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【カンオル】雨の日にあなたに会う言い訳はない

2021/12/31 05:55
CP雑多セルフクロスオーバー雨の日のふたりSSS100個書けるかな期間
 雨の日は好きだ。静かだし、お部屋にこもっていても誰にも何も言われないから。少なくとも向こうに居た時はそうだった。皆の小言を聞かなくていいし、書類を見てサインを書く仕事をしていればいいですから、って言われていたから。
 自分の世界に閉じこもって、黙っていれば嫌なことは無かったから、雨の日は好きだった。今はちょっとだけ違う。
 雨の日はカン様に会えないことが多い。私はどうも、体が弱い、らしくて天気が悪い日は外に出るのは控えなさいってお医者様の先生たちから言われている。
 お外へ行けないという事はカン様とお話しする機会は減ってしまう。私だけが好きなので、私が身勝手な理由でカン様のお時間を割くことだけはあってはならない。それにカン様は多分私の事は妹とか、そういう、感じなんだろうなあとずっと身をもって感じている。
 カン様たちと同じようなところからきた、という方たちに、爪の化粧を教えてもらった。爪を綺麗に塗って、飾って、可愛くてきらきらしている。白と、青を交互に塗って、カン様の色だ、なんて一人で顔を赤くして満足してしまえる。手が好き、っていってくれていたから、こうしたら少し、カン様は声をかけてくださるかな、と思ったけれど、部屋から出てわざわざ彼を探す勇気はない。
 この爪も、見せないまま化粧を落としてしまうのが一番いい。

 ノックの音にびっくりして体がポンとはねてしまう。慌てて扉へ向かって開ければシュトロムフト様がいる。まだ少し怖いけれど、優しいお方だとわかってはいる。

「夕飯の時間が近いので、一応、お声がけを」
「ぁ、え、あ、す、すいません」
「いいえ……、綺麗に塗られていますね、」

 シュトロムフト様が視線を少し流した先、扉にかけていた手、親指の爪を見てそうおっしゃったらしかった。あわあわとしながらお礼を言えばただ笑ってそれでは、と告げて去って行かれる。本当は私より上の立場の方なのに、私なんかにもああして頭を垂れていく。
 お夕飯、どうしようか、と悩んでしまう。決まった時間はあるけれど、絶対いかなきゃいけないわけではないのは、色々な生活リズムの方がいるからなので、適当でいいでしょう、といったのはレイフ様、とおっしゃった男性だったと思う。
 カン様やシュトロムフト様は大体この時間にお食事をされるけれど、と考えていれば大きな足音と一緒にカン様が目の前にびゅんと出てきて悲鳴が出てしまう。

「おう!メシ行く??」
「………」

 ぷんぷんとつい左右に首を振りながら咄嗟に手を袖の中に引っ込めてしまう。

「そっか???ちゃんとメシ食うんだぞお前、痩せてんだから」
「は、はい、」

 かくんかくんと不格好に頷いてもカン様は笑ったままでいてくれる。

「じゃあな」

 ぴゅん、と走っていったカン様の背中を見て、顔が熱くなる。

「(もうちょっと、後にしよう、いくの)」

 扉を閉め、お話が出来た、と両手で熱いままの頬を抑えて、私って、随分単純なのかななんて思ってしまう。ああ、行く時までにちゃんと爪の色をおとしてかないと、とぼんやり思いながら今一度ため息をついた。
× × × × × × ×
話題になりそうなものなのに気にするのでお洒落なの全部おとしてからいっちゃうオルキデさんと、マイペースなカンちゃん()

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