツヒコの愛称で「旦那さん」の短縮しまくったものだ。
「それで、なんだ、…俺は役に立つかはわからんが話くらいは聞く」
カタシロは最近、年の離れた恋人が出来た。俺はまだ直接見たことはないけど名簿にあった顔写真くらいは見た。少しダンに似てるかなあ、と思うのはおっとりした顔つきの所為かもしれない。ユーディルガーの自慢の部下の一人らしいけど。
「あの、デート、って、する?」
ぱちぱち、とカタシロが瞬きをして俺を見た後、そろりとユーディルガーに視線を流すのが新鮮だ。ユーディルガーは「え?俺?」みたいな顔をしている。
「ごめぇん、俺さぁ、だぁさんとデートっぽいのしたことないんだわ」
「忙しいもんね、二人とも」
「そぉそぉ、なにせ俺はまあこんなだけどだぁさん真面目だろ?ちゃんと仕事するからさぁ、時間あわないわけよ」
いや、ユーディルガーはだらけてるように振る舞ってるだけでちゃんと仕事してるのはみんな知ってるけど。ただ二人とも似ているところがあるから、自分たちのプライベートより仕事を優先してきたとこは確かに見てもわかっていて、したことがない、というのは納得だった。
「カタシロはぁ?…ってかカタシロのが出来ないんじゃない?」
「……まあそう、だな」
「うちのアロン君も俺に似てめっちゃ真面目だからねえ」
ユーディルガーは基本的に、部下の事を息子みたいに見ているところがあるから「うちの」なんて言うんだけど、どこか嬉しそうにうんうんと頷いている。
「リーンハルト・アロン上等兵君、のことは俺知らないんだけど、どんな子……?」
「うーん、俺的にはいい子だよ?仕事も真面目だし、自分の力量把握できてるから無謀なことはしないしねぇ、顔の傷で怖がられそうかと思いきや性格が穏やかな子だから女の子にもモテるし?お兄さん気質かなあ」
「そうなんだ」
「まさかカタシロを口説き落とすとは思わなかったけど?」
居心地悪そうな咳払いが聞こえてくる。
「…そこは、まあ、なんだ……」
「まあまあ、情熱的なとこはあった子だから?良いと思うけど?」
「確かにデート、難しそうだね、…ユーディルガーとナツヒコは兎も角、カタシロは上司と部下だし」
「それでカタシロはあ?デートしたことあるの?ないの?」
むす、としたカタシロは不機嫌と言うより、羞恥が見えている。こほん、と小さく咳払いをしたあと、かなり小声で「ある」と言ったのに対してユーディルガーは「いいなぁいいなぁ」と机に両手をのせて指先をぱたぱたと遊ばせている。
「何処でぇ」
「俺の部屋しかないだろ。まさか上等兵の部屋に俺が行くわけにもいくまい」
「お部屋デートぉ???いいなあーーーー俺もやりてぇーーーちゅーした?」
「なんでそんなこと……そのくらいとっくにした」
「ええーいいなぁーーー」
ユーディルガーはデートこそしてはいないにしても会えばナツヒコと軽くキスしてるの見るんだけどそれはそれとして別なんだろうなあと自分が相談で出した話題なのに他人事のように聞いてしまっている。いや実際他人だけど。とっくにした、といってるカタシロはちょっと耳が赤い。
「相談にならなくて済まないミケ」
「ううん、良い、俺も、ちょっと相手とは、難しいかな、って思ってたから」
「ちなみに?ミケちゃんが射止めた相手ってだれ?」
射止めた、と言われるとくすぐったいような、何か違うような、と思いながら何れわかる事だし、カタシロには、俺から言っておいた方がいい。ソゾから言うとすぐ喧嘩するかもしれないし。
「ソゾ……」
「は?」
やっぱりカタシロが凄い形相した。ユーディルガーは今度こそ驚いたみたいな顔してる。変、かな、変、だよね、うん。俺とソゾって繋がらないもの。
「…あの」
「ミケ、一つ確認する。…きちんとソゾはお前を好きだと言ったんだな?」
「う、うん、言った、大丈夫」
「………わかった、あいつに限って不誠実な事はせんだろうと思っているが、あの性格だからな、まさかと疑った、すまん」
「いい、俺が一番、びっくりしてる、から」
そう、俺が一番驚いてる。ソゾと付き合えるだなんて、夢みたいな事。
「ソゾがあ?ミケとぉ?うそぉ…やばいな」
「う、うん、ごめん」
「謝るとこじゃないからいいっていいって!お祝いとかしとく?」
「い、いや、いい、恥ずかしいし」
お祝いは嬉しいけど、やっぱり、恥ずかしさが勝る。
「ミケはシャイだもんなぁ、ソゾは絶対祝われたいと思うけど」
「ああ、あいつは好きなものは見せびらかしたいところがあるからな」
「ああ、そう、なの、やっぱり」
「思い当たる節あるんだ??」
何か飲む?といいつつユーディルガーはさっさと立ち上がって三人分のミネラルウォーターを持ってくる。容器に入っていて口が閉じれるタイプのもの。
「…う、うん、……毎日、すきってメッセージが来る、から」
「あいつマメだなぁ、えっ?ミケから告白した?」
「ちが、うんだけど、えと、ソゾのことはずっと、俺好きで、でも、黙っておこう、ってしてたんだけど、バレちゃって…」
「ほおー」
「ソゾは目敏いからな、…肝心なとこが鈍くもあるが」
「それで、まあ、その、お付き合い、してます」
「おお、おめでとぉー」
にこにこと笑ってそう言ってくれるユーディルガーと、同じように、あまり表情は変わらないにしても頷いてくれるカタシロの様子を見て、良いんだ、と改めて思う。ふたりがこうして、おめでとうという雰囲気をだしてくれると、少しだけ気持ちが軽くなる。
「俺もだぁさんから好きっていっぱいいわれてえー」
「これから飽きるほど言ってもらえ」
「飽きる自信全くないわ」
「何よりだ」
「へへへ」
ユーディルガーが笑いながら撫でた彼自身の左手の薬指には銀の指環が光っている。なんでもナツヒコが買って来た、とかで、恥ずかしいけど凄く嬉しいといった感じに見せてくれたのを思い出す。
「ソゾも忙しいから、やっぱり、えと、時間難しいよね」
「まあ、ナツも書類まみれとかのときあるし、カタシロも時期によってはどっと仕事たまるだろぉ?」
「まあな」
「やっぱあれじゃん?したかったらミケからソゾのとこいってお部屋デート」
「待て、ソゾの性格的に仕事がおろそかになる可能性もある」
「あ、そっか」
「え、そうなの…」
「ミケ、ソゾはお前にどんなことを言うんだ」
「ど、どんな、って」
言われてくるくると考えたけど、大概好きしか言われてないと思う。
「好き、とか、会いたい、とか」
「ひゅー、情熱的だわソゾちゃん」
「あいつはある程度我慢が出来るんだが、何かと集中力が乱れやすい…好きな男が傍にいて平気かどうか……」
「ソゾちゃんだってもういいおっさんなんだから我慢くらいできるでしょぉ、青少年じゃあるまいし」
「……どう、だろ」
「ええ?ミケェなにそれえ」
「我慢、はたぶんできる、ンだと思うけどカタシロの言う通り、集中力は散漫になるかも」
あの夜もだいぶ我慢してくれていたけど、すごく元気になってたし。カタシロのいう事は頷けてしまう。
「じゃあじゃああらかじめ連絡しとけば?俺とかナツんとこ行くときは連絡してから行くし」
「そうだな、ミケもそのほうが良いかもしれない。流石にソゾも仕事くらいは終わらせておくという頭は働くだろう」
「カタシロはあ?この中だとナツとソゾと同じ階級だから報告待つ側ぁ?それとも自分から聞いちゃうタイプ?」
「俺は良いだろうが別に」
「ミケちゃんが参考にするだろぉ」
「出来れば聞いておきたい、かな俺も…」
むう、とカタシロは少し難しそうな顔をする。
「……俺は別に、待ってるだけだ」
「うわー、それっぽいー」
「ぽいと思うなら聞くな」
「まあまあ、アロン君は真面目だから事前報告なしに行くとは思わないしねぇ」
「おかげさまで、良い部下だ」
「恋人的にはいい彼氏ぃ?」
「………いっ、いい彼氏だ」
「そっかそっか」
「いちいち聞くなっ」
「いいじゃんいいじゃん」
ミネラルウォーターのキャップをあける真似をしながらそんな二人のやりとりを聞いて、多分ユーディルガーも感じているんだろうけど赤くなったり焦るカタシロはかなり新鮮だとおもう。
「あ、でも気を付けないとソゾあたりアロン君捕まえるんじゃないかぁ?」
「あぁ?」
「ああ…捕まえそう、かも」
「なんっ…」
「ナツとアロン君捕まえてミケのこと相談するんじゃない?」
「おっ、俺っ…!?」
なんで俺?とびっくりしたものの、ユーディルガーはそうだよおとだけ言って会話を続ける気のようだ。
「もしそうだとしたら後で引きずり回してやる」
カタシロ、声が本気なんだけど…。
「ナツのことは引きずらないでくれよ?絶対巻き込まれタイプだからだぁさん」
「ナツヒコはそういうのは、面白がりはするだろうが…そうだな、ソゾに引き込まれていくタイプだろうから大目に見よう」
「サンキュー」
「……なんか、その、ごめん、ね、ソゾが」
「いや、いい、あいつは昔からそんなだ」
「ミケェ、セクハラされたときは俺に言うんだぞぉ??ソゾと警備宙域近いのうちのナツだから、ナツにガツンとしてもらうからさあ」
「セクハラ……って、」
「パンツの色聞きそうじゃんあいつ」
「………」
「聞かれたのか?」
「手遅れだった?」
「……」
「ソゾ・サザナミ大佐を個人的な用件で呼び出すか」
「カ、カタシロ、声、ガチだよ」
「ガチにもなるだろうが!あの馬鹿野郎!!」
「あっはっはっは!!!本気、本気で怒ってる!!あっはっはっは!!!」
「わ、笑ってないでユーディルガーっ」
「いやいやだめだめ、ガツンとしてもらったほうが良いって。俺もナツに言いつけてやろー」
「い、いやじゃない、嫌じゃなかったから」
「それとこれとは別だ!デリカシーがないんだあいつは!!」
全く、と怒りながらカタシロが連絡を取っているのはたぶんソゾに違いない。言いつける、といいながら全然そんな気配がなく、ただ腹を抱えて笑っているユーディルガーは楽しそうにカタシロの様子を見ていた。
間もなく応答したソゾがカタシロにきつく怒られて、またユーディルガーが声を殺して笑っていた。